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少女のやわらかい髪をなでながら未来のマヤはこう言うのだった。
「ねえ、マヤちゃん、いいこと教えてあげようか。
大人になると、粘土がかたくなるように、心も、体も、頭も感性も、みんなかたくなってしまうの。子供のうちは、やわらかい粘土みたいに、どんな形にも自由になれるんだよ。だからマヤちゃんも、やわらかい、ふわふわの粘土のうちに、いろいろなことをやってみようよ」
「へえー、人間って、粘土みたいなんだね」
少女は顔をあげて、好奇心に満ちた瞳でこう尋ねるのだった。
「・・・ねえ、未来はどんな世界になっているの?」
「そうね・・・マヤちゃんみたいに、宇宙のお話を覚えている子供たちが、もっともっと、たくさんいるのよ」
「そうなんだぁ。未来も捨てたものじゃないのね。
じゃあ、もう少しここにいてみてもいいかな・・・未来のお姉ちゃんのためにもね」
少女は大人びた言葉を発しながら、粘土を半分にちぎり、小さな手を差し出している。
「・・・え? マヤちゃんの、大事な大事な粘土をくれるの?」
「そう、未来のわたしに粘土をあげるの。
粘土がね、どんどん小さくなってちゃうのは、未来の人に分けてあげるからなの」
「・・・」
「今のわたしは未来に行かれないけれど、粘土は未来に行かれるかもしれないでしょ。
これは実験」
「OK、実験してみよう。実験の結果は、21世紀にね」
粘土を受け取り、立ち去ろうとすると、少女は慌てて呼び止めて、最後にこう言うのだった。
「・・・ねえ待って! まんマルが、どうして龍になったか、わかったよ!
まんマルはね、宇宙を半分、未来に分けてあげたの・・・」
少女の瞳は全くぶれることなく、遥か未来の一点をまっすぐに見つめていた。
次元の扉からキラキラと微細な音が聴こえている。
・・・未来でまた会いましょう。
・・・きっとだよ。
少女に別れを告げて、再びもとの座標軸へと戻っていく。
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(引用おわり)