わらこ精霊 夏だより2《合宿編》空羽うらら(小清水町)「風と遊ぶ午後」
2025年8月9日(土)

── 風にまかせて、ひとやすみ ──



🎀オープニング曲:制服スパイラル
(笑顔の裏にも、小さな息継ぎがある)


合宿9日目の朝。
**空羽うらら(小清水町)**は食堂の入口で立ち止まり、深呼吸をひとつ。
今日はいつもより賑やかな笑い声が、胸に少し重く響いた。
(ちゃんと元気でいなきゃ…でも、ちょっとだけ息が上がる)
トレーを受け取る手をぎゅっと握り直し、いつもの明るさで「おはよー!」と入っていく。
返ってくる「おはよ!」の輪の中で、うららは自分の笑顔が形になっていくのを確かめた。




午前はダンスフォーメーション練習。
8カウント×4で波形のラインチェンジ、ターン後に対角へクロス、
最後は中央へ集まって一斉に開く“ひまわり隊形”。
鏡の前で列の間隔を指の幅で測り、足元のテープをつま先でなぞる。

(うららちゃんの前に居る 凛崎ここなちゃんで…)

「笑顔は“置く”んじゃなくて、息を通すんだよ」
講師の言葉に、うららは胸の奥へ空気を送り込む。
肩の力が抜けると、目の焦点がふっとほどけ、
周りの呼吸とカウントが身体の内側に溶けてきた。



それでも終盤、笑顔が少し薄紙みたいに感じた瞬間、
隣の子が小声で「外、風が気持ちいいよ」と囁く。
うららは小さく頷いた。

🫧午後はひまわり畑でシャボン玉撮影会。

背丈を越えるひまわりが、太陽に合わせて一斉に首を伸ばす。
土の匂い、葉がこすれる音、遠くで鳴くセミ。
スタッフが配るシャボン玉ワンドを受け取り、
うららは一度だけ髪ゴムを外し、風に前髪をあずける。
「3、2、1でふー、いくよ」
カメラマンの合図。



うららは頬をふくらませて、真横から来る風のタイミングに合わせて軽く吹く。
虹色に縁どられた泡が、ひまわりの黄色を映してふわりと浮かぶ。
目の高さで一つ弾け、頬に冷たい雫が触れた。
(あ、気持ちいい)
思わず漏れた微笑みは、練習用の“置いた笑顔”じゃない。
レンズの奥で「今の、最高!」という声が上がる。





「一緒にふいてもいい?」
後ろから遠慮がちに差し出されたワンド。
「もちろん!」
二人で同じ泡を膨らませる“二重シャボン”を試すと、
大きな泡の中で小さな泡がはじけ、光がパチパチと跳ねた。
「わあ…」
歓声が風にほどけ、ひまわりの間を抜けて遠くへ運ばれていく。

写真チェックの時間。
モニターに映った自分の笑顔は、少し汗ばんで、でも澄んでいた。 



「うらら、今日の顔、自然でいい」
「ほんと? やった」
胸の奥に、小さな風船が一つふくらむ。
(元気じゃない時があっても、風に任せて息をしていい)
うららは、ワンドの先の小さな輪を覗き込み、もう一度だけ “ふー”。

夕暮れ。
長く伸びたひまわりの影が、帰り道の土を斜めに染める。
「今日はここまで。いい午後だったね」
スタッフの声に、みんなが頷く。
風がそっと背中を押すみたいに吹き、
うららは軽く跳ねるように歩幅を広げた。
置き去りにしていた息が、ようやく身体の隅まで届いた気がした。



🎵エンディング曲:
「君とまた、光の湖で」
(寄り道も、笑顔の一部になる)


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📸 次回予告:
《第10日目・8月10日(日)》凛崎ここな(根室)
「再会と潮風の記憶」🌊🐚🪼