半導体

 

常に電気を通す物質を導体、通さない物質を不導体といいます。条件によって通したり通さなかったりする物質を半導体といいます。半導体にはP型半導体とN型半導体があります。

 

ダイオードという部品は一方向にしか電気を通さない部品ですが、中身はP型半導体とN型半導体をくっつけたもの(PN接合)で、こうするとP型からN型方向にしか電気が流れません。

 

  トランジスタの構造

 

トランジスタという部品は大まかに2種類あって、それぞれPNP型、NPN型といいます。PNP型はP型半導体の間に薄いN型半導体を挟んだ構造で、NPN型は薄いP型半導体をN型半導体で挟んだ構造をしています(この "薄い" がミソです)。それぞれの半導体から端子を引き出してあり、それぞれベース(B)、エミッタ(E)、コレクタ(C)と名前が付いています。太い線の真ん中からまっすぐ出ているのがベース、斜めに出ているのがコレクタとエミッタです。エミッタには矢印が付いていますがPNP型とNPN型で矢印の向きが違うのに気が付きましたか?これは電流が流れる向きを表していて、回路図のトランジスタがPNP型かNPN型かを判別する大事な部分です。

 

 

 

  トランジスタの動作

 

NPN型トランジスタの動作をみてみましょう。ダイオードの常識からすると、ベースからコレクタ方向、ベースからエミッタ方向はPN接合なので電流が通りますが、反対向きには通らないはずです。

 

ところが不思議なことにベースからエミッタ方向に電流を流すと、コレクタからエミッタに向かって電流が流れるのです。しかもベースに流れ込んだ電流の何倍も大きな電流が流れます。まるで小さな電流が大きくなったように見えるので、これをトランジスタの増幅作用といいます。

 

 

  トランジスタの合否判定

 

トランジスタの構造が頭に入っていると、そのトランジスタが故障しているかどうか、テスターひとつで簡単に調べることができます。

 

その前にまず、そのトランジスタがPNP型なのかNPN型なのかを調べる必要があります。日本製のトランジスタはJISで型番の付け方が決まっていて、型番が2SA***(数字)、2SB***であればPNP型、2SC***、2SD***であればNPN型です(一部、メーカー独自の型番が付いているものもあります)。

トランジスタの構造は記号で書けばこのようになります。つまりダイオードが2本、この向きにつながっていると考えます。このダイオード構造が導通しているかいないかを、テスターのダイオード・レンジで調べます。

 

すなわちNPN型トランジスタの場合、

①ベースからコレクタ方向に導通がある。逆方向は導通が無い。

②ベースからエミッタ方向には導通がある。逆方向は東通が無い。

③コレクタ-エミッタ間はどちら向きにも導通が無い。

以上の条件を満たせば、そのトランジスタはまず正常だろうと考えられます。PNP型トランジスタの場合は①と②で導通方向が逆になります。

 

導通しているはずのところが導通していない、あるいは導通してはいけないところが導通している場合、そのトランジスタは故障していると思って間違いないでしょう。

 

なおトランジスタが基板などに収まっている状態では、周囲の部品の影響で正しく判定できません。必ず単体で調べてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  デジタル・オーディオ・インターフェース規格の変遷

 

プロ用デジタル・オーディオのインターフェース規格は、1981年に AES のワーキング・グループが検討を開始し、1985年に AES とEBU がほぼ同時に 『AES3-1985』 と『EBU Tech.3250-E』 として制定しました。このふたつは入出力部にトランスを使うかどうか以外はほぼ同じ内容なので、俗に 『AES/EBU』 と呼ばれていますが、実際にそういう正式名称の規格があるわけではありません。

 

『AES/EBU』で規定されているデジタル・オーディオ・インターフェースは、最大量子化ビット数 24bitのステレオ・オーディオ信号に制御ビットなどを加えたものですが、これはあくまで 『業務用』 の規格であることに注意しなくてはなりません(そもそもAESはプロ・オーディオ業界の機関、EBUは放送局の連合体です)。

 

*AES : Audio Engineering Society

*EBU : Europian Broadcasting Union

 

デジタル・オーディオ・インターフェース規格としては以下のようなものが制定されていますが、現在では廃版になっているものもありますので注意が必要です。

 

AES3-1985 (ANSI S4.40-1985), "AES Recommendation Practice for Digital Audio Engineering Serial Transmission Format for Linearly Represented Digital Audio Data"
AES の定めたオリジナル規格。

 

AES3-1992 (ANSI S4.40-1992), "AES Recommendation Practice for Digital Audio Engineering Serial Transmission Format for Two-Channel Linearly Represented Digital Audio Data"
改訂版。現在の規格はこれに準拠している。

 

EBU Tech.3250-E, "Specification of the Digital Audio Interface"
EBUの定めた仕様。AES3-1985 とほとんど同じだが機器の入出力にトランスが必須。

 

■EBU Standard N9-1991: Digital Audio Interface for professional production equipment. 

これに若干の修正が入ったものが現在のEBUの規格。

 

CCIR Rec.647, "A Digital Audio Interface for Broadcast Studios"
放送局用途に CCIR が定めた規格。

 

Publication IEC-958, "Digital Audio Interface" [廃版]
IEC が定めた国際規格。BROADCAST(業務用)とCONSUMER(民生用)がある。

 

EIAJ CP-340, "デジタルオーディオインターフェース" [廃版]
EIAJ(日本電子工業会) が定めた日本国内規格。TYPE-Ⅰ(業務用)と TYPE-Ⅱ(民生用)がある。

 

EIAJ CP-1201, "デジタルオーディオインターフェース" [廃版]
CP-340の改訂版。

 

  S/PDIF  

 

AES3-1985 に対して、民生(コンシューマ)用の場合はソニーとフィリップスの共同規格である S/PDIF (Sony Philips Digital InterFace) があります。これは AES3-1985 と同じフレーム構造を採用しており、オーディオ・データの位置が同じために、業務用機器に強引に接続しても音だけは出る場合が多いので、同じものだと思っている人が多いようです。

 

しかし AES/EBU と S/PDIF ではチャンネル・ステータス・データの使い方が全く異なるので、業務用/民生用ビット以外の情報(エンファシス情報やサンプリング周波数情報など)は正しく伝わらず、そういう意味では AES/EBU と S/PDIF の間に互換性はありません。

 

電気的な規格も異なり、AES/EBU では専用ケーブルによるバランス伝送と規定されており、S/PDIF では同軸と光ケーブルによるアンバランス伝送が規定されています。このように、このふたつは全く異なる規格と捕らえるべきです。デジタル・オーディオ・インターフェース規格には、業務用途の規格と民生用途の規格のふたつある、と理解してください。

 

このあたりが紛らわしいのには理由があります。1989年にIECは IEC-958 として業務用と民生用のふたつの規格を1冊にまとめて発表しました。IECとしては業務用にも民生用にも関わる必要があったので致し方なかったわけですが、ここから「ひとつの規格のふたつの用途」という誤解が生じるようになります。

 

日本のEIAJ (現在のJEITA ) ではこの IEC-958 制定の 2 年前に CP-340 という規格(内容は同等)が制定され、その後 CP-340 と IEC 958 を整理・統合した CP-1201を制定しました。ここでは業務用を TYPE-Ⅰ、民生用を TYPE-Ⅱとしていますが、やはり 1冊にまとまっていたために誤解を広めることになります。つまり「CP-340 / CP-1201準拠」と謳っていても、TYPE-Ⅰ準拠なのか TYPE-Ⅱ準拠なのかがわからないと意味がないということです。

 

追記:
JEITA(旧EIAJ)は、CP-1201 と IEC 958 (現在は IEC 60958 ) というダブル・スタンダードを解消するため、1999年に CP-1201 を廃止しています。

 

現在、IEC 958 は IEC 内の規格番号体系の変更に伴って IEC 60958 と呼称変更されています。デジタル・オーディオの 一般仕様として 60958-1があり、その下にリニア PCM オーディオの民生用として 60958-3、同じく業務用として 60958-4 があります。

 

またノンリニアPCMオーディオの規格としては 61937-1 ( General )、61937-2 ( Burst-Info.)、61937-3 ( AC-3 )、61937-4 ( MPEG-1,-2 Audio )、61937-5 ( DTS )、61937-6 ( MPEG2 AAC )、61937-7 ( ATRAC and ATRAC2/3 ) があります。これらもすべて 60958-1 の下に位置するものです。

 

これらの規格書は邦訳版もあり、 JSA の Web Store 

( https://www.webstore.jsa.or.jp/ ) で購入することができます(ただしとても高価ですが)。

 

  デジタル・オーディオ信号の構造

デジタル・オーディオ信号のフォーマットは業務用 ( AES/EBU )・民生用 ( S/PDIF ) とも下図のようになっています。このフォーマットで一番小さな単位を 『サブフレーム』 といいます。『サブフレーム』 は Ch-1 (Lーch) または Ch-2 (R-ch) のデータです。『サブフレーム』 がふたつで 『フレーム』 となり、『フレーム』 が 192個で 『ブロック』 という単位になります。

 

 

 

■サブフレーム
サブフレームは 32 ビットで、それぞれのビットをタイムスロットと呼んでいます。タイムスロットはそれぞれが意味をもち、次のようになっています。

 

タイムスロット 0~3 : 『プリアンブル』 といって、サブフレーム、フレーム、ブロックの同期を検出するためのセクションです。プリ・アンブルはサブフレームの先頭 4 ビットにある同期用のパターンです。プリアンブルには B、W、M の3種類のパターンがあり、ブロックの最初のサブフレーム(つまり Ch-1)のプリアンブルは 『B』 です。それ以外の Ch-1 サブフレームのプリアンブルは 『M』 で、Ch-2 サブフレームのプリアンブルは常に 『W』 です。

 

