ベアリングの隙間を考えないと大変な事に

自転車のボールベアリング(ラジアル球軸受)なら、熱を考慮する必要はまずありません。ところが、エンジンが熱を持つオートバイや自動車では熱を考慮したベアリングを組み込む必要があります。

実際にあった事例です。ドイツの姉妹クラブの会員が、エンジンをオーバーホールしてベアリングを交換しました。それで、エンジンを始動してしばらくしたら、ベアリングのレース(外周)が回転してしまい、クランクケースがダメになってしまった。同じ車種の別のエンジンをまたオーバーホールしたら、また同じになった。それで、私に原因の見当が付くかはてなマークと問い合わせが来たのです。

その頃は、まだネットはなく、簡単に情報が手に入りにくい時代でしたが、その少し前にちょうど会報でベアリングについて記事を書くに当たって、本を読んで調べたので知識がありました。

ただ、工業の専門用語も必要で、英訳(彼は英語が出来る)するにしても面倒なので、簡単な思い当たる説明をして、あとはNTNのドイツ代理店に聞くよう、アドバイスしました。

簡単に言うと、ベアリングの品番が同じでも、レースとベアリング球のクリアランス(隙間)に種類があるのです。鍛造ピストンの記事でも書きましたが、金属は熱膨張します。特にエンジン、ミッション周りは高熱になるので、大きく膨張します。すると、クリアランスが狭くなるので、最初は冷えているからいいけれど、膨張するとギッチギチになって球が回れなくなる、でもエンジンがかかっているので、レース(外周)が回ってしまう。当然、クランクケースは酷い回転傷がついて、使用不能になります。チーンお願い

バイクや車で、このような熱のかかる場所では、同じベアリング品番でも”C3隙間”の物を使います。クリアランスが大きく、熱膨張してちょうど良い隙間になるようになっています。

車はミッションが別体ですが、ここもC3隙間を使っている筈です。車の場合は純正部品を取るで、気にする必要はありません。バイクも純正のベアリングなら問題ありませんが、私は安く上げるために日本製のメーカーのベアリングを使います。バイクのミッションはクランクケース内にあるので、必ずC3隙間を取り寄せて交換します。

少し安いからと言って、外国製は絶対に使いません。ベアリングなんか安い物です。少し高くても、世界最高品質を使って下さい。オイルシールも同様です。

ちなみに、レースに位置決めの溝付きの物があり、メーカー納品だけの溝付きベアリングがあります。純正部品が入手不可の場合は、特注で溝を切ってもらう事もあります。

一度エンジンを分解してみると、純正のベアリングなのにレースが回った跡が付いている事がよくあります。これは、クランクケースが熱で歪み、レースとの接地面積が減ってしまっているのが殆どです。対策としては、ケースの片側にネジロックをごく薄く塗る。

クランクケースの合わせ面のナットを締める際には、私はサービスマニュアルの最低値のトルクで締めます。「ベアリングのレースが回らないように、最高値のが良いのでははてなマークと思うでしょうか。とても僅かですが、最高値より最低値の方が緩めですよね。その分ベアリングの回りが良くなるのです。レースが回転しないようにネジロックを使用します。

これは、私がコンタクトを取って部品を輸入した、有名なレース屋さんの注意書きにも書かれていました。

クランクシャフトがメタルで保持されている場合も、緩めに締め途方が良く回るという定説があります。もちろん、限度があります。

熱膨張を考えてそれなりの対策をする。そうすれば、”良く回る”エンジンになります。

また、ハブベアリング等にはグリスが使われています。このグリスやオイルが静電気の帯電により粘度が高く(硬く)なるのはご存じだったでしょうかはてなマークこれは私が勝手に言っているのではなく、トヨタ自動車の特許文献に書いてあります。

もちろん、私は除電で動きが改善されるのは知っていました。初めて走行テストをしたのは2012年頃。

トヨタが除電の特許申請をする前です。ですから、除電でサスペンションの動きが改善したり、ハンドリングが軽快になったりするので、面白くて次々に除電する箇所が増えていったのです。

さて、車やオートバイでグリスやオイルを使用している箇所はどの位あるでしょうはてなマーク

物が少ない力で動くと消耗が少なくなるので、長持ちします。つまり、除電をすると維持費が安く抑えられます。走りを楽しみ、性能が向上する、その上お財布にも優しいのです。

ベアリングは新品に交換するだけではなく、除電で更に性能が上がる、参考になったでしょうかはてなマーク