ママの宝石箱を見ているのが好きだった。
ダイヤにルビー、
色んなブローチ、
オパールに黒真珠、
たくさんのネックレス。
小さな指には大きすぎてぐるぐる回ってしまう指輪たち。
独りぼっちでお留守番してるときもママの宝石箱をみてた。
深夜までおじいちゃんちに預けられていたときも、
二世帯住宅で隣にあったおばさんちの
おばさんの部屋にあった宝石箱もずっと見てた。
目のなかはきらきらして、
この宝石たちには絶対魔法が詰め込まれていると信じてやまなかった。
宝石の名前を覚えるたびに、
この宝石はこういう魔法が使えるようになるもの、とひとり妄想にふける毎日だった。
いつか自分が宝石箱を持ったとき、
お気に入りの宝石やアクセサリーを綺麗に並べるのを夢みた。
きらきらしたものを見つめていると頭がぼーっとなって目が霞んできて、
何故だかひとつひとつを見れなくなる。
その現象はいまもたまに起きる。
アクセサリー屋さんやパーツ屋さん
そしてたまにあけては眺めるママの宝石箱。
きっと私にとって何の意味もない宝石たちだからだろう。
ぼやけて見える美しさに意味なんて、なかったんだろうな。
やっと持てた私の宝石箱には、
気付いたらそれはたくさんの魔法が詰まっていた。
いくら見つめてもぼやけない。
記憶とか過去とか、
憧れという名前の魔法が詰まった宝石たち。
誕生石であるルビーは、
自慢じゃないけどいくつもある。
けどまだそれらを身に着けるほど、
あの血のような紅が似合う女には成れていない。
だから憧れとか。
昔の彼にもらった時計は全部とってある。
かつて私は時計を彼氏から貰うのが好きだった。
彼から時間を貰った気がするから。
それは存在しててもいいと言われている錯覚を得られるから。
だからその彼と別れても、かつての自分の時間を捨てられないように時計も捨てられない。
過去という名前の時計が、私の宝石箱にまたひとつ増えてしまった。
でも私はこの時計を着け続けている。
まだ過去にしたくないからだ。
けどこの間、ママが薔薇の時計を買ってくれたから
少し、楽にはなった。
一番絶対自分を見捨てないひとから、
ちゃんと時間を与えられたから。
宝石箱に眠る時計はきっと
とうに死んでしまっていると思う。
私の宝石箱は墓の役割も果たしている。
だけどそこにしまうのは、私自身の意志なんだ。
ただ 見つめていただけの昔とは違う。
私は魔法の詰まったアクセサリーも、
過去にしがみつく時計たちも、
自分の意志でだしいれ自由なんだってことに気づいた。
必要があるから出して使うんだもの。
そして、私は彼らに新しく息吹きを与えることが出来る。
新しい道を与えることが出来る。
過去を使う必要って、
やっぱり、ある。
あたしは、いままでの記憶も涙も
喜びも全部、
ぜんぶつかって
あますことなく、
未来に再利用するの。
ほら
過去の流行って繰り返すっていうように
いろんな記憶がつまったアクセサリーたちも
一度死んでしまった時計たちも
役目がきたら、しっかり役立ってもらうから
それまで
大事に大事に
宝石箱にしまっておこう。
薔薇の時計は
日々を大切に生きるために
なるべく毎日、
着けたいな。