プリアンブル以外のデータはバイフェーズマーク方式で変調されていますが、プリアンブル部分は変調されておらず、データとプリアンブルが同じようなパターンになってしまうことを避けると共に、プリアンブルの検出を容易にしています。

 

タイムスロット 4~7 : 『オーディオ・オキジャリ』 といって、補助情報または拡張ワード用です。

 

タイムスロット 8~27 : この 20 ビットがオーディオ・データで使用される部分です。16 ビット・データの場合は LSB 4 ビット ( 8、9、10、11)が "0000" になります。24 ビット・データの場合は、更に先程のタイムスロット 4~7 も使います。

 

タイムスロット 28 : 『バリディティ(信頼性)・フラグ』 に使います。一時停止(ポーズ)やデータを補間したときなど、オーディオ・データが真の値でないときにこのフラグを立てて送り出します。受信した側がこのフラグを見てどう処理するかは任意です。

 

タイムスロット 29 : 『ユーザー・データ』 に使います。ここの使い方は、各カテゴリ別に仕様書に規定されています。ユーザー・データを使用しないときは "0" にします。

 

タイムスロット 30 : 『チャネル・ステータス』 に使います。ここにはサンプル・ワード長、プリ・エンファシス、標本化周波数、タイムコード、ソース番号、ディスティネーション・コードなどが記録されています。ここはややこしいので後で詳しく解説します。

 

タイムスロット 31 : 『パリティ・ビット』 に使います。タイムスロット 4 から 31 までの "0" の数と "1" の数がそれぞれ偶数になるようにします。

 

■フレーム
Ch-1 と Ch-2 の 『サブフレーム』 ふたつで 『フレーム』 という単位になります。『フレーム』 の長さは標本化周波数の逆数に等しくなります。つまりワード・クロック 1 周期分の時間です。1フレーム 64 ビットをワード・クロック・レートで伝送するので、「伝送スピードはサンプリング周波数の 64 倍」ということになります。

 

■ブロック
『フレーム』 が 192 個集まると 『ブロック』 となります。チャネル・ステータスなどはブロック単位で扱います。なお、収録されている音楽信号とブロックの区切りとの間には何の関連もありません。つまり音アタマがブロックの開始ということではありません。

 

■チャネル・ステータス
デジタル・オーディオ機器を扱う場合、カテゴリー・コードがどうとか、コピー禁止フラグがどうだとかよく話題になります。これらの情報はどこに入っているのでしょうか?

 

これらの情報はチャネル・ステータスとして含まれています。チャネル・ステータスは合計 24 バイトのデータで、細かい情報まで伝送できるようになっています。

 

しかし 『サブフレーム』 には 『チャネル・ステータス (C) 』 というタイムスロット(ビット)が 1 ビット分しかありません。同じフレームのサブフレームのチャネル・ステータスは原則同じなので、 1 フレーム当たり 1 ビットです。そこで、この 1 ビットを 1 ブロック分、つまり 192 ビット溜めておいて、合計 24 バイトの情報として扱っているのです(1バイト=8ビット)。逆に言うと、1 ブロック分の時間が経過しないとチャネル・ステータスは確定しないということになります。

 

AES/EBU 信号を民生機に入力したり、逆に S/PDIF 信号を業務用機に入力しても "とりあえず音は出る" 理由は、このフレーム構造自体が同じだからです。業務用と民生用の違いは、チャンネルステータス・データの定義が違うということです。しかしデジタル・データにとって、エンファシスのある・なしなどといったデータ・ビットの定義の違いは大きな違いです。

 

それではチャネル・ステータス 24バイト(192 ビット)のそれぞれの意味をみてみましょう。

 

 

A. 放送局スタジオ用 (AES/EBU) の場合

サブフレームのプリアンブルが 『B』 である場合、そのフレームがブロックの始まりだということは説明しました。このフレームのチャネル・ステータスが "1" だと、そのデジタル・オーディオ信号が放送局スタジオ用であることを表しています。

 

そこから 8 フレーム分の 『バイト 0 』 は以下の情報を表します。なおこれらは 『放送局スタジオ用』 の定義です。用途ビット "0" の民生用では全く違う定義になりますので注意してください。

 

バイト0
ビット0 用途
放送局スタジオ用。
ビット1 オーディオ用途の区分。
オーディオ用途
オーディオ以外の用途
ビット2~4 オーディオ信号のエンファシス指定。
000 エンファシスなし。受信側で手動設定できる。
100 エンファシスなし。受信側では手動で設定できない。
110 エンファシス時定数 50/15μsec。受信側では手動で変更できない。
111 エンファシス特性は CCITT J.17(800Hz挿入損失 6.5dB)受信側は手動で変更できない。
その他 未規定
ビット5 ロック状態
ソースの標本化周波数はロックしている。
ソースの標本化周波数はロックしていない。
ビット6、7 標本化周波数
00 標本化周波数の指定なし。受信側では 48kHzと判断するが手動または自動でセットできる。
01 標本化周波数 48kHz。手動または自動でセットできない。
10 標本化周波数 44.1kHz。手動または自動でセットできない。
11 標本化周波数 32kHz。手動または自動でセットできない。

 

次の8フレーム分である 『バイト1』 は以下のとおりです。

バイト1
ビット0~3 チャネル・モード指定
0000 モード指定なし。受信側はステレオ・モードとする。手動でも変更できる。
0001 ステレオ・モード。手動で変更できない。
0010 1チャネル・モード(モノフォニック)。手動で変更できない。
0011 プライマリ/セカンダリ・モード( Ch-1 がプライマリ)。手動で変更できない。
1111 バイト3の将来用。
その他 未規定。
ビット4~7 ユーザービット管理用(未規定)

 

チャネル・ステータスを使用する場合は、このバイト0とバイト1はすべてのデータを伝送する必要があります。逆にチャネル・ステータスを使わない場合は、すべてのデータを論理 "0" にしなくてはなりません。この場合、受信した側は標本化周波数 48kHz、データ長 20ビット、エンファシス無しと認識します。

 

次の 『バイト2』 は、データが 24 ビット・データかどうかを示します。

 

バイト2
ビット0~2 オーディオ・オキジャリ・ビットの使い方
000 オーディオ・オキジャリ・ビットの使い方の指定なし。オーディオ・サンプル・ワード長は 20 ビットである。
001 オーディオ・オキジャリ・ビットはオーディオ・データの拡張用として使う。オーディオ・サンプル・ワード長は 24 ビットである。
その他 未規定
ビット3~7 ソースワード長とソースエンコーディングの履歴用。未規定。

 

その他のバイトについては以下のようになっています。

 

バイト3:将来のマルチ・チャネル化対応。使い方はバイト1で指定することになっています。デフォルト値は00000000です。

 

バイト4、5:デフォルト値は00000000です。

 

バイト6~9:英数字チャネル・オリジン・データ。奇数パリティ付きの7ビット。ISO-646(ASCII)データ。

 

バイト10~13:英数字チャネル・ディスティネーション・データ。奇数パリティ付きの7ビット。ISO-646(ASCII)データ。

 

バイト14~17:ローカル・サンプル・アドレス・コード。レコーディング・インデックス・カウンタと同じ機能。

 

バイト18~21:時間コード。

 

バイト22:チャネル・ステータスの情報が信頼できるかどうか識別するフラグ。

 

バイト23:チャネル・ステータス・データ用 CRCC。

 

 

B. 民生用 (S/PDIF) の場合

ブロックの先頭のサブフレームのチャネル・ステータスが "0" の場合は、その信号が民生用途であることを表しています。なお、ここでは 192 ビットのうちビット 0 からビット 29 まで紹介します。

ビット0
民生用
ビット1~5
0x000 2チャネル・オーディオ(プリエンファシス無)
0x100 2チャネル・オーディオ( 50/15μsecプリエンファシス有)
0x010 未規定(プリエンファシス有の2チャネル・オーディオ用)
0x110
0xxx1 未規定(4チャネル・データ用)
1x000 デジタル・データ
1x1xx 未規定
1xx1x
1xxx1
x0xxx 著作権保護有
x1xxx 著作権保護無

 

ビット2を 『著作権表示ビット』 と呼んでいます。このビットが 0 だと著作権保護を要求されていることになります。しかし特定の用途ではこのビットだけでは著作権状態が定まらないことがあるため、カテゴリー・コードとからめて然るべき処理をしなければならない、と定められています。 

 

次のビット6、7で、モードを決定します。現在のところ、モード0のみ規定されています。

 

ビット6、7 モード設定
00 モード0
その他 未規定

 

モード0 では、ビット8~191はカテゴリー・コードとして次の意味を持ちます。

 

ビット8~15 カテゴリ・コード
000 00000 ゼネラル。限定的に使用。
100 xxxxL 光ディスク機器
010 xxxxL デジタル/デジタル変換機器及び信号処理装置
110 xxxxL 磁気テープ機器及び磁気ディスク機器
001 xxxxL 映像信号付き又は無しのデジタル放送受信
011 1xxxL
101 xxxxL 楽器、マイク及びオリジナル信号を生成するソース
011 00xxx A/D コンバータ(著作権情報無)
011 01xxL A/D コンバータ(著作権情報有)
000 1xxxL 固体メモリ機器
000 0001L 商用に適さない実験機器
111 xxxxL 未規定
000 0xxxL 『000 00000』 及び 『000 0001L』 を除き未規定

 

ビット15は 『Lビット』 と呼び、「世代」 を示しています。通常は
ビット15 = "0" : 指定なし
ビット15 = "1" : 商業的に発行された録音済みソフトウエア
を示しています。上記の表の 『L』 には、ソースによって"0"または"1"が入ります。
 
ただし「光ディスク機器」 と 「デジタル放送受信」では意味が逆になります。
また「著作権情報の無い A/D コンバータ」と 「ゼネラル」 では世代は確定しません。

