中国人同士で南方人が狡猾であるという話が出る時、それは多くの場合、上海人を指している。では上海人は本当に狡猾なのかというと、彼らに言わせれば中国の他地域の人間があまりに他人を信用し過ぎ、周りにいささかも注意を払っていないという話になろう。簡単に言えば、他地域の中国人のようなスタンスでは上海で生きてはいけない。つまり上海では生活のテンポが速いため事前の情報収集が非常に大切で、それは日本人が上海へ旅行に行ったりする場合にも当てはまる。

たとえばガイドブックに載っているグルメなお店に自力で行ってみたら閉まっていた、あるいは移転していたという例について言えば、そもそもガイドブックをうのみにして誰にも何も聞かずに行動する方がダメダメだということになろう。そんなことは他地域の中国人でも決してしないが、上海人にいたっては、まず周到に確かめ、その上で逐次確認をする。

というのも、これは上海に限らないし中国にも限らないのだが、それなり普遍的な決まりごとに皆が従い皆がそれを信頼するという日本の社会構造そのものが世界的に見れは非常に異質で、日本では決まり事のために決まり事を作り皆が決まり事の通りに行動することが期待され決まり事の通りに行動するのは良識ある人であるという価値観がごくごく普通であるのに対し、世界の他のほとんどの地域では決まり事というのは人のためにあるのだから人次第でいくらでも決まり事を変えられるという考え方の方がより一般的だったりする。

結果、中国でも指折りの商業都市である上海では、中国の他地域以上、ことによると首都北京や香港に隣接する深センより物事のテンポが速く、当事者都合でどんどんと物事が変移する。これに合わせられない者は上海では生きてゆけず、旅行者であっても他の都市のようなノリで自力で行動すると思わぬ泣きを見ることになろう。上海に旅行においでになったなら、まずは情報の収集を念入りに行ってから行動することだ。そう、上海に来たる者とって、これは少しも狡猾なことではない。