4. 仕組み又は取引の主目的が濫用目的である場合に減免を認めない規定
2015年署名のドイツとの租税条約及び2016年署名のチリとの租税条約では、仕組み又は取引の主たる目的の1つが特典を享受することである場合には条約の特典を認めない規定を設けています。
この規定は、次回OECDモデル租税条約改正で条文に組み込まれる予定の主要目的テストと同じ条文を採用しています。したがって、この規定の解釈においては、主要目的テストについての新コメンタリーが参考となります。
5. 租税負担が著しく低くなる場合に減免を認めない規定
スウェーデン及びチリとの租税条約で採用している濫用防止規定は、対象とするスキームは異なりますが、それにより税負担が軽くなっていることを適用条件としています。
スウェーデンとの租税条約では、法人が、事業を遂行するために実質的存在を必要としない活動(金融、運輸、本社機能)から生じる所得を主として居住地国外において取得し、居住地国で当該所得に課される租税の額が、居住地国でその活動を行った場合の租税の額と比べて著しく低い場合に、その法人の所得及びその法人が支払う配当に租税条約の特典を認めない規定を設けています。ただし、租税条約に、「著しく低い租税」についての特段の定めはありません。
チリとの租税条約では、企業が条約相手国において取得する所得が第三国の恒久的施設に帰属する場合に、企業の居住地国及び第三国で課される租税の合計額が、当該所得が企業の居住地国で取得され第三国恒久的施設に帰属しないとした場合の租税の額の60%未満の場合、租税条約の特典を認めない規定を設けています。これに類似した第三国の恒久的施設を利用したトリーティ・ショッピングを防止するための規定が、次回OECDモデル租税条約改正で条文に追加され、その適用についてのコメンタリーが追加される予定です。
6. その他の濫用防止規定
日米租税条約以前の条約で、濫用防止規定を設けているものもあります。
南アフリカとの租税条約では、租税条約の特典を享受することを主たる目的として一方の締約国の居住者となった者(個人を除く)に対しては、条約の規定を適用しないことを定めています。
また、韓国との租税条約では、両締約国の権限のある当局が、この条約の関連規定の適用が当該規定の濫用になると合意した場合、租税条約の特典を適用しない規定を設けています。