上記の表のうち、xで表したビットは更に細かいカテゴリ分けが行われていますが、ここでは割愛します。

 

ビット16~19は、ソース番号を示しています。ソース番号とは、同じカテゴリの機器が複数台接続されているときに各機器に番号を付けるためのものです。

 

ビット16~19 ソース番号
0000 指定なし
1000
0100
1100
    
1111 15

 

ビット20~23はチャネル番号を示します。つまり L-ch か R-ch かということです。

 

ビット20~23 チャネル番号
0000 指定なし
1000 ステレオ動作におけるL-ch
0100 ステレオ動作におけるR-ch
1100 未規定
1111

 

ビット24~27は標本化周波数を示します。

 

ビット24~27 標本化周波数
0000 44.1kHz
1000 48kHz
0100 32kHz
その他 未規定

 

ビット28、29はクロック精度(標本化周波数精度)を示します。

 

ビット28、29 クロック精度
00 標準モード レベルⅡ
01 可変ピッチ・モード レベルⅢ
10 高精度モード レベルⅠ
11 未規定

 

この規定は送信側で付けるものなので、伝送経路などの問題で実際に送られてくる信号の精度とこのビットで示される精度が一致しない場合があります。

 

ビット30~191は省略します。

 

SCMSについて:

民生用フォーマットでは、著作権のあるソースを無制限なコピーから守るために、SCMS ( Serial Copy Management System ) を採用しています。例えばCDからDATへのコピーは無制限にできますが、そうしてコピーされたものを更に他のDATなどへコピーすることはできません。

 

SCMS は、チャネル・ステータスのビット2とビット15(Lビット)、及びカテゴリー・コードの組み合わせで判断しています。ビット2が "0" であれば著作権の保護を求めていることになり、Lビットとカテゴリー・コードによって、それがオリジナルなのか複製なのかを判断しています。

 

◇参考文献
上記の表および解説は、主に EIAJ CP-1201 という規格書を参照しています。正確なデータが必要な場合は必ず正式な規格書で確認してください。

 

 

  デジタル・オーディオ信号の同軸伝送 [AES3ID-1995]

 

AES/EBU デジタル・オーディオ信号の伝送には、専用のデジタル・ケーブルを使ってバランス(平衡)伝送しますが、このケーブルが高価で敷設にコストがかかるのと、あまり長距離を引き回せないという欠点があります。そこで 110Ω:75Ωの変換トランスを使ってインピーダンスを 75Ωに変換し、専用ケーブルの代わりに同軸ケーブルを敷設すればコストも下がるし長距離も引き回せるようになります。それに周波数も近いビデオ用のパッチベイなども使えるようになるので便利です。実際に多くのスタジオでこのようなシステムを構築しています。

 

しかしこの方法は何ら規格化されたものではありませんので、あくまで 『自己責任』 で運用しなくてはなりません。それに、確かに初期費用は安くつきますが、接続する機器がそのようなインターフェースをもっていなければ、接続経路の両端で再びバランスに変換してやる必要があります。

 

ただ、同軸ケーブルで伝送するというアイデアは、ビデオ制作の立場からの意見として SMPTE からも AES に要望されていました。テレビ局でもデジタルVTRなどが導入されると、ビデオでもオーディオでも同軸ケーブルを使いたいし、もっと長距離を伝送したい、というわけです。

 

こうした話題が AES と SMPTE の間で交わされ、AES ではデジタル信号をビデオ信号と同じように伝送するための規格を模索しはじめました。そうして 1995年にワーク・グループの研究発表という形で公開したのが 『AES-3ID-1995』 です。

 

同軸ケーブルを使うメリットとしては、ケーブル特性が明確であるので、長距離伝送時に必要な補正用のイコライザが設計しやすいことがあげられます。またビデオ信号と同じ信号レベル ( 1vp-p/75Ω)なので、ビデオ機器用のシステム、パッチベイやルーティング・スイッチャなどをビデオ・システムと共有できる点もあります。

 

標準規格である AES3-1992では、バランス型ケーブルを使った伝送距離は約 100mが限度でしたが、同軸ケーブルを使って適切なイコライザを設計すれば、5C-2V で約 1000m、7C-2V で 1500m、3C-2V でも約 650mの伝送が可能です。

 

『AES-3ID-1995』 と同じ内容で、SMPTE でも 『276M-1995, "Transmission of AES/EBU Digital Audio Signals Over Coaxial Cable"』 として制定されています。

 

なお、『AES-3ID-1995』 『SMPTE 276M-1995』 ではデジタル・オーディオ信号の伝送レベルがビデオ信号と同じ 1v p-pと規定されているので、単純な 110Ω:75Ω変換トランスを使ったシステムとは互換性はありません

 

またビデオ信号と共存するために、波形の立ち上がり・立ち下がりなどでより厳しい波形管理が求められます。信号の波形があまりに崩れていると、シビアなビデオ機器を流用することができなかったり、共通グラウンドを持ったビデオ信号にクロストークなどの悪影響を与えかねないからです。

 


なお Information Document である 『AES-3ID』 の内容は、正式規格である 『AES3-4-2009 附則D "Coaxial transmission"』 と 『AES2ID-2010 附則C "Coaxial cable adapters and equalizer characterrization"』 に引き継がれたため、『AES-3ID』 自体は 2010年 7月 9日をもって撤回されました。

 

 

主な略称

AES : Audio Engineering Society

EBU : Europian Broadcasting Union 欧州放送連合

SMPTE : Society of Motion Pictures and Television Engineers 米国映画テレビ技術者協会

CCIR : Committee Consultative International of Radio-Communication

IEC : International Electro-Technical Commission 国際電気標準会議

EIAJ : Electronic Industries Association of Japan 日本電子機械工業会

JEITA : Japan Electronics and Information Technology industrial Association 電子情報技術産業協会

 

 

 

VUメーターについて巷でいろいろな都市伝説(?)を耳にすることがあります。「VUメータの針が目盛りの赤い範囲に入ると音が歪む」というのもそのひとつで、先日は専門学校の生徒さんからも質問されました。ということは先生がそう教えている?(笑)

 

  VUメーターとは

まずは基本的なところから。VU は Volume Unit の略で、VUメーターは音量監視に特化したメーターです。本来の VUメーターは、+4dBm の信号が入力されてから 300msec以内に指針が 0VU の99% に到達すること、その際のオーバー・シュートは1~1.5%以内のこと、など音量を視覚的に捕らえるための細かな規定があります。

 

また正確な目盛りを刻むため、昔の放送機器で使われていたような高級メーターでは精密減衰器を通した発振器の信号を実際に入れて、その指針の位置に手書きで目盛りを書き込んでいました。視認性+応答速度を調整するために、指針の先端にはハート型の重りが付いていました。

 

現在のVUメーターは小型化が進み、また特性のバラツキもほとんど無いので印刷した目盛りで十分正確なレベル監視ができます。また反応時間も300msecでは遅いということで、より高速な反応をする製品もあります。

 

   0VUとは

さて本題の VU の目盛りですが、では 0VUとはどんなレベルなのでしょう?既に答えが出ていますが、本来の VUメーターは、600Ωの平衡出力(バランス出力)に、3.6kΩの外部抵抗で分路して接続します。このとき出力に +4dBm の信号が出力されていれば、指針が 0VU を示します。つまり VUメーターの目盛りは、+4dBm を 0dB(規準) として、dB の代わりに VU という単位をつけた対数目盛りです。

 

 

  ヘッド・マージン

0VU(=+4dBm)以上の信号を入れたら歪んでしまったのでは仕事になりません。どんな回路設計をしているんだ、という話になってしまいます。

 

ここからは今の時代、アナログ・レコーダーの話はかえってわかりにくいので(笑)、デジタル・レコーダーで話を進めましょう。デジタル・レコーディングでは “フル・ビット(=全てのビットが1)” といってこれ以上大きな信号が入らないというレベルがあります。これを一瞬でも越した分は正しいデジタル・データにならないので歪みやノイズになってしまいます。

 

なので通常は最大レベルでもフル・ビットを越さないように余裕を持ってレコーディング・レベルを決めます。現在では(プロ機器の場合)フル・ビットから 20dB 下がったところを規準レベルとしましょう、ということになっています(例外もあります)。

 

規準レベルというのはつまり VUメーターの針が 0VU を指すレベルです*。ですから信号レベルが 0VU ということは、その上にまだ 20dB の余裕(ヘッド・マージン)があるわけです。指針が+3VUを越して寝てしまっていても、歪むまでにはまだまだ余裕があるのです。

 

逆に言えば 0VUを “絶対に超さない” ようなレベル設定はせっかくのダイナミック・レンジを狭く使い、さらにSN比を悪化させることになります。ピーク音量で絶対にフル・ビットにならない、しかしなるべくフル・ビットに近づける。これがダイナミック・レンジを最大限に取ることになります。

 

ちなみにアナログ・テープ・レコーダーの場合は、メーカーや機種、使うテープによってヘッド・マージンが違っていましたが、おおよそ15dBはあったはずです。またデジタルと違って、オーバー・レベルでもいきなり歪むわけではなく徐々に歪んでいくので、わざと歪み感を生かしたようなレコーディングをする場合もありました。そういう時は当然、レコーダーのVUメーターの指針は振り切れたまま、寝っぱなしです(笑)。

 

VUメーターは聞こえている音量と指針の動きが一致しているので音量監視には最適なのですが、信号レベルの厳密な監視という点では反応時間が遅すぎます。特に一瞬でもフル・ビットを越してはいけないデジタル・レコーディングの現場では、ピーク・メーターの併用をお薦めします。

 

* フル・ビットを 0dBとして、+4dBm (= 0VU) の信号が入力された時に -20dB になるようにADコンバーターを含めた回路のレベルを設定してある、という意味です。

