3. 減免の制限
減免の制限についての規定も、「外国居住者等所得相互免除法」と「日台民間租税取決め」では、異なっています。「日台民間租税取決め」では、居住者又は当該居住者と関連を有する者による業務の遂行の主たる目的の全部又は一部が取決めの特典を受けることである場合に減免の適用を制限するとしていますが、「外国居住者等所得相互免除法」では、国内源泉所得の基因となる権利又は財産の設定又は移転その他の行為の主たる目的の一つが非課税等に関する規定の適用を受けることである場合に適用を制限しています。
「外国居住者等所得相互免除法」で規定している、所得の基因となる「権利又は財産」の設定又は移転の目的に着目した減免の制限は、アラブ首長国連邦、イギリス、オーストラリア、オマーン、サウジアラビア、スイス、スウェーデン、ニュージーランド、フランス、ポルトガル及び香港との租税条約でも採用されている規定です。この主要目的テスト(PPT)は、特定制限条項(LOB)に加えて、あるいはこれに代えて、導入されています。
これに対して、「日台民間租税取決め」の規定は、「居住者又はその関連者」の業務の遂行の目的に着目した規定で、「外国居住者等所得相互免除法」の減免の制限とは、その対象又は範囲が同じではありません。これは、オーストラリアとの租税条約の投資所得(配当、利子及び使用料)の減免の制限の規定をみると、よくわかります。
(オーストラリア第10条第11項)
配当若しくは分配金の割当て、配当若しくは分配金の支払の基因となる株式その他の権利の設定若しくは移転又は配当若しくは分配金の受益者である法人の設立、取得若しくは維持若しくはその業務の遂行に関与した者が、この条の特典を受けることをその主たる目的の全部又は一部とする場合には、当該配当に対しては、この条に定める租税の軽減又は免除は与えられない。
この減免の制限に関する「日台民間租税取決め」と「外国居住者等所得相互免除法」の規定の違いについては、それを調整する規定は「外国居住者等所得相互免除法」には見当たりません。「日台民間租税取決め」は我が国を拘束する国際約束ではありませんが、台湾の財政部(Ministry of Finance)のホームページでは、日台民間租税取決めがTax treatyとして載っており、規定変更の趣旨や適用の要件についての説明が待たれます。
4. 相互協議
租税条約の相互協議に関して、国内法では、権限ある当局が合意をした後の更正の請求の手続きを規定しています。「外国居住者等所得相互免除法」でも、同様の規定を置いています。ただし、「租税条約に基づく合意があつた場合」に替えて、「国税庁長官の確認があった場合」に更正の請求をすることができると規定しています。具体的な申立ての手続は、今後、政令又は省令で規定されるものと思われます。
この更正の請求の対象となるのは、双方居住者、事業所得の計算における内部利子、事業所得の内部取引、外国関連取引、及び特定内部取引(外税控除)の規定の適用又は源泉置換規定の不適用により、課税標準又は税額が異なることとなった場合に限定されています。OECDモデル租税条約に沿った租税条約では、条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義も、相互協議の対象となっていますが、「日台民間租税取決め」では、これを相互協議の対象としておらず、「外国居住者等所得相互免除法」でも対象外とされています。