電気を使わず低コストで除電

トヨタ自動車の静電気の除電でサスペンションの性能を向上させる特許を、中学生でも理解出来るように分かりやすく解説しています。特許文献が余りにも長いので飛び飛びになっていますが、ご了承願います。

何度も書いているように、フリースを脱ぐときに静電気が起きると、より力が必要になる。理屈は同じで、静電気は物を動かす抵抗となります。その原因の静電気を除電する事でサスペンションの動きがスムースになるのです。

読解しにくい除電の特許文献を当ブログの”特許解説シリーズ”はテーマ別(ブログ内で選択出来ます)でまとめて見られます。

前回解説した中の【0051】にも、「タイヤ40が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すことにより、車輪28には正の電荷が発生して帯電する」と書かれています。タイヤの原料にはカーボンブラックが混ぜられており、路面に接触しているので、少しは路面に放電しています。電気は水と同じで流れ易いところに向かいますから、車体から静電気が逃げ道を探してタイヤに集まる(帯電)。それだけではなく、アップの文献のように、タイヤが路面に接触し、離れる事でも静電気が発生して帯電してしまっている。

未だに「タイヤが帯電するなんてあり得ない」という人がいますが、それは知らないだけです。それを知って頂くためにやさしく書いてます。

特許文献のコピペを青太文字にして、その下に解説を書きます。

【0053】
  図7は、除電器90Aによる除電のメカニズムを示す模式的な説明図であり、除電器90Aによる除電は、図7に示されたメカニズムにより行われると推定される。なお、図7において、「+」及び「-」はそれぞれ正及び負の電荷又はイオンを示し、「0」は電荷が0であること、即ち電気的に中和された状態にあることを示している。また、実線の矢印は空気の流動を示し、破線の矢印は電荷又はイオンの移動を示している。

除電する対象物に貼った自己放電式除電器(90A)の模式図が図7です。は正の電荷(又はイオン)、⊖は負の電荷(又はイオン)を示し、⓪は電荷が⊕でも⊖でもない、つまり中和されている事を示しています。中和は理科の実験でやったようにお互いが打ち消し合ってゼロになっている状態と同じで、帯電していない完全に除電された状態です。

除電する対象物(60)に貼った自己放電式除電器に空気(風)が当たる事により、斥力(斥力:反発し合う力)が発生。対象物がプラスに帯電しているので、磁石と同じ理屈で⊕の電荷は弾かれ、⊖の電荷は引き寄せられて⊕の電荷と中和して除電されるという模式図です。

ホンダの吸気効率を向上させる世界特許の解説で書きましたが、ホンダの場合は吸気の途中にセンサーを付けて⊕イオンを測定し、それに見合った⊖イオンを流して中和するという、何とも複雑な装置ダウンで特許を取得しています。

 

 

素晴らしい技術ですが、装置が複雑化すると故障しやすくなるのと、コストが高くなる、重量増になるというデメリットがあります。

そもそも帯電量をゼロにキープする事は現在の技術では不可能です。気温、湿度、スピード等などいくつもの要因で静電気の発生量・帯電量は目まぐるしく変化しています。その点、このトヨタの特許やマジ軽ナットの特許は、ある程度までの静電気を除電するに留め、低コストで”除電し過ぎ”を回避して走行高性能を向上させる特許です。

 

【0054】
  空気は正の電荷を帯びているが、樹脂製のダストブーツ60における正の電荷の帯電量が非常に多くなると、空気が所謂コロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される。正の空気イオンは、ダストブーツ60に帯電する正の電荷との間に作用する斥力により、ダストブーツ60から遠ざかるよう移動する。これに対し、負の空気イオンは、ダストブーツ60に帯電する正の電荷との間に作用するクーロン力によって引き寄せられることにより、ダストブーツ60に近づくよう移動し、ダストブーツ60に帯電する正の電荷は負の空気イオンに近づくよう移動する。

空気自体が正の電荷(⊕)を帯びていて、プラスチック製のダストブーツダウン(60)に正の電荷が過剰になると、空気がコロナ放電によって正の空気イオンと負の空気イオンに分離する。