 

  VU目盛りと%目盛り

VU目盛りの下の%目盛りは歪み率だ、と言っているのを聞いて目が点になったことがあります(笑)。どうやら 0VU を越すと歪むという都市伝説(?)はそのあたりの誤解から来ているのかもしれません。

 

 

%目盛りは 0VU = 100% となっていますが、では -6VU は何%ですか? 50%になっていませんか? もうおわかりだと思いますが、対数である VU 目盛りの下に、リニアの目盛りを振ってあるのです。

 

VUメーターそのものはベル研究所が電話用に開発したものなので、当時は「0VU(100%)を越してはいけない」というような使い方だったかもしれませんし、そのための赤い目盛りだったのかもしれません。しかし現在のようにオーディオ機器に使われている場合は以上の理由で「越えたらすぐに歪む」ことはないということがご理解いただけるでしょう。

 

  メーター・アンプ

本来のVUメーターはメーター・アンプなどが不要なパッシブ機器です。しかし逆に見ると600Ωラインでしか使えず、今のようなロー出し・ハイ受けが一般的な状況ではそのままでは正確な表示ができません。なので600Ωライン以外で使うには、メーター・アンプでインピーダンス変換して入力してやる必要があります。また600Ωラインで使う場合でも、出力に VUメーターをそのまま挟むとメーターの逆起電力などの影響で歪が増えてしまいます。メーター・アンプでアイソレーションを取ったほうが音質的に有利です。

 

  鉄用、非鉄用

VUメーターの構造は、磁石を囲むようにコイルを巻いたボビンがあり、そこに指針が付いています。コイルに電流を流すとフレミングの法則でボビンが動き、針が振れます。

 

実はVUメーターには、それを固定するパネルが鉄製か、アルミのような非鉄製かの2種類があり、使い分ける必要があります。磁気を使用しているので、パネルが鉄製だと指針の動きが影響を受けるためです。外観が同じでも『鉄』あるいは『Fe』と表示があったら鉄パネル用、『非鉄』とか『NFe』とあったら非鉄パネル用のメーターです。間違えると指示値が変わってしまいます。

 

 

 

 

オーディオ・トランスは、最近はほとんど使われなくなったこともあって、実務の参考になるような書籍もほとんどありません。またその取扱いについても知っている人には当たり前のことでも、知らない人にはなかなか難しいものです。

 

ここではオーディオ・トランスの巻線比やインピーダンス比、またアイソレーションの取りかたなど実践的なお話を書いておきます。

 

  マイク・トランスの増幅率とインピーダンスの計算

LUNDAHL (Sweden) の代表的なマイク・トランス LL1538 を例にとります。LL1538 のデータ・シートを見ると、巻線比 ( Turns Ratio ) は 1+1 : 5 と表示されています。これは 1次側に同じ巻線数のコイルがふたつあり、2次側にはその 5倍の巻線数のコイルがひとつある、という意味です。(丸数字は巻線比)

 

 

ちなみに中央の縦線はコアを表し、破線は静電シールドを表しています。静電シールドはマイク・トランスのように扱う信号レベルの低いトランスに使われ、通常はグラウンドに接続して使います。

 

LL1538 の使い方としては、1次側のふたつのコイルをシリース(直列)に接続して、巻線比 2 : 5 (= 1 : 2.5 )として使うか、パラ(並列)に接続して 1 : 5 として使います。マイク・アンプの初段に使う場合はゲインが高いほうが後段の設計が楽なので、1 : 5 で使う場合が多いでしょう。

 

トランスの増幅率は巻線比と同じです。つまり巻線比 1 : 5 のトランスの増幅率は 5倍です。これをデジベルに直すと約 +14dBになります ( 20log5 ) 。LL1538 より増幅率が高い LL1578 の場合は、1+1 : 10 という巻線比なので、 1次側巻線をパラレルにすればゲインは約 +20dBになります。LL1538 とはピン・コンパチブルでケース・サイズも同じなので、もう少しトランスだけでゲインを稼ぎたいという場合には差し替えて使うことができます。

 

トランスのインピーダンス比は巻線比の 2乗です。つまり LL1538 を 1 : 5 接続した時のインピーダンス比は 1 : 25 です。LUNDAHL のデータ・シートにはインピーダンス値の記載がありませんが、 200Ω : 5kΩとなっています。インピーダンス値そのものはあまり深く考える必要はありません。メーカーがデータ・シートにトランスの測定データを記載した時の測定条件、程度の意味です。実際の回路で使用するときに 2次側を 5kΩで終端 "しなくてはならない" ということではありません。そもそもそれではマイクの負荷インピーダンスが 200Ωになって、使い勝手が悪すぎます(マイクロフォンの出力インピーダンスの 5倍以上は確保したいところです)。

 

インピーダンス比が 1 : 25 なので、例えばトランスの 2次側を 47kΩあたりで終端したとすると、1次側のインピーダンスはその 1/25、おおよそ 2kΩ前後になる、ということがわかります。あたり、とかおおよそ、とかずいぶん大雑把な感じですが、実際にはトランスの挿入損失やら個別のバラツキなどがあるのでピッタリと計算値どおりにはいきません。この程度わかれば十分です。

 

トランスのデータ・シートに、巻線比ではなくインピーダンス値の記載しかない場合は、インピーダンス比からトランスの増幅率(つまり巻線比)を計算します。例えば 200Ω: 5kΩのトランスだったら、5k ÷ 200 のルート(平方根)をとってデシベルに直してみましょう。約 +14dBになりましたか?

 

ちなみに LL1538 の 1次側をパラレル(並列)接続して、巻線比 1 : 2.5 で使った場合、2次側を 5kΩで終端した時に 1次側に現れるインピーダンスは?答えは 800Ωです。インピーダンス比は巻線比の 2 乗に等しい、ということを思い出してください。巻線比が半分になったら、インピーダンス比は 4分の 1です。

 

  マイク・パッド

マイク・トランスは増幅機能がある分、最大入力レベルが低いのが一般的です。 LL1538 の場合は歪率 1%(目に見えて波形が潰れ始めるあたり)の入力信号レベルは +10dBU/50Hzです。 トランスは低域から飽和し始めるので、測定信号には 50Hzという低い周波数を使います。1kHzならもうちょっと耐えられるはずです。

 

生音の収録などで、音源の音量が大きく、トランスの許容入力レベルを超えてしまいそうなときは、トランスの前に抵抗器によるパッド(減衰器)を入れます(マイクロフォンの許容入力は意外と大きいので、大抵の場合、トランスが先に飽和します)。 パッドは減衰量の計算だけでなく、入れた時と入れない時でマイクから見た負荷インピーダンスが変わらないように抵抗値を選びます。そうしないと特にダイナミック・マイクでは負荷インピーダンスが変わって音質が変わる可能性があります。

 

図は一般的な R1、R2、R3 によるパッド ( R1 = R2 ) ですが、R3 はトランスの 入力インピーダンスと並列になるので、その合成抵抗値を Rx と考えます(ちなみにそのトランスの入力インピーダンスは、トランスの2次側の負荷インピーダンスで決まります)。 なので減衰量は Rx ÷ (R1 + R2 + Rx)、入力インピーダンスは R1 + R2 + Rx です。減衰量を -20dB、トランスの入力インピーダンスを 2kΩとすると、 E24系列の抵抗値に当てはめて R1 = R2 = 910Ω、R3 = 220Ωあたりでしょうか。

 

パッド・スイッチを入れた実用回路はこのようになります。 スイッチがOFFの状態ではR1とR2はスイッチの接点でショート状態になり、R3はフローティングになります。 スイッチをONにすると上の回路と同じ接続になります。スイッチは金メッキ接点など、微少電流用のものを使いましょう。

 

  ダイレクト・ボックス用として使う

LUNDAHL には LL1530 という、 ダイレクト・ボックス用*と謳ったトランスがあります。 ダイレクト・ボックス用と言っても素性は普通のマイク・トランスです。巻線比は 1 + 1 : 3.5 + 3.5。1次側、2次側とも複巻です。 1次側をパラレル、2次側をシリースにすると巻線比 1 : 7 になるので、インピーダンス比は 1 : 49 です。

 

ダイレクト・ボックス用として使う場合は、信号の増幅ではなく高い入力インピーダンスを求められるので、1次側と 2次側を逆に使います。 つまりいつもの 2次側を入力に、1次側を出力にします。この時点で、インピーダンス比は 49 : 1 です。

 

ここでトランスの出力をコンソールのマイク入力に接続して、(一般的なマイク・アンプの入力インピーダンスである) 2kΩで終端されたとすると、 トランスの入力側、つまり楽器側から見たインピーダンスは計算上 49倍の約 100kΩという高インピーダンスになります。 ただし当然ながらゲインは約 17dB 下がるので、それを含めてマイク・アンプで増幅してやることになります。

 

 

LL1530を使ったダイレクト・ボックスは、アメリカ製のそれによくあるず太いサウンドとは対極の、非常に繊細で肌理の細かいヨーロピアン・サウンドを醸し出してくれます。

 

 

ダイレクト・ボックスとは : エレキ・ギターのような出力インピーダンスの高い楽器の出力を、 ミキシング・コンソールまで延々とシールド線を引っ張って接続するのは音質的によくありません。 そのためにギターのすぐ近くで、ギターの出力インピーダンスより高いインピーダンスで一度信号を受け、それを低いインピーダンスに変換して、バランス(平衡)伝送で コンソールに送ります。
 
このインピーダンス変換器のことをダイレクト・ボックス(ダイレクト・インジェクション・ボックス)と呼びます。 つまりギター・アンプの音をマイクで拾うのではなく、ギターの出力を直接コンソールに入力する、という意味です。 変換方式はトランスを使ったパッシブ型やFETプリアンプを使ったアクティブ型など様々な種類があります。

