からだの中に  


          谷川俊太郎


からだの中に 
深いさけびがあり
口はそれ故につぐまれる


からだの中に
明けることのない夜があり
眼はそれ故にみはられる


からだの中に
ころがってゆく石があり
足はそれ故に立ちどまる


からだの中に
閉じられた回路があり
心はそれ故にひらかれる


からだの中に
いかなる比喩も語れぬものがあり
言葉はそれ故に記される


からだの中に
ああ からだの中に
私をあなたにむすぶ血と肉があり


人はそれ故に こんなにも

ひとり ひとりだ