大阪市教育委員会が、体罰を受けた男子生徒が自殺した大阪市立桜宮高校の体育科の入試を中止すると決定したことを受け、決定に反対する同校の生徒が記者会見して入試の実施を訴えました。
この生徒たちの行動について、“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏が「ご遺族の心情考えているの」「命の重みわかっているの」と憤慨しているそうです。
でも私は、この意見はちょっと一方的な決めつけの様な気がします。
大阪市立桜宮高校の運動部キャプテンたちは必ずしも仲間の死を軽んじているわけでも自分の将来のことしか考えられないわけでもなく
わかってはいるが「動けない」状態なのだと思うのです。
2003年に韓国・大邱(テグ)市、中央路(チュアンノ)駅で地下鉄放火事件が発生しました。この約200名の死者を出した大惨事において驚くべき現象が起きていました。なんと、火災発生時、火が迫る状況でも乗客のほとんどが逃げずにじっと座席に座っていたのです。そのため多くが逃げ遅れて被害が拡大したのだそうです。
この自分の身に危機が迫っても動こうとしない心理を「正常性バイアス」といいます。
この心理状態の人は、危機が迫っていることはわかっていても、今の自分のいる場所、今の状況や生活を変えたくないという心理が強く働き、動かなくなります。それは事実から目をそらし、危機に対してリアリティーを感じられず「火災なんてありえない、気のせいだ、きっと大丈夫」と思いこんでしまっている状態です。
きっとこの大阪市立桜宮高校の運動部キャプテンたちも「正常性バイアス」の状態なのではないかと思います。
自分は体罰体質の学校に所属しているが、「体罰で自殺なんてありえない、きっと自殺の原因はべつにあって学校は悪くない、大丈夫」そう思いこんでいるのでしょう。
身近に迫る危機に対して鈍感でときに適切な判断ができず合理的な行動ができないのが人間です。
でも彼らは、自分が愚かさと弱さを抱えていることに気付いていないだけであり、決して仲間の死を軽んじているのではないと思います。
彼らに必要なのは、「友達が自殺しているのに」とか「命の重みを考えろ」とか責められることではなく、「どうすれば体罰なしで彼らのスポーツ界における夢がかなえられるだろう」一緒に考えようと提案することではないでしょうか。
そうすることで入試中止が自分たちにとってよい方法であり、前向きに物事を考えられるようになるのだと思うのです。
大邱の地下鉄放火事件で生き残った人は、自分の周囲にいた人が窓ガラスを破って逃げる行動を見たことで「正常性バイアス」から覚め、逃げることができたと証言しております。
きっと、真摯に学校を良くしようと誰かが実際に行動を見せることで、桜宮高校の運動部の生徒たちも動かない思考から離れられるのではないかと思います。
「命の重みわかっているの?」……尾木ママ、桜宮高生徒による記者会見に憤慨
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0122/rbb_130122_1699691999.html