 

  ライン・トランス

マイクロフォンのような微少信号を増幅する目的ではなく、ライン・レベルの信号を扱うトランスを総称してライン・トランスと呼びます。 ライン・トランスはバランス-アンバランス変換、グラウンド・アイソレーション、インピーダンス・マッチング、分岐回路など様々な目的に合わせた 多くの種類があります。

 

ライン・インプット・トランスは機器の入力部に使われ、バランス伝送されてきた信号を受けて内部回路に送ります(バランス→アンバランス変換)。 後続回路の入力インピーダンスが高いので、細い巻線をたくさん巻き付けて自身のインピーダンスを上げた構造になっています。 ハイ受け前提なので、600Ω受けの機器に接続するとレベル・ダウンを起こします。また1次側・2次側を逆に使うことはできません。

 

ライン・アウトプット・トランスは内部回路の出力をバランス伝送路に送り出します(アンバランス→バランス変換)。 こちらは機器の出力インピーダンスが低いので自身の巻線インピーダンスを下げるため、太い巻線を少なめに巻いています。 ライン・アウトプット・トランスは汎用性が高いので、トランス・ボックスのような用途にも向いています。

 

スプリット・トランスは入力信号を、分配アンプを使わずに2~4分岐できる便利なトランスです。 屋外などで電源が確保できず、ADA(分配アンプ)が使えない状況などでは、スプリット・トランスが入ったスプリット・ボックスが重宝されます。 実は複巻のトランスなら信号分岐はできてしまうのですが、分岐した先に何がつながるかわからない(グラウンド電位差や浮遊容量)状況では、特性が保証されないイレギュラーな使い方ではなく、想定される問題をいろいろ考慮している分岐専用のトランスを使うのが賢明です。

 

  グラウンド・アイソレーション

海外製のパワー・アンプを使うと、ブーンというハム・ノイズに悩まされることがあります。多くは海外と日本で商用電源のアースの取り方が違うことが原因で、パワー・アンプとプリ・アンプ(やコンソール)の間で信号線のグラウンドを切り離してやると簡単に解決します。

 

 

ただしこの場合、どちらかがアンバランス機器だと信号グラウンドを切り離すわけにいきません。こういう時はライン・トランスを使います。

 

「グラウンド・アイソレーション用には、ライン・インプット・トランスを入力側(信号を受ける)機器に使うのと、ライン・アウトプット・トランスを出力側機器に使うのとどちらがよいのですか?」というお問い合わせもあります。こういう場合は汎用性の高いライン・アウトプット・トランスをお薦めしています。

 

ライン・アウトプット・トランスは自身のインピーダンスが低いのと、もともと2次側を延々と引き回される用途に使われるので、トランスからパワー・アンプまでの距離が多少延びても問題が出ません。

 

 

 

  アンバランス-バランス変換

アンバランス出力の機器をバランス入力のパワー・アンプにつなぎたいのだが、というお問い合わせもよくいただきます。せっかくパワー・アンプの入力がバランスなので、1-3 ピンをショートしてアンバランスにするのは忍びないですね。トランスを使いましょう。

 

この場合も外来ノイズに弱いアンバランス(不平衡)部分を短く、バランス(平衡)部分が長くなるようにしましょう。ライン・アウトプット・トランスをアンバランス出力機器の直後に入れることをお薦めしています。接続は以下の通りです。1次側と 2次側でグラウンドが完全にフローティングになっています。

 

 

もしアンバランス機器の出力レベルが、相手のパワー・アンプに比べて著しく低いようでしたら、 1 : 1 のライン・トランスではなくマイク・トランスで昇圧してやるという方法もあります。

 

マイク・トランスは最大入力レベルは低いのですが、たとえば基準出力レベルが -20dBu あたりのコンシューマ機器が最大で +10dBuも出せるとも思えないので、特に問題はないでしょう。むしろ SN 比が向上する、プレゼンス感など音質が向上するといったメリットも大きいものです。実際に LL1538 の音質を活かしてこうした用途にお使いのユーザーもいらっしゃいます。

 

 

ただしこの場合、アンバランス機器から見た負荷インピーダンスが、パワー・アンプの入力インピーダンスより下がってしまいますので注意が必要です。

 

LL1538 を巻線比 1 : 2.5 接続で使った場合、パワー・アンプの入力インピーダンスが 50kΩでもアンバランス機器の負荷インピーダンスは 8kΩになります。もし『負荷インピーダンス 10kΩ以上』という機器の場合はオーバー・ロードになってしまいます。アンバランス機器のドライブ能力に注意しましょう。

 

 

 

オーディオ・トランスは、最近はあまり使われなくなったこともあって、実務の参考になるような書籍もほとんどありません。 またその取扱いについても知っている人には当たり前のことでも、知らない人にはなかなか難しいものです。

ここではオーディオ・トランスの扱いのうち、断線チェックと消磁について書いておきます。

 

  断線しているかどうかを調べるには

オーディオ・トランスが断線しているかどうかを調べる時に、ついうっかりやってしまいそうになるのがテスターの抵抗レンジあるいは導通レンジで測ることです。しかしこれは絶対にやってはいけません。

 

テスターの抵抗レンジや導通レンジは、被測定物に DC(直流)を流して測定します。オーディオ・トランスは鉄芯(コア)にコイルを巻いてあるわけですから、このコイルに DCを流すということは、小学生のときに理科の実験でやった『電磁石』を作ることと同じです。

 

その結果、万が一本当にコイルが断線していればよい(?)のですが、もし正常なトランスだった時はトランスの鉄芯が帯磁してしまい、本来の性能が発揮できなくなります。音を聴いてみればわかりますが、鉄芯が帯磁したトランスでは高音域が著しく減衰してくぐもった音になります。

 

オーディオ・トランスの断線を調べるには、交流信号を使わなくてはいけません。面倒くさがらずにオーディオ・アナライザで調べるか、あるいはオーディオ・オシレータ(発振器)とオシロスコープあるいは交流電圧計で調べましょう。

 

そのトランスの規定レベル以下の信号を 1次側から入力し、2次側に所定レベルの信号が出てきていることを確認します。もしレベルが著しく低い、あるいは全く出力されなければ、巻線が断線しています。

 

  オーディオ・トランスを帯磁させてしまったら

うっかりオーディオ・トランスをテスターで測って帯磁させてしまった場合は、消磁しなくてはなりません。また機器に組み込まれたトランスでも、長い間使っているうちに電源の入/切時のオフセット電圧や、回路の漏れ電流などでトランスに直流が流れ、帯磁してしまう場合もあります。こういう時も消磁してやると音が見違えるように良くなります。特にトランスを使っているマイクロフォン・ヘッドアンプ等では効果が顕著です。ケーブルの素材やコンデンサーに凝る前に、基本的なことで音質改善が図れます。

 

オーディオ・トランスの消磁は、手元にオーディオ発振器があれば簡単に行えます。この場合、サイン波が出力できて、出力レベルが連続可変で 0vまで絞り込めるものが必要です。

 

手順を間違えなければ、やりかたは簡単です。トランス単体を消磁してみましょう。

 

◇オーディオ発振器の出力を 1kHzのサイン波にします。出力レベルをそのトランスの飽和レベルのおよそ倍くらいにセットしてトランスの1次側に入力します。トランスの 2次側は開放でかまいません。

 

◇5秒ほどそのままにして、ゆっくりと、30秒ほどかけて発振器の出力を下げてゆきます。この時、できるだけ滑らかに出力レベルを下げていくことが肝心です。途中で止めたり急激に下げたりすると、余計に帯磁させかねません。

 

◇発振器の出力を 0vまで絞ったら完了です。完全に絞りきれないと消磁しきれなかったり、逆に悪化させることもありますので注意してください。

 

この方法でマイクロフォン・ヘッドアンプも同様に消磁することができます。ミキシング・コンソールのヘッドアンプなら、コンソールに付いているオシレータが使えます。もしオシレータの出力レベルが 0vまで絞れない場合は、チャンネル・フェーダを通すなどの工夫をしてみてください。

 

消磁器を使ってテープ・レコーダーのヘッドを消磁したり、テレビのプラウン管を消磁したことのある方なら「なぁんだ、同じやりかたじゃないか」とおわかりでしょう。つまり過大入力によって、帯磁した鉄芯をいったん飽和レベルまで上げて、そこから徐々に下げていくことで消磁することができるのです。

 

「マイクロフォン入力用のトランスにそんな過大電流を流して大丈夫か?」という疑問が沸きそうですが、この程度のレベルであれば全く問題はありません。

 

オーディオ機器やオーディオ・システム全体を消磁するには、グリフォンの『The Exorcist』(写真)のような専用の消磁器を使うのがもっとも手軽です。これはプリ・アンプの入力からパワー・アンプのスピーカ・アウトまでの経路をトータルに消磁するためのものです。その効果は高く、聞き慣れた自宅のステレオ・セットやスタジオのミキシング・コンソールに使うと、あまりの音の違いに誰もが驚くほどです。

 

使い方は簡単で、プリ・アンプの AUX入力につないでスイッチを入れるだけで、約 30秒で消磁が完了します。出力レベルが高いので、ライン入力専用です。フォノ入力には使えません。

取扱い説明書では、パワー・アンプのボリュームは通常の聴取位置にしなさいと書いてあります。つまり消磁作業中はスピーカから大きな音が出るということです。耳を守るために「部屋の外に出ているように」薦めています。

 

 

オーディオ機器の入出力部に『平衡(へいこう)』あるいは『バランス』、または『不平衡』あるいは『アンバランス』と書かれていることがあります。よく「キャノンがバランスで、ピン・ジャックがアンバラ(ンス)」と言う人がいますが、コネクタの形状だけでは判断できません。バランスとアンバランスは、回路の伝送方式の違いです。

 

