TOKYO YEAR ZERO | Happy-Gate

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半径5mのライフログです。

1974 ジョーカーのデイヴィッド・ピースの東京三部作の第一作。
日英同時刊行で、話題になってます。

作者は、イギリス人で、94年から東京に住んでいる人物。

現代を舞台にした作品でも、ヘンな日本人がいっぱい出てくるというのに、終戦直後の混乱期を舞台にした作品で、ここまで日本人から見て、違和感のない世界を、よくぞ書けたなぁと、感心しました。

たとえば、日本人がロンドンを舞台に、小説を書いてみて、ロンドン市民が読んだときに、違和感を抱かせないなんて、絶対無理だもの。

やはり、作者が東京在住ということが、ここで生きてくるんでしょうね。

作風はかなり純文学テイストが強く、虚実入り混じっていて、いまここで語られる『わたし』とはいったい誰なのかわからなくなる、サイコ系の雰囲気を漂わせ、主観と視点が複雑に入れ替わる展開に、読み応えがあって面白かったです。

お話は、1945年の夏。品川の海軍の工廠で、女性の死体が見つかる。警視庁の三波刑事は現場に向かった。軍の支配する地域で、警察は関係ない。
やがて玉音放送が・・・。

日本の敗戦が決まってから一年。東京は新しい秩序が芽吹き始めていたが、日本人に暗い影をよこしていた。
芝、増上寺で、身元不明の若い女の死体が見つかる。
警視庁捜査一課の三波警部補は、事件の捜査を開始。
遺体の特徴から、二つの遺体は同一犯によるものと推定された。そして、あの玉音放送の日、品川の海軍工廠で見つかった遺体にも似ていた。

誰もが生きるために嘘をつき、食べるためにエゴをむき出しにした時代。

捜査の過程で、三波は精神を追い詰められていく。そして・・・。


実在の事件で、終戦後の混乱期であっても、人々を恐怖させた小出義雄事件がメインになる。ことの顛末は作品に書かれているとおりではある。
異常な連続強姦殺人事件であり、戦争という暗い影が付きまとう。
作中でも語られるとおり、あの時代、戦争の暗い影は、誰の身にもあった。

嘘と欺瞞だらけで、暴力は身近だった。

日本全体が正気を失い、おかしくなっていた。


いまの平和な時代から想像もできない無秩序な世界だったわけだ。
そこに生きる人間は、皆、真実を隠していた。

芝増上寺で見つかった死体のうち、一体は、いまだに人定ができていない。


作品は、帝銀事件、下山事件と、占領期のミステリーへと続くらしい。
早く、続きが読みたい。