【第29話】防犯カメラ | 百物語をしようよ。~怖い話・不思議な話・心霊話・都市伝説などのブログ形式オカルト陳列~
ある家族が家を買った。
相場より安い中古の家だったが、改装を綺麗に済ませ、新築同様の家で家族の誰もが気に入った。

だが、異変に気付いたのはその家族の長女、中学生のユリだった。
ユリが朝目覚めると、家中のドアが開いている。
玄関のドアや窓には異変はないのだが、リビングへ出るドア、トイレのドア、そして自分の部屋のドアが開いているのだ。

「ドロボウ…?」

調べてみても何も荒らされた形跡もなく、家族で首を傾げた。

そしてまたある日の休日、ユリが掃除機をかけているときにふとあることに気付いた。

うっすらと足跡があるのだ。
素足で土の上を歩き、そのまま家にあがってきたような足跡だ。
家族にはそんなことをするような子供もいない。
ユリは早速その夜家族会議をし、泥棒か変質者が忍び込んでいるのかもしれない、という結論に至った。

警察にはもちろん相談したが、モノが取られたわけでもなく、変質者を見かけた訳でもないということでとりあってもくれなかった。

ユリがインターネットで対策を調べていると、防犯カメラという策を思いついた。
性能が良いものでも数万円程度でしかけることが出来る。
おまけに侵入者の動きにセンサーで反応し、360度姿を追って録画することが出来る。

早速父親に頼み、防犯カメラを購入し玄関前の天井にしかけてみた。
ためしにユリが動いてみると、センサーが反応してウィーン、と首をまわす。

これで安心と思ったのもつかの間、翌朝ユリが玄関に行ってみると、そこかしこに足跡がついているのだ。
たしかに昨日見たときは何も無かったのに…。
夜の間に誰か入って来たのか、と防犯カメラで録画してあった画像を見てもなにもなく、ただ暗い廊下が映っているだけなのだ。

足跡を拭き、ユリはその日は学校に出かけた。
だが、学校から帰るとまた足跡がついているのだ。
防犯カメラには何の変化もない。

もしかして、化学反応だろうか?
家の改装を施した業者か誰かの足跡がしみ込み、時間が経てば浮き上がって来るのだろうか。
ユリはそう思うことにして、足跡は気にしないようにした。

その夜、のどの渇きで目が覚めたユリは水を飲もうとキッチンへ向かった。
部屋へ戻ろうとしたとき、妙な音が聞こえた。

静かな家を、ウィーン、ウィーンという機械音が聞こえる。
玄関のほうだ。

ユリが息を殺し、玄関へ向かうとそこには誰もいない。

だが、防犯カメラだけが狂ったように首を振り、誰かの姿を必死に追いかけていた。