  バランス(平衡)伝送

2本の乾電池で豆電球を灯けることを考えてみましょう。 図のように乾電池の+と-から2本の電線を出して、それを豆電球につなぎます。電気は + から出て - に返ってきますから、行きと返りの2本の電線が必要です。 2本の電池のつなぎ目 A点を基準とすると、基準点と行きの電線間の電圧は +1.5v、基準点と返りの電線間の電圧は -1.5vです。 つまり極性が逆で(符号を外した)絶対値は同じです。

 

 

オーディオ信号も同じように伝送には2本の電線が必要で、基準点はGND(グラウンド)です。+(ホットと呼びます)から出た信号は-(コールド)から返ってきます。

 

電池の時と同様、オーディオ信号でも GND と行きの線(ホット)の間にかかる電圧と、GNDと返りの線(コールド)にかかる電圧は、極性(位相)が逆で値が同じです。 このような伝送方法を、バランス伝送といいます。難しい言い方をすると「平衡(へいこう)」といいます。

 

バランス伝送された信号は差動増幅回路で受けます。差動増幅回路とはその名の通り、+入力と-入力の『差』を増幅する回路です。 たとえば+入力が+1v、-入力が-1vだとすると、差動回路の出力は(+1)-(-1)= +2 となります。

 

ここで+入力と-入力に外部からノイズが混入したとしましょう。ノイズは+入力にも-入力にも等しく+0.5v 混入したとすると、差動回路では(+1 +0.5)-(-1 +0.5)= +2 とみごとにノイズ成分だけが打ち消されてしまいます。バランス伝送が外来ノイズに強いのはこのためです。

 

オーディオの世界では、ホットとコールドの2本に、ノイズなどが飛び込まないようにシールドで被った電線(2芯シールド)を使います。 シールドはグラウンドに接続しますが、図を見ればわかるようにバランス伝送ではシールドが無くても伝送そのものには影響がありません。 なので「機器どうしのグラウンドを接続したらトラブルが出た」というような時には、どちらかのシールドを切り離してみるといった対策が取れます。

昔の放送機器やプロ用オーディオ機器では、バランス伝送にはオーディオ・トランスが多く使われてきました。 トランスは電源不要で手軽に高性能なバランス伝送回路を構築できるので大変便利でしたが、コストやサイズ、性能の制限でだんだん使われなくなりました。 代わりにオペアンプを使った回路が多用されるようになり、現在の主流になっています。カタログなどに「電子式バランス回路」という記述があればたいていはオペアンプを使った回路です。

 

トランスのセンター・タップをグラウンドに落とした、正統派バランス伝送回路。 理屈がわかりやすく、昔は主流だったが今はまず見かけない。現在はセンター・タップを使わないのが主流(理由はわかりますか?)。

 

  アンバランス(不平衡)伝送

これに対して、シールドにコールドの役目もしてもらおうというのがアンバランス伝送です。 シールドはグラウンドにつながるので、グラウンドに対するホットの電位と、コールドの電位が同等ではなくなってしまいます。なのでアンバランス伝送といいます。難しくいえば「不平衡(ふへいこう)」です。

 

アンバランス伝送ではコールドとシールドが共用なので、シールドがつながらないと音が出ません。つまりお互いの機器のグラウンドを分離できません。

 

電線代やコネクタ代など、価格的にはこちらのほうが安価にできますが、差動増幅器のメリットを享受できないので、外来ノイズなどには弱くなってしまいます。 従って長いケーブルを延々と引き回すことはできませんし、アース周りのトラブルが出るとお手上げです。業務用機器にバランス仕様が多いのは、こうした理由があります。

 

なお、バランス/アンバランスという伝送路の違いが、音質の違いに直接影響するということはまずあり得ません。 ただしバランス入出力の機器の場合、内部(プリント配線板など)はアンバランス回路ですからアンバランス-バランス変換回路を通ります。 そのレシーバやドライバの出来が音質に影響を与える可能性は大いにあります。

 

逆に言えば、入出力がアンバランスの機器はそれだけ回路がシンプルですから、伝送路が相対的に短ければ音質的には有利かもしれません。

 

 

 

我々が日常、大きさや量を比べるときに使う「2倍」「3倍」などの『』という単位は、対象が小さい場合には直感的でわかりやすい比較の単位です。

 

しかし我々が仕事で扱っている電気の世界では、実用単位が大きいので、『倍』という単位ではかえってわかりにくくなってしまいます。 たとえば増幅率1000倍のアンプの次に増幅率 1000倍のアンプをつなぐと、合計した増幅率は掛け算になるので、1000000倍のアンプになります。

 

でもこの数字をぱっと見ただけで読むのは難しいし、0をひとつ読み間違えただけで大変なことになります。そこで、『対数』を使います。

 

  対数とはなにか

電気の世界では、10 を底とした対数を使います。つまり、その数値が 10 の何乗かで表わします。 『 log10 100 = ?』 という式は、『 100 は 10 の何乗か?』という意味です。答えは当然 2 ですね。10 を底とした場合は、log の右下の 10 は省略します。つまり log100 = 2 と書きます。

 

それでは log 1000 はいくつですか? log 10000 は? 答えはそれぞれ 3、4です。この 100、 1,000、 10,000 がそれぞれ「倍」にあたります。 1,000倍という大きな数値も 4 と表記できるわけです。これが対数の便利なところです。

 

ただし電気の世界では、これでは数値が小さくなりすぎるので、この値を 20倍して使います(電力の場合は 10倍)。 更に対数表記であることを明確にするために、[dB](デシベルとかデービーと読みます)という単位をつけます。 つまり先程の増幅率 1000倍は、20 log1000 で表わします。いくつになりますか?  20 x log1000 = 20 x 3 = 60 [dB]ですね。つまり 1,000[倍] は 60[dB]と表わします。

 

逆にレベルが 1/100 (0.01倍) に減衰したとすると、20 log 0.01 = -40 [dB]となります。つまり「百分の一になった」と言わずに「 40デシベル下がった」と表現するわけです。

 

ちなみに『0 dB 』といったら何倍のことでしょうか? 計算すればわかりますが、1倍のことです。いちいち計算しなくても『常識』として覚えましょう。

 

  「リニア」の掛け算は「ログ」の足し算

それではもうひとつ。先程のアンプの増幅率(利得/ゲイン)を対数(ログ)で計算してみましょう。ログに対して「倍」という表現は「リニア」と呼びます。 対数の計算で重要なことはもうひとつ。「リニア」の掛け算は「ログ」の足し算で済みます。

 

先程の増幅率は1000 × 1000 [倍]と計算しましたが、同じ増幅率がdB表示では 60 + 60 = 120 [dB] と足し算で済んでしまいます。 先程の 1000000と違って、120を読み間違える人はいないと思います。ちなみに「リニア」の割り算は「ログ」の引き算となります。 つまり 1000倍 ÷ 10倍は、 60dB-20dB という計算になります。

 

検算を兼ねてログをリニアに変換してみましょう。つまり 120dBは何倍か? を確認します。まず 120 [dB]を20で割ります。 つまり logX = 6 です。X = 10^6(10の6乗)ですから、ちゃんと 1000000になりますね。ここはしっかりと理解してください。

 

対数を計算するのは関数電卓があれば簡単です。というより、回路設計では手元に無いと仕事になりません。しかし日常よく使う対数は覚えておきましょう。 特に 3dB(約1.4倍)、6dB(約2倍)、10dB(約3.16倍)、20dB(10倍)はよく使います。 またこの4つを覚えておけば、9dBや 12dB、13dB、16dB、19dB、23dB、26dB、29dB、30dBも計算できます。計算方法はわかりますね。

 

たとえば 12dB = 6dB + 6dBですから、 2倍×2倍約4倍 26dB = 20dB + 6dB = 10×2 = 約20倍 と計算できます。

 

オーディオ回路では、規準となる 1kHzの信号に対してレベルが -3dB(3デシ落ち)になるポイントが何Hzかでその回路の周波数特性を把握します。 また、レベルが2倍になる +6dB、半分になる -6dBは、日常よく使うというより常識のレベルです。さらに +10dBときたら「約3倍か」、10dB落ちたと聞いたら「約1/3だな」と把握できるようにしておきましょう。

 

  『絶対レベル』 と 『相対レベル』

財布の中には 1000円しかない、というときの『1000』と、昨日より手持ちが 1000円減った、というときの『1000』では意味が異なります。 財布の中身の「1000」は、中身の金額そのもの、つまり『絶対レベル』を表わしていますが、昨日と比べた「1000」のほうは、財布の中に実際にいくら入っているかはわかりません。 絶対レベルはわからないが、昨日に比べて『相対』的に1000減ったということです。相対レベルを表わすには対象が必要です。 つまり「~に比べて増えた、減った」という、比較の相手(規準)がなければなりません。

 

オーディオ信号の周波数特性を測定するときには、一般的に 1kHzのレベルを規準とします。 つまり 1kHzのレベルを +4dBmなど規準のレベルに合わせておいて、それに比べて他の周波数のレベルが何dB高いか・低いかを調べます。 もし 1kHzと 2kHzのレベルが同じなら、2kHzは 0dBである、ということになりますし、10kHzでレベルが半分になっていたら、10kHzは -6dBということになります。 この場合の 0dB、-6dBは『相対レベル』です。

 

ところで、スタジオなどでは機器の受け渡しの規準レベルが『+4dBm』となっている場合がほとんどです(通称「プラヨン」といいます)。 つまり +4dBmの信号を入れると、レベル・メーターが規準の 0dB(VUメーターなら 0VU)を指すようになっています。 ややこしくなってきました。この +4dBmというのは何でしょうか?

