腰痛の常識を疑う② | トリガーポイント研究所のブログ

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これまでの痛み治療でなぜ治らなかったのか、痛み治療はどうあるべきかを情報発信している非営利組織のブログです。

③腰痛は筋肉を鍛えれば治る?

「運動不足ですね。腹筋や背筋を鍛えて下さい。」

⇒激しい腰痛を克服した作家の夏樹静子さんは、その経験を「椅子が怖い」という本に書かれていますが、夏樹静子さんも「筋力低下が原因」と言われ、筋力強化に数年努めますが痛みは軽くなるどころか増しています。

トリガーポイントは筋肉に過負荷を掛けたり、反復的に使用すると活性化します。

例えば大臀筋のトリガーポイントは長時間クロールで泳ぐことで活性化します。腹部や、臀部のトリガーポイントが痛みを起こしているケースでは、筋肉強化運動はさらにトリガーポイントを活性化させる可能性があります。

痛みと共に握力がなくなったり、脚の力が抜けたりすることがありますので、筋力の低下が痛みを起こしているように感じるかも知れませんが、トリガーポイントが起こす痛みによって筋力低下が起きています。

 【参考図書】 腹筋運動をすると腰痛になる 松尾毅著 アチーブメント出版刊

④椎間板ヘルニアが腰痛を起こしている?

「ヘルニアですね。これを除去すれば治ります」

⇒椎間板ヘルニアは椎間板が神経根を圧迫して痛みを起こすと説明されますが、実はそれでは説明できないことがたくさんあります。

1.腰痛のない人の中にもかなりヘルニアがみられる。
(無症状の椎間板異常)
痛みがないヘルニア

2.ヘルニアが治らなくても痛みが無くなることがある。

3.椎間板を除去しても痛みが治らない事がある。

4.ヘルニアが圧迫している神経支配領域と痛みの場所が異なることが多い。

5.神経の走行に沿って圧痛があるといわれているが、圧迫された所だけでなく、他のところに圧痛が発生するのは何故か?

6.神経根ブロックや硬膜外ブロックが効かないことがある。

⑤手術は痛みを除去する最も有効な手段?

「いろいろ治療して痛みが取れなければ最後は手術を行います。」

 ⇒日本ではまだまだ行われている椎間板ヘルニアの手術ですが、世界的な生理学者Patrick Wallは次のように述べています。

(前略)   

椎間円板の役割について外科医の混乱は、突出した椎間円板を取り除く手術の割合が、国によって大きく異なることに反映されている。

10年前に10万人あたり英国では100人、スウェーデンで200人、フィンランドで350人、米国で900人であった。この割合は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが、多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。
不利益をうけたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。

椎間板ヘルニアの手術は70年以上もの間行なわれてきた。もてはやされたこともあったが、疑問が増し続けている。ヘルニアの突出と痛みはそれぞれ独立していて、痛みの発現におけるヘルニアの突出の役割ははっきりしない。

以前この手術を熱烈に支持していたマイアミ大学 は、今ではこの手術をやめて、厳密なリハビリテーションのプログラムを採用している。

(後略)
(Patrick Wall PAIN The Science of Suffering)