この本は、『朱鳥の陵(あかみどりのみささぎ)』(→http://ameblo.jp/trinakria/entry-12197358730.html)を読み終わる前に買っておいたものだ。今は亡き作家の才を惜しみ、いつか時間ができたら、と思っていたのだ。

 設定されている時代は13世紀末、1295年、マルコ・ポーロが帰国した年である。読み進むうちに回想部分で時代をさかのぼり、主人公の晩年に至る。

 主人公は、マルコ・ポーロ一行に買われて旅を同行した博多出身の日本人奴隷(夏桂)である。『朱鳥の陵』でも主人公の設定がみごとであったが、ここでも同様だ。

 話は、マルコ・ポーロたちが冒険のような旅をしてまで探し求めていた「大鍋」という「聖杯」をひょんなことから手にした主人公が、ヴェネツィアを出奔してアルプス地帯に逃げ込み、カタリ派の残党と同居しつつ、その「聖杯」だと思われていたイコンに隠されていたマグダラのマリアによる福音書の内容を知るに至る。そして山奥にもやがてカトリック教会の異端審問官がやって来て・・・。

 読んでいる時は、この人たちは性欲異常者かというくらい頻繁に出てくる性描写が気になったが、読み終えてみるととてもこの小説には必然的な要素であったのだと理解できる。マグダラのマリアの福音書、カタリ派、とても面白い本であった。