1. 特典制限規定(LOB)
我が国の締結した租税条約に濫用防止規定を入れるようになったのは、2004年3月30日に発効した日米租税条約からです。日米租税条約で、限度税率の引下げ又は源泉地国免税を行ったことに伴い、租税条約の濫用防止の観点から、特典制限規定(LOB)があわせて導入されました。
特典制限規定(LOB)は、所定の要件を満たす適格者にのみ租税条約の特典を認めるもので、イギリス、オーストラリア、オランダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、ニュージーランド及びフランスとの租税条約で導入されています。このうち、アメリカ及びドイツとの租税条約以外の特典制限規定は、租税条約の濫用の可能性の高い源泉地国免税の投資所得等に適用対象を限定しています。
この特典制限規定(LOB)については、次回改正で、OECDモデル租税条約に条文として組み込まれ、事例を含む詳細なコメンタリーが追加される予定です。新コメンタリーは、我が国が締結した租税条約の特典制限規定(LOB)の解釈の参考となるはずです。
2. 導管取引に減免を認めない規定
2004年日米租税条約では、特典制限規定(LOB)に加えて、導管会社を利用したバックトゥバック取引(導管取引)を対象として濫用防止規定を導入しています。これは、配当、利子、使用料及びその他所得について、導管取引に該当する場合には、これら所得の支払を受ける者は「受益者」に該当しないものとし、租税の減免を認めない規定です。この規定は、日本の要請により日米租税条約に含めたもので、米国モデル条約やOECDモデル租税条約には見られない規定です。
同様の規定は、イギリス、オーストラリア、オランダ、スイス及びフランスとの租税条約に設けられています。
また、オーストラリア、チリ及びニュージーランドとの租税条約では、金融機関を介在者とする「バックトゥバック融資」については、利子の源泉地国での軽減を認めない規定を入れています。
(つづく)