この本もJFGからの推奨に従い、手にした。外国人の目線をふまえて比較文化論的に綴られているところは、たしかに通訳ガイド向けである。まあ、1日で読み終わってしまう本に、長い日本美術史と作品を盛り込むのはかなり大雑把なことではあるが、鑑賞のポイントを抑えてあるから分かりやすいとも言える。以下、メモ。
1. 西洋美術は「革新」、日本美術は「継承」である。
2. 日本美術は装飾的でデザイン的。空想的な場合もある。
3. 日本美術は、モチーフとして自然を選ぶ傾向がある。
4. 鎌倉時代以降、リアリズムを重視するようになった。
5. 平安時代の絵巻物は、吹抜け屋台という手法をもちいていることが多い。
6. 日本の建築も美術も、内と外の境界が曖昧である。
7. 鳥獣戯画のような線描を「白描画」と呼ぶ。
8. 日本人には、ほろびやすさ、移ろいやすさに美を感じる傾向がある。
9. 水墨画「瓢鮎図」は、将軍足利義持のお題と禅僧たちの回答の挿絵である。
10. 室町時代のサロンでは、同朋衆(阿弥号)がアート全般を担っていた。
11. 雪舟、雪村の墨絵には独自性があり、新しい。
12. 狩野永徳の作品は、安土城の襖絵など、ほとんど残っていない。
13. 長谷川等伯の「松林図屏風」は悲しみにあふれた個人的な作品。
14.琳派は超時代的流派。
15. 伊藤若冲は、他者の作品を模写するのではなく、観察と写生の賜物。一時的に存在が忘れられていたのは、皇室に献上された御物となったから。
16. 北斎の「神奈川沖浪裏」は、色、構図に優れた世界的名作。
17. 横山大観の「夜桜」は1930年のローマにおける日本美術展のために描かれた。