【中心聖句】
イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった(39節)
イエスが行った病気治癒の奇跡物語には「病状の描写」「癒やしの行為」「治癒の証明」の3要素からなる一定のパターンが在ることは本ブログでも度々ご紹介してきました。
今日の福音朗読箇所では自然現象に対してイエスが起こした奇跡が語られていますが、雨宮慧神父によれば「自然奇跡(自然現象に対する奇跡)」にも次のようなパターンがあります(雨宮慧『主日の福音(B年)』p.202)。
1.状況設定
2.提示 奇跡の必要性を述べる
3.実施 奇跡を起こす言葉や動作を述べる
4.確認 奇跡が起こったことを確認する
5.驚きの反応
それでは改めてこのパターンに沿って今日の朗読箇所を考察してまいりましょう。
1.状況設定(35〜36節)ではイエスの指示に従い、弟子たちは群衆を後に残してイエスを舟に乗せたまま他の舟と一緒に湖の中に漕ぎ出した様子が述べられています。
2.提示(37〜38節)、3.実施(39節前半)および4.確認(39節後半)は一つのまとまりと見ることが出来ます。
まず「激しい突風」(37節)と「凪」(39節後半)が対をなしていることにすぐ気が付きます。
そして、湖が大荒れで舟が今にも転覆しそうになり弟子たちが大慌てをしている(37〜38節)のに眠り続けているイエスの姿(38節)は、イエスが神に全幅の信頼をおいていたことを強調しています(雨宮慧『主日の福音(B年)』p.206)
嵐が静まった後、イエスは弟子たちに「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか」(40節)と問いかけます。問いかける、というより実際には信仰を欠く弟子たちへの非難の言葉を発したというべきでしょう(同p.204)
こうして、弟子たちは非常に恐れて「いったいこの方はどなたなのだろう。」という5.驚きの反応(41節)を示すのでした。
今日の福音朗読箇所は、奇跡という「しるし」を通してイエスが誰であるかを語り、弟子の不信仰を顕にしているのです(同p.206)