散歩をしていると、前方から見知らぬ男が歩いてきた。
その男が徐に近づいて来て、突然、胸のあたりを押さえながら、
「すみません」
と、声をかけてきた。
気分でも悪くなり、救急車でも呼んで欲しいのかと思い、うかつにも立ち止まってしまった。
「あの、お金が無くて、何日も、何も食べてないんです。カンパして貰えませんか?」
あまりに予想外の展開に、思わず
「いくら欲しいの?」
と聞いてしまった。
「いくらでもいいんです」
相手を観ると、無精ひげで、服はジャージ。一瞬、ホームレスかと思ったけど、特有の悪臭もなかった。何日も、何も食べてないという割に、元気そうだったし、何よりとてもふくよかだった。
ポケットにて入れると、ジュースを買うために持っていた200円があった。
「これしかないけど」
「十分です」
そう言って、彼は手を差し出してきた。
200円を渡すと、お礼もそこそこに行ってしまった。
これって、寸借詐欺?