FATCAに基づく情報提供では、IRSは、口座保有者が情報提供に同意しなかった不同意米国口座情報の提供を国税庁に要請することになっています。つまり、日米租税条約に基づく「要請に基づく情報交換」が行われることになります。
「要請に基づく情報交換」は、日米租税条約第26条(情報交換)に基づき行われます。日米租税条約第26条第1項では、「この条約の規定又は両締約国が課するすべての種類の租税に関する両締約国の法令の規定の実施に関連する情報を交換する」と規定しています。要請があればどのような情報でも提供する義務があるというわけではなく、相互主義の原則に基づき、条約又は国内税法の実施に関連する情報に限定されています。その解釈にあたっては、OECDモデル租税条約第26条のコメンタリーが参考になります。
コメンタリーによると、「関連する情報」には、単なる証拠の収集、つまり、特定の納税者の税務問題との関係が明らかでない情報は含まれないとされています。さらに、ある金融商品の投資家情報や銀行の口座情報のように個人が特定されていない納税者グループに係る情報を要請する場合には、要請が「単なる証拠の収集」ではないことを示すために、当該グループの詳細な説明、当該グループの納税者が法令を順守していないと信じる理由等を具体的に説明することを要請国に求めています。
FATCAの「要請に基づく情報交換」がIRSに報告された不同意米国口座の総数・総額の情報のみに基づいて要請が行われるのなら、不同意米国口座情報が「単なる証拠の収集」ではなく、条約の規定又は国内法令の実施に「関連する情報」であると言えるのか、疑義のあるところです。
しかしながら(あるいは、疑義があるからなのかは解りませんが)、国税庁は、FATCAに基づくIRSからの情報提供要請に応じるため、平成27年7月3日に情報交換通達を改正し、不同意米国口座情報についてIRSから国税庁に情報交換要請があった場合には、金融機関に対して照会文書を発送し、口座情報の回答を受け、米国内国歳入庁に回答するための手続きを定めています。
また、FATCA共同声明では、相互主義の観点から、日本の居住者が米国の金融機関に保有する口座についての情報の収集及び交換をIRS要請できることとされています。しかし、現時点では、実際に国税庁が要請するのか、具体的にどのように要請するのかについては明らかになっていません。
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