ハイリフト化とオーバーラップ増加
使用目的によってカム形状も変わります。目で見て分かるように本に掲載してある図も使いながら、カムのチューニングについて書きたいと思います。
ハイリフト化とオーバーラップ増、両方ともバルブの作動を増やすチューニングですが、ハイリフトは”その7”で書いたカムを高くしてリフト量を増やす、もう一つがオーバーラップ量を増やしてバルブの開いている時間を長くするものです。
前者のハイリフト型のタイプで、レーシングカーやヨシムラを含むレース専用のカムの形状。目で見て分かるハイリフトです。
後者のオーバーラップが大きいカム形状。カム山がなだらかでバルブの開いている時間が長くなります。パワーの出方もピーキーではないので、乗り易くなります。
この本に掲載されていたUSヨシムラのレーシングカム。昔あったレースカテゴリー スーパーバイク用。カム山を見て下さい、上図のものより、もっと尖っています。ヨシムラのカムシャフトを「日本の誇り」と書いてありました、その通り。
カムのリフトとオーバーラップのグラフ。グラフ上ではこうなりますが、実際にリフトの量、オーバーラップ、カム山の形状をエンジンの特性と上手くマッチングするように詰めていかないと、いい性能にはなりません。もちろん、同じエンジンでもサーキットを走るのか、ストリートユースなのか、ダートを走るのかで仕様は変えないといけません
理論と材質と形状を上手く融合させないと性能が出ない、マジ軽ナットと似ているような…。
目には見えませんが、この真似出来ないカム職人の技術と積み重ねた経験がヨシムラの強さなのだと思います。
同じ機種用のカムの比較。白黒写真なので見づらいのですが、右側ほどよりレース専用に近づきます。
高速トルク型の形状。リフト量を高くしつつオーバーラップを少なくする形状。
中高速型トルク型の形状。オフロード・ダートトラックに向いている。
前回も使ったカムのグラフをもう一度掲載します。
このグラフと見比べながらヨシムラのZ1用のステージI~IIIを比べてみましょう。
ヨシムラZ1 ステージI リフト量がINで1.39㎜、EXで2.03㎜が増えているので、ピストンリセス加工をするか交換し、バルブスプリングをレース用にする必要がある。
ヨシムラZ1 ステージII リフト量がINで2.15㎜、EXで2.79㎜となっており、ステージIより高回転型で長いバルブスプリングが必要。
ヨシムラZ1 ステージIII リフト量がINで2.53㎜、EXで3.17㎜となっている。バルブガイドを短く、バルブスプリングのベースを削り、長さを確保する必要がある。
バルブ開度もほぼ限界となり低回転は使えない。ドラッグレースに使われるようなオーバーラップとなっている。それはU氏が乗りづらいとステージIIに戻す訳です。
U氏は「マフラーは抜けがいい方が良い」と横浜の三留兄弟製作所(現在は廃業)でエキパイが出来る限り太くなるように、サイレンサーなしの特注で作っていました。これは昭和の考え方で、パワーが急激に出ると乗りづらい、現代では適度に排圧をかけてトルクを出す方がはるかに乗り易くなります。
桜上水のあたりでU氏と競った方はいませんでしょうか。
この本にヨシムラの記事が載っていました。不二雄氏若いですね。お久しぶりでございます。そして長い間お疲れ様でした。
3月15日付けで不二雄氏が社長を退任して相談役に、筆頭株主の陽平氏が社長になりました。今のところは毎日ではありませんが出社するそうですが、「それじゃぁ、カムの設計は誰がやるんだ」と心配していました。
このページはU.S.ヨシムラで撮影したもの。カワサキZ1のデイトナサーキットでの世界記録樹立のフィルムがあり、KMJ(カワサキ モータース ジャパン)にも資料がなかったのですが、海外のクラブからビデオ化した物を入手してKMJにプレゼントしました。そのデイトナではヨシムラチューンのZ1レーサーも走らせており、不二雄氏も写っています。当YouTubeチャンネルでその一部が見られます。
いかがでしたでしょうか、ヨシムラはカム屋がベースであるのがお分かり頂けたと思います。
1993年頃?に深夜の時間帯のテレビ番組でヨシムラの取材をしたテレビ番組があり、それを録画したのですが、VHSテープにカビが発生し泣く泣く捨てました。バルブをボール盤で研磨したり、POPの愛弟子のレース用チタンマフラーの製造(外部の工場)、マフラーシリンダーブロックの不要な部分を削り落とす映像もあったと思います。YouTubeでその映像を探しましたがありませんでした。
とても興味深い映像なので、どなたかお持ちの方は著作権に配慮しながら動画サイトにアップして頂けたらと思います。そして是非、連絡を頂ければと思います。
SNSでは目立ちやすいマフラーを交換して自慢する方もいて、それはそれでいいのですが、目に見えない所こそが重要で通にはたまらないのだと思います。
また機会がありましたら、ヨシムラの記事を書こうと思っています。
私はこのような職人の領域に手を出す勇気はなく、カムに関してはWPC/Mo2ショットだけに留め、ローフリクションで”無駄なエネルギーロスを減らす”だけにしています。
無駄になっているエネルギーを減らせば、エネルギー保存の法則に則り、使えるエネルギーは増えます。
それが体感出来るのがマジ軽ナットです。ある元素を使わないと放電しませんから、真似なさらないように。例え効果がなくても犯罪です。
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一般の方で除電に興味を持って記事を上げている人もいますが、残念ながら根本が分かってらっしゃらない。特許権を模倣する人までいます。特許は国によって守られているのに、です。「それ、思い込みのプラシーボ効果ですよ」とは教えませんが…。
「日本は発明は苦手、人の発明を改善するのは得意だけれど」と思い込んでいませんでしょうか
私はそうとは限らないと考えています。例えばアルマイト加工。海の多い日本でアルミ合金の腐食が進むのを食い止めようと、「それなら先に人工的に腐食させてしまえばいい」と化学的に腐食させた、当時は電蝕と呼んでいました。ノーベル物理学賞を取った青色発光ダイオード、カッターナイフの日本の発明です。そしてエキゾーストパイプが等長の集合マフラーも。ウチのお客さんの中にはPOPの手曲げを見せてもらった人もいます。何で特許を取らなかったのか、後で聞いてみます。
明日3月17日(日)午前5時より開催されるエクスチェンジマートに出店します。
特注のマジ軽シリーズご注文の方はご用意出来ておりますので、ご来店をお持ちしております。
出典:カスタムバイク・ハンドブック