⑤の続き: 今さらながら、この本を買ってよかったと思う。

 

 第1章 基本姿勢と基本動作の要項

 

 5. 身型と身法(p.11〜13)

  身法: 動作の目的にかなうように体幹部を動かすこと、あるいは全身の動き。

  身型: 各動作の「定式」の姿勢。

  「立身中正」を正しく理解するには「中正安舒(あんじょ)」を理解し、自然で端正な姿勢を保ち、体の中心軸がブレないように安定させねばならない。こわばり、スムーズでない動きはいけない。立如平准活似車輪=立つこと秤の如く(立身中正)、動くこと車輪の如し(連貫円活)を認識せねばならない。

 

  1) 頭と頸: 「虚領頂勁(きょりょうちょうけい)」緊張させずにまっすぐ伸ばす。頭を倒したり、揺らしたりしない。

  2) 肩と肘: 「沈肩墜肘(ちんけんついちゅう)」=肩の関節をゆるめて鎖骨を持ち上げない。肘を自然にゆるめて下に沈める。肘が外側に張ってはいけない。「上下相随」=肩と股関節、肘と膝の上下関係を呼応させる。

  3) 胸と背中: 「含胸抜背(がんきょうばっぱい)」=胸を張らず、肩甲部や広背筋部を左右にゆったり広げて窪ませ、伸びやかに保つが、猫背にはしない。

  4) 腰: 「鬆腰(ソンヤオ)」は腰を突っ張らず、やわらかく自然にゆるめる。体軸として動かし、手足の動きをリードする。

  5) 臀部と骨盤: 「尾閭中正(びろちゅうせい)」臀部は内側におさめ、左右や後ろに突き出さないようにするべく、尾骨の末端を内側に巻き込む。

  6) 股関節(胯): 「鬆腰鬆胯(ソンヤオソンクワ)」=股関節を折り込む、つまり、ゆるめて後ろに引き込むことにより、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこっきょく)をゆるめることになり、腰と背骨の中正を保つことができる。股間は「円襠(えんとう)」=弧形にする。

  7) 膝: 柔らかくスムーズに屈伸させる。定式では、膝を突っ張らせたり、曲がり過ぎないようにする。

 

 6. 眼法: 視線と表情のこと。前方を平視、あるいは手の動きに合わせる。目は動作に先んじて動くが、あくまで自然で広い視野を保ち、急に首を回したり、凝視したりしない。精神を集中させつつも、表情は自然を保つ。「眼為心之苗」「心静体鬆」。

 

 7. 呼吸: 太極拳は「意識、動作、呼吸」を結合した運動であるが、習熟するまでは自然呼吸を行なう。

 原則として、各動作の始めで吸い、終わりで吐く。動作の転換点やつなぎ部分では吸う。前進するときに吐き、後退するときに吸う。例えば、ランチュウエイの按で吸い、弓歩になったときに吐く(「気沈丹田」)。手が上に向かう時に吸い、下に向かう時に吐く。チーシーの時がその典型である。

 「挙勢呼吸」: 動作に合わせて意識的に行う呼吸。つまり虚の時に吸い、実の時に吐くので、前記の原則に一致しない場合がある。例えば、ダウジェンゴンは後退するが、推掌する動作は実なので吐く。サンホンガンアールの最終動作で腕は上がるが、こめかみを挟む動作は実なので、吐く。