先日、カトリック神父の性暴力疑惑事案についてアップしました。

 

その際にポイントとしたのは

 

相談窓口や神言修道会のトップである日本管区長に被害を伝えたところ、修道会は19年に(中略)聖職を停止し、共同生活から離れる3年の「院外生活」を決め、神父に100万円を渡して母国への帰国を認めた

 

ということでした。

 

 

 

ここで特に問題なのは

 

修道会は19年に(中略)神父に100万円を渡して母国への帰国を認めた

 

というくだりでした。

 

ここで思い出すのが1959年に起こった「スチュワーデス殺人事件」です。

 

1959年(昭和34年)3月10日の午前7時40分頃、東京都杉並区善福寺下流で女性の水死体が発見されました。

 

この女性はBOAC(British Overseas Airways Corporation; 現British Airways)の客室乗務員。当初は自殺と見られていましたが、司法解剖の結果から他殺(扼殺)の疑いが強まり捜査が始まったのでした。

 

そして、被害者の交友関係から杉並ドンボスコ修道院会計主任でベルギー人のルイ・C・ベルメルシュ神父(Louis Charles Vermeersch)が重要参考人として捜査線上に浮かびました。

 

同年5月には弁護人とバチカン大使館一等書記官の立会の元で事情聴取が行われました。聴取に当たったのは「吉展ちゃん誘拐殺人事件」などで有名な平塚八兵衛警視庁捜査一課警部補でしたが、供述を得ることはできず、ベルメルシュ神父は6月中旬、ベルギーに帰国し、1974年3月10日には公訴時効を迎えてしまったのです。

 

小説家の松本清張は本件を下敷きにして1959年11月から『週刊コウロン』(後に中央公論社から単行本を刊行)に長編推理小説『黒い福音』の連載を始めました。

 

 

 

 

なお、本稿ではあえて当時の呼称に倣って「スチュワーデス」という言葉を使いました。現在ではCA(キャビン・アテンダント)と通常、呼ばれていますが、これは和製英語で正しくはflight attendantもしくはcabin crewです。

 

閑話休題(それはさておき)

 

実はベルメルシュ神父は1960年からカナダで司祭を務め、2017年3月、96歳で死去しています。

 

日本の司法当局は恐らくこの事実を把握していただろうと思いますが、事情聴取の際に本人から供述を得ることができなかったことや日本とカナダの間に「犯罪人引き渡し条約」が締結されていないことなどから動きが取れなかったのでしょう。