正の空気イオンはダストブーツに帯電する正の電荷に作用する斥力により、ダストブーツから遠ざかる。負の空気イオンはダストブーツに帯電する正の電荷との間に作用するクーロン力(=静電気力 下敷きを擦ると髪の毛が引き寄せられるのと同じ)により引き寄せられ、磁石の⊕極と⊖極が引き寄せられるのと同様に、ダストブーツに近づき正の電荷は負の空気イオンに近づく。

 

 


【0055】
  その結果、負の空気イオンと正の電荷との間において電気的中和が生じ、負の空気イオン及び正の電荷が消滅し、空気の電荷が0になる。以上の現象は繰り返し連続的に生じるので、ダストブーツ60に帯電する正の電荷が低減されることによりダストブーツ60が除電される。なお、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象などは、ダストブーツ60の帯電量が高いほど活発になり、よって、除電の作用は帯電量が高いほど活発になると推定される。また、除電器90Aによる除電は、図7に示されているように、一方向に空気が流動する状況に限られない。

その結果、負の空気イオンと正の電荷との間で電気的中和が生じ、負の空気イオン及び正の電荷が消滅(打ち消し合う)し、空気の電荷が0になる。この現象が繰り返し行われダストブーツに帯電している正の電荷が低減されて除電される。

なお、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンに分離される事象はダストブーツの帯電量が高いほど活発になり、除電の作用もそれに伴い活発になると推定される。

また、除電器(90A)は図7に示されているように一方向に空気が流動する状況に限られない。

【0055】は解説しなくても理解出来ると思いましたが、最後の一文が”防御的特許”の例なので掲載しました。空気の流動が一方向だけの特許となると、「では、二方向より多ければ特許侵害に当たらない」となるのを防ぐ為に、「一方向に空気が流動する状況に限られない」という一文を入れたのです。特許文献が回りくどく難解になるのはこのような理由です。

 

【0059】
  なお、外側シリンダ12Yのように塗装された金属部材の場合には、塗膜にも電荷が帯電するが、除電器に近い塗膜に帯電する電荷は除電器へ移動することによって低減される。また、金属部材に帯電する電荷は、塗膜を通過して除電器へ移動することによって低減される。更に、除電器から離れた部位の塗膜に帯電する電荷は、一旦金属部材へ移動して金属部材内を移動し、金属部材から塗膜を通過して除電器へ移動する

新型クラウンに使われているシューズメーカーのアキレスと共同開発した除電シート(運転席)は除電ゴムですが、トヨタの自己放電式除電器は金属板を貼ってそこから放電して除電するものがメインです。とはいえ、タイヤ・ホイール用は知る限り市販はされていません。

見栄えや汚れでの効率低下が製品化されていない理由だと思います。

2月にFiscoで開催された市販車での省燃費レースでも、TRDのメカニックがタイヤに除電ワックスを塗っていたそうです。聞いてみたら、「これで、燃費が良くなるみたいなんですよ」と言っていたとか。トヨタの完全子会社なのだから監督クラスなら除電チューニングには詳しいのでしょうけれど、新人だったのでしょうか。

ワックスは走っていれば乾いてしまうのと、都度塗らないといけないので費用がかさむのがデメリットです。

マジ軽ナットシリーズは金属は使っていますが、貼る必要はありません。車やオートバイの部品のほとんどはボルトやナットで固定してありますから、それを付け換えるだけです。買い換える際には取り外して元に戻せば再利用が可能です。サイズさえ合えば新たに買い換える必要はありません。

特に車・オートバイのタイヤ用は世界共通規格ですから、必ず使えます。付け換えの際にはエアーバルブのネジ部をきれいに掃除して導電性を確保すれば、半永久的に使えます。だからとってもリーズナブル。

ネットショップで簡単に購入出来ます。

3月17日(日)午前5時から厚木市で開催予定のエクスチェンジマートに出店の申し込みをしました。

天候による開催の有無は、開催予定日前日の13時にホームページダウンで発表になります。