【中心聖句】
塵に過ぎないお前は塵に返る(19節)
創世記3章は新共同訳聖書では蛇の誘惑という見出しが付いていますが、一般には楽園追放とか失楽園という言葉で有名ですね。
3章全体のテーマは堕罪とその結果ですが、次のように分けることができます(雨宮慧『主日の聖書解説<B年>』p.161)
1〜7節 堕罪
8〜13節 審問
14〜19節 蛇への呪いと神から引き離された人間の状況
20〜24節 刑の執行としての追放
今日の朗読箇所では14〜19節のうちでも特に人間にもたらされた状況について書かれています。
神は女に対して妊娠と出産の苦痛、男とのドロドロとした関係をもたらします。また男に対しては労働の苦しみがもたらされます。
土は呪われるものとなりました。
ここで呪いと訳されている言葉は אָרַרですが、この言葉にはそのもののあり方を変えてしまう力という意味があります。
神に呪いをかけられたことによって土地は茨とあざみの生えた荒れたものに変えられてしまいます。男は死に至るまで額に汗し不毛の土地を耕す労働を続けなければならないのです。
神は蛇に対してお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなったと言いました(14節)
ユダヤ教研究家・手島佑郎氏がこの蛇について面白い解釈をしておられますので、最後にご紹介いたしましょう。
アダムは事件の責任を妻エバに転嫁し、エバは蛇に転嫁する。だがどこにも蛇の言いわけや申し立ては書いていない(中略)とかく蛇といえば、悪の代表のように取り沙汰される。しかし、この物語の中で、一番正直で、かつ理路整然としていたのは蛇であった(手島佑郎『創世記 〜ユダヤ発想の原点 〜(上) 〜』p.305)