 

実は dBの後ろに m のような英語の添え字が付くと、相対レベルではなく絶対レベルを表わします。 添え字によって規準が異なり、いくつか種類があります。

 

dBm』 は、『 600Ωの負荷に対して 1mWを生じる電圧を 0dB(規準)とする』 ことになっています。 この電圧は +0.775vrmsですので、0dBm = +0.775vrmsという意味です。では +4dBmは何vになるか計算してみてください。約1.228vになりましたか?

 

このほかには負荷を 600Ωと限らず、単純に +0.775vrmsを規準とした dBu / dBv [ 0dBu = 0dBv = +0.775vrms] という単位もあります。 昔の放送機器などは入出力のインピーダンスが 600Ωだったので dBmという単位が有効だったのですが、今は 600Ωの機器が少なくなってきました。 ですから慣習上「+4dBm」と言っていても、実際は「+4dBu / +4dBv」の意味の場合が多いのですが、電圧値は同じなのであまり問題になりません。

 

他には 1vrmsを規準にした dBV [ 0dBV=1vrms ] などがありますが、スタジオではあまり一般的ではありません。

 

ちなみに、dBvと dBV は大文字・小文字が違うだけで数値が大きく異なります。間違いやすいので、特にアメリカでは dBv は使わず、dBu が一般的です。

 

それよりなぜ絶対値をわざわざこのようなデシベル表示で表わすのでしょうか? さきほどの周波数特性のところでは、+4dBmの 1kHzの信号を 0dB(規準)として他の周波数を測定することになります。 従って 1kHzとのレベル差が 0dB だった 2kHz の絶対レベルは +4dBm とわかります。

 

それでは 1kHz に対して -6dB だった 10kHz の絶対レベルは何dBmでしょう? +4dBm が +0.775v で、その -6dB だから 0.775 ÷ 2 で・・・と計算する必要はありません。『+4 - 6 = -2 [dBm]』 で済んでしまいます。

 

-2dBm が何vかを換算する必要というのは、実際にそれ程ありません。

 

もうひとつ、オーディオ機器には、パワー・アンプのような電力を扱う機器から、マイクロフォンのように微小電圧の機器までさまざまあります。ちなみにマイクロフォンの規準レベルは -60dBu 程度です。 これを +4dBm のいわゆるライン・レベルまで増幅するマイク・アンプ(ヘッド・アンプ)のゲインは +64dB ということになります。 これをリニアで(つまり電圧値で)表示すると、マイクの規準レベルが +0.000775v (+775μv)) で、ヘッド・アンプのゲインは約 1585 倍、となります。どちらがややこしいですか?

 

このように便利なdBですが、英小文字ひとつ付ける、付けないでまったく意味が変わってしまうということをよく理解しておいてください。

 

たとえば同じ測定結果でも、ノイズのレベルは -90dBu で規準信号レベルが 0dBu なら、S/Nは 90dB です。もし信号レベルが +4dBu なら、S/Nは 94dBとなります。

 

また、レベルについての会話では、絶対値の dB を言っているのか相対値の dB のことなのかややこしい場合があります。 「 3デシ ( 3dB )上げてプラヨン ( +4dBu ) にしてください」とか 「マイナス 10 ( -10dBu ) に 2 デシ ( 2 dB ) 足りないね」 というのは、慣れれば何ということもないのですが、初めのうちは何を言っているのかわからないかもしれません。 絶対値にはたいてい符号(+/-)が付きますから、よく聞けば区別がつきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  デジタル・オーディオ信号の周波数

AES/EBU規格のデジタル・オーディオ信号の場合、伝送速度は 『サンプリング周波数の64倍』 です。つまり 48kHzでサンプリングされたデジタル・オーディオ信号は、ケーブルの中を約 3MHzで伝送されているわけです。これはオーディオ信号とはいえ高周波の世界です。

 

高周波は、可聴帯域の音声信号とは全く違う特性をもっています。従ってその伝送には専用のデジタル・ケーブル、あるいは同軸ケーブルを使って、インピーダンスをマッチング(整合)させることが必要です。

 

もし誤って一般のマイク・ケーブルなどを利用した場合でも信号の伝送そのものはできますが、著しく質の悪い信号になっているでしょう。機器の中ではエラー補正がかかりまくっているかもしれません。このような状態では 「デジタルは音が変わる」 などとは言わないほうがよいでしょう。

 

と、ここまではデジタル機器のカタログにも載っていますのでご承知だと思います。それでは実際にインピーダンスを整合させるとはどういうことなのでしょうか。

 

  インピーダンス整合

ちょっと話が横道にそれますが、ビデオ信号などの高周波信号では、伝送経路で 『反射』 という現象が問題になります。つまりある機器から出力された信号が、ケーブルを通って相手の機器の入力までいったところで、信号の一部が跳ね返って戻ってきてしまう現象です。『反射』 が起こると、行き (進行波) と返り (反射波) が干渉しあって定在波が発生し、本来の信号に干渉して波形が乱れ、正しい信号が伝送できません。そこで同軸ケーブルの出番となります。

 

同軸ケーブルは 『太さ』 と 『インピーダンス』 が規定されています。たとえば 3C-2V という同軸ケーブルは、前の 3C が 「内部の絶縁体の径が約3mm、インピーダンスが75Ω」 を現し、後ろの 2V は 「絶縁体がPEで、シールドが1重、外被が PVC」 という意味です。 3D-2V はインピーダンスが 50Ω となります。高周波の世界では絶縁体の種類によっても特性が変わってくるのです。

 

ちなみにこの 3C-2V のような型番は JIS 規格ですので、外国では通じません。アメリカでは MIL 規格である RG/U型ケーブルが一般的です。RG は Radio Guide の略、U は Universal を意味します。特性的には 3C-2V と RG59/U がほぼ同等、3D-2V と RG58/U がほぼ同等ですが、機械的な規格は微妙に異なるので、例えば 3C-2V 用のコネクタは RG59/U には使えません。

 

PE : Polyethylene (ポリエチレン)
PVC : Polyvinyl chloride、(ポリ塩化ビニル)

 

  同軸ケーブルのインピーダンス

では同軸ケーブルのインピーダンスとは何でしょうか? 75Ωケーブルは 「どこで切っても 75Ω」 と言われますが、どういう意味なのでしょうか?

 

同軸ケーブルのインピーダンスは 「そのケーブルを無限に伸ばしたときに、手元から見たインピーダンス」 です。 手元を 10メートル、100メートルばかり切ったところでその先はやはり無限ですから、インピーダンスは 75Ωです。これが 「どこで切っても 75Ω」 の意味です。

 

現実には無限に引っ張るわけにいきません。そこで、有限の長さ、たとえば 10メートルの長さの同軸ケーブルの、向こう側の切り口の芯線とシールドを 75Ωの抵抗でつないでやります。 これを終端する(ターミネート)といいます。こうすると手元から見た同軸ケーブルのインピーダンスがほぼ 75Ωになるので、同軸ケーブルを無限に引いたのと同じことになります。 先が無限ですから、信号は反射しようがありません

 

高周波信号ではこうして反射波の発生を防いでいるので、インピーダンス整合がとても重要なのです。

 

もし 75Ωの終端抵抗が違う値だったらどうなるでしょうか?あるいはインピーダンスを全く考慮していないコネクタやケーブルを使った場合はどうでしょうか?インピーダンスが整合しませんから、当然「この先は無限」とは見なせなくなってしまいます。 反射が起こり、信号の質が劣化します。正しく終端しなければ、高価な同軸ケーブルもただのシールド線と同じです。

 

デジタル・オーディオ信号も高周波信号ですから、伝送路のインピーダンス整合が重要であることに変わりはありません。 AES/EBU では線路インピーダンス 110Ωと規定されています。 ですから接続には専用のデジタル・オーディオ・ケーブルを使わなくてはいけないのです。「でもケーブルは 110Ωでもコネクタがキャノンでは、整合は取れるのか?」という疑問が沸いてきますね。

 

確かにXLRタイプのコネクタのインピーダンスは 110Ωではありませんが、不整合の部分が短いので影響がほとんどないのです。 むしろ音楽スタジオで扱い慣れたコネクタを使うメリットを重視したということでしょう。

 

インピーダンス(Impedance)とは、『交流に対する抵抗値』のことです。普通の抵抗器では直流でも交流でも示す抵抗値はほとんど同じですが、コンデンサやコイルなどの部品は、周波数が変わると交流の通りにくさが変化します。コンデンサは直流抵抗は∞Ωですが、音声信号は通りますね。逆にコイルは、直流抵抗はほとんど0Ωですが、周波数の高い交流信号はほとんど通しません。抵抗とコンデンサ、コイルを組み合わせた回路では、回路全体の抵抗値は周波数によって複雑に変化します。

 

交流に対するコイルやコンデンサの抵抗分をリアクタンスといい、それぞれインダクタンスや静電容量から計算できることは、電気工事士や通信工事担任者資格を持っている方なら理解されているでしょう。

 

ここではインピーダンスについて、理論的なことではなく実務的な面を中心に話を進めます。

 

  ■600Ωとハイ・インピーダンス

 

我々が扱っている放送機器や音響/映像機器では、入力インピーダンスがどうとか、負荷インピーダンスがいくらかという問題が起こることがあります。

例えば下の図で、パワーアンプの入力インピーダンスが 600Ωと言われたら、とりあえずそのパワーアンプの入力コネクタが 600Ωの抵抗(R2)でグラウンドに落ちていると思えばいいのです。

その先(パワーアンプの内部)にどのような回路がつながっているかはわからなくてもとりあえず無視します。入力コネクタが不平衡(アンバランス)であれば、ホットとグラウンドの間に、平衡(バランス)であればホットとコールドの間に 600Ωの抵抗が付いているわけです。インピーダンスですから本来は周波数によって値が変わりますが、とりあえずこのように考えます。

 

