高村薫の福沢3部作の第2部。
前作「晴子情歌」から10年後の世界らしい。
1987年。バブルのまっただ中。空前の自民党の大勝、保守合同の中、青森の保守王国の代議士は、その王国を追放された。
王の行き着いた先は、晴子に生ませた禅家になった息子の寺だった。
雪深い青森の草庵で、親子の対話が始まる。
新聞連載時には、いろいろとトラブった経緯から、いわく付きの作品となった。本当に久々の女史の新作である。
前作『晴子情歌』では、母親の話を通じて、戦後史を語り、そして、今作では父親との会話の中から。80年代の政治状況を描く。
それにして、これほど時代にタイムリーな作品は珍しい。20年前と現在の政治状況にこれほど似通った部分があったとは。自民党の圧勝と、保守合同。好景気。
そして、語られるものは、行政改革、税制改革、政治改革。国鉄、電電公社の民営化と、まあ時代のシンクロニシティという感じだ。
物語は、親子の対話劇で進む。お互いに通じ合わない世界、政治と宗教の狭間で、何とか通じ合おうともがいているようだ。
それは世代の断絶であり、旧世代の人間にとっては絶望、新世代には諦めだった。
上下巻で、難しい仏教用語が並ぶので、すっごく取っつきにくく、読みづらい。久々にくどすぎる高村ワールドに決死の覚悟で突入して、うっそうと茂った言葉のジャングルを突破するのに2ヶ月もかかってしまった。
2ヶ月かけて読み終えたのだけど、残ったのは何とも言えない疲労感。マラソンのような達成感もあるけど、『リア王』ということから、あまり幸せな結末は予想できなかった。
こうやって、淡々と世代交代していくんだな。
それにしても、この代議士のモデルって誰だろうな?そのことだけが最後まで気になってしまった。
さて、次の作品では、久々に合田警部が戻ってくるそうで。そのことは、『新リア王』のプロモーションで数々のインタビューの中で、作者本人がいっているので間違いないだろう。
本作でも、電話で北沢署の合田というのが登場しているが、どうなんでしょうね。
次回作は、2002年が舞台。彰之とその息子秋道の世代間の話になるらしい。しかも、次の作品のテーマは死刑制度。合田はその二人をつなぐ存在として、登場するそうだ。
その記事を読んだから、新リア王を読もうと思ったんだけど。