もうずいぶん前の話になるが、若い頃に中国旅行をした際、上海人のガイドが北京ツアーを引率しながら「北京には暇人が多いが、上海人はそうではない。昼間にあてどもなく路上を散策していたり公園にたむろしているような人はいない」と言っていた。その頃は観光客の一人として、ああそんなものか程度にしか感じていなかったが、実際に北京に来て生活してみると確かにそういう面はある。そして上述の「北京(やその他の都市)には暇人が多いが、上海人はそうではない」というフレーズは、上海での携帯電話事情と上海人事情を正確に把握する上で確かに大きな助けとなるようにも思う。


もっとも、上海人に限らず中国人はせっかちだとよく評される。それは中国人からすれば他の人々というのはあまりにぐずぐずしていて、そんなにぐずぐずしていたら機会をことごとく逸してしまうという焦りゆえにそんな評価をされてしまうのだと思う。中国(広く言えば中華圏)で中国人同士が生涯を通じての機会の争奪戦を繰り広げる結果、「せっかちな」中国人は皆、機を見また機をとらえる点で本当に鍛えられている。まして上海人は、ということなのだろう。

もちろん首都・北京での時間の流れ方も決して遅くはないのだが、上海のそれとはやはり比べ物にならない。上海商人という熟語は日本で言うところの大阪商人と相通じる部分がある。上海はだてに中国有数の商業都市の座を擁しているわけではなく、それはひとえに「この上海商人が!」と時に揶揄されもする上海の人々の目配り気配りのたまものと言わねばならない。分かりやすいたとえ方をすれば、彼らのほとんどが物を売り買いするために文字通り一日中奔走しているのだ。

年齢が比較的上の人には言わずもながであろうが、携帯電話市場と携帯電話による商取引が始まってからまだ30年もたっていない。携帯というこの文明の利器により、現代人の忙しさに世界中で拍車がかかっているわけだが、上海人からすれば他の人々はそれでもまだぐずぐずしている。つまり携帯を有効活用していない人間は、上海人非上海人を問わずどんどんと取り残されていく。これこそが上海での携帯電話事情と上海人事情で、旅行者であれ出張留学での滞在であれ、携帯を有効活用できるか否かが非常に重要なキーポイントであることを決して忘れてはならない。