逆にプリアンプの出力インピーダンス 600Ωというのは、例えばプリアンプの出力端子に 600Ωの抵抗(R1)が直列にくっついていると考えてください。これで、入出力インピーダンスの話は単に抵抗分圧の話になりました。

 

いま出力インピーダンス R1 = 600Ωのプリ・アンプ出力を、入力インピーダンス R2 = 600Ωのパワー・アンプの入力につないだとします。プリ・アンプ内部で生じた 2vの信号は、直列の 600Ω(R1)を通って、パワー・アンプの入力の 600Ω(R2)でグラウンドに落ちます。パワー・アンプ内部には、入力の 600Ω(R2)の両端に生じた電圧が送られます。つまりプリ・アンプ内部で生じた 2vは、2本の 600Ω(R1,R2)で 1/2に分圧され、1vだけがパワー・アンプ内部に送られるということになります。

 

これは映像(ビデオ)機器でも同じことがいえます。ビデオ機器は入出力インピーダンスが 75Ωと規定されています。またビデオ信号のレベルは 1vp-pです。いまビデオ・アンプを作って、出力インピーダンスを 75Ωにするために、75Ωの抵抗を出力に直列に入れました。相手の機器の入力インピーダンスはもちろん 75Ωです。相手に 1vp-pのビデオ信号を渡すためには、ビデオ・アンプの出力を、直列抵抗の前で 2vp-pにしなくてはなりません。理由はわかりますね。

 1vp-p : p-p は peak-to-peak のことで、最大値から最小値までの電圧値。

 

  ■電力伝送と電圧伝送

話を音響機器に戻しましょう。昔の放送機器は入出力ともインピーダンス 600Ωというのが基本でした。そこから +4dBmという規準レベルも作られたのですが、現在では出力インピーダンス (R1) が数Ω~数 10Ωと低く、入力インピーダンス (R2) が 10kΩ以上と高い、いわゆる「ロー出し/ハイ受け」の機器が主流になっています。

 

0dBmという値は、『 600Ωの負荷に 1mWを生じさせる電圧値』です。つまり電力伝送という考え方で、オーディオ帯域において(というかもともと電話の規格なのですが)もっとも電力損失(ロス)が少なくなるように線路インピーダンスから考慮して作られた基準です。今は電圧伝送で、もっとも電圧ロスが少なくなるようにと考えます。

 

例えば出力インピーダンス (R1) が 20Ωのプリ・アンプを、入力インピーダンス (R2)が 50kΩのパワー・アンプにつないだとします。プリ・アンプ内部で生じた 10vの信号は、20Ωと 50kΩで分圧されてパワー・アンプ内部に入っていきます。計算すれば 9.996v、つまりほぼ 10vですから、600Ωラインのように電圧レベルが半分になってしまうような無駄がありません。

 

もう一つ、「ロー出し/ハイ受け」にはメリットがあります。1台のプリ・アンプの出力を、2台のパワー・アンプに分岐して送りたいとします。2台のパワー・アンプの入力をパラレル(並列)に接続すると、プリ・アンプからみたパワー・アンプ側のインピーダンスは 50kΩ÷ 2で 25kΩになってしまいます。するとプリ・アンプ内部で生じた 10vは、20Ωと 25kΩで分圧されることになります。計算すると 9.992v、やはりほぼ 10vのままで変化がありません。

 

600Ω機器の場合、接続は 1:1 が鉄則なので負荷をパラレルに接続することができません。どうしても分岐したい場合は分配アンプを使います。

 

出力インピーダンスが低く入力インピーダンスが高いというのは、負荷(この場合パワー・アンプ)が多少増えても、レベルを再調整しなくても済むというメリットがあります。

 

 

 

  軽い負荷、重い負荷

さらに、ここが重要なのですが、回路設計者にとっては、ロー出し・ハイ受けはプリ・アンプの出力回路が小規模で済む、回路設計の自由度が上がるということもあります。

 

プリ・アンプ内部で生じた +10vは、約 50kΩ ( 50kΩ + 20Ω) の抵抗に流れることになります。流れる電流は 2mA(ミリ・アンペア)です。従ってプリ・アンプの出力回路では 2mW(ワット)の電力を考えればよいので、使用する抵抗も普通の 1/4w( = 250mW)タイプで十分ということになります。

 

ちなみに +4dBm規準のアンプで、最大出力が +20dBm程度とすると、そのときの電圧値は約 +12v。ここで引用した +10vという数値はそうありえない数値ではありません。

 

さてこれが 600Ω機器であったらどうでしょうか? パワー・アンプに +10v供給するために、プリ・アンプ内部では +20vを発生させています。プリ・アンプの出力回路から見た負荷は 600Ω+600Ωですから、流れる電流は 約16.7mAです。出力回路は 300mW以上の消費を考えなくてはなりませんから、放熱器や1/2wの抵抗器が必要になってきます。

 

このように入力インピーダンスが高いと、前段の機器の負担が小さくて済むので、現在のようなオペアンプ全盛の機器では一般的になっています。負荷インピーダンスが高いことを「負荷が軽い」といいます。逆に 600Ωのようにインピーダンスが低いと「負荷が重い」といいます。負荷インピーダンスが高いと、出力回路にあまり電流を流さなくて済むので「軽い」と表現します。逆に負荷インピーダンスが低いと、出力回路に多くの電流を流さなくてはなりません。電流が多く流れるほど多くの熱を発生しますから、素子の放熱も考えなくてはなりません。また出力段に電流ドライブ回路を追加したり、、あるいは電源回路から強化しなくてはなりません。「重い」と表現するのもわかると思います。

 

オペアンプは回路設計が楽で良いのですが、出力段が貧弱であまり大きな電流をとれないのが普通です。一般的な 4558タイプのオペアンプでは、負荷は 2kΩ以上になっています。つまり 4558の出力を 600Ω機器に直接つなぐわけにはいかないということです。600Ω負荷をドライブするには、それ用に出力回路を強化したタイプ( 5532/ 5534など)を使う必要があります。

 

音質的に気に入ったオペアンプでも、600Ω負荷の回路には使えない、という場合、それでもということならオペアンプの先にトランジスタで電流ブースター回路を足すという手もありますが、今度はトランジスタの音質が・・・となりかねません。部品選択の悩みどころです。

 

  ハイ・インピーダンスのデメリット

ロー出し/ハイ受け」は良いところだらけのようにも見えますが、実はそうでもありません。

 

600Ω受け渡しというのも、インピーダンス・マッチングという点では理想的であり、長距離伝送をしても信号の劣化が少ない、外来ノイズを拾いにくいなどのメリットもあります。またある程度電流が流れるので信号のやり取りが電力に近い形になり、いっそう劣化やノイズに強くなります。また接続が必ず 1:1なので、接続がわかりやすい、受け渡しレベルの計算が楽、といったこともあります。

 

逆にインピーダンスが高いとノイズを引きやすくなります。600Ωの抵抗を指でつまんでもほとんど影響がありませんが、1MΩの抵抗を指でつまむと盛大にハムを引きます。これはオームの法則そのままに、抵抗値が大きいほど小さなノイズ電流でも大きな電圧を生じるためです。 600Ωの抵抗に 1μAのノイズ電流が流れたとしても、生じるノイズ電圧は 600μvですが、1MΩの抵抗では 1vという、無視するにはあまりに大きい値になります。

 

プリアンプとパワーアンプが接続された状態では、線路インピーダンスそのものが下がるので、そこにノイズが飛び込むというのは少ないのですが、それでも 「ケーブルがアンテナになっている」 というトラブルが起こることがあります。600Ωラインではあまり聞いたことがありません。またインピーダンスが高い回路ほどグラウンドまわりの処理が難しくなり、それを誤るとノイズを拾いやすくなります。オーディオ機器の場合、入力インピーダンスは 10kΩ~ 50kΩというのが相場ですがそれなりの理由があるわけです。

 

実生活の環境では空中にはテレビやラジオの電波が飛び交い、室内では電灯線のハムや照明器具の調光ノイズなどがあふれている状態です。それらがどうやって機器に飛び込んでくるかわかりません。ノイズ対策としては、インピーダンスはなるべく低いほうが有利なのです。

 

  ヘッド・アンプのインピーダンス

マイクロフォンの信号を増幅するヘッド・アンプ( HA)の入力インピーダンスは、マイクロフォンの出力インピーダンスの 10倍以上で受けるように設計します。「インピーダンス・マッチング」を金科玉条にする人たちも、こればかりはマッチングをとってはいけません。

 

ちなみに出力インピーダンス 600Ωのマイクロフォンを、入力インピーダンス 600Ωの HAで受けるとどういうことが起こるでしょう?

 

インピーダンスは周波数によって変化します。スピーカーやダイナミック型マイクロフォンの中身はコイルですから、やはり周波数によってインピーダンスが変化します。通常は 1kHzに対するインピーダンスを公称インピーダンスとして表示しています。

 

つまり 1kHzに対しては 600Ωでインピーダンス・マッチングがとれているので問題無いのですが、周波数が下がってくるとマイクロフォンの出力インピーダンスが上がってくるので、ミスマッチとなり、レベルが下がってしまいます。つまり低域不足(ロー切れ)になるのです。従って低域でマイクロフォンのインピーダンスが上がっても、それ以上のインピーダンスで受けられるように、HAの入力インピーダンスを予め高めにしておくのです。

 

これは「どこ(の回線)を切っても 600Ω」という昔の放送機器(BTS規格)でも、マイクロフォン増幅器だけは入力インピーダンスが 5kΩだったことでもわかります。

実際には、マイクロフォン以外でもインピーダンス値は 1kHzに対する値を使います。いままで述べてきたインピーダンスはすべて 1kHzに対する値です。ただ一般の電子機器ではマイクロフォンほど周波数の影響を受けないので(可聴周波数範囲程度ではほとんど変化しない)、あまり問題にならず、実用上は無視してもかまいません。