僕らが生活を送るこの自由主義社会とは、人間の相互不信のもとに成り立っているという話を聞く。
なので、常に自由主義社会は、自らの中に隙あらば倒そうとする敵を構成分子の一員として内包しながら、その敵に対する絶えざる不信と警戒によってかろうじて成立しているそうだ。
難しい話だが、ま、そういわれればそうだと、強く感じた次第。
考えてみたら、相互不信によって何とか成立しているこの生活が、実は他人を信頼しなければ日常滞りなく送ることさえもままならぬようになってしまう、そういうトラップにまんまと陥ってしまうという、なんとも奇妙で皮肉な現実があることにはたと気が付く
パイロットは操縦中に発狂して逆噴射装置をかけるかもしれないし、理容師は客ののどを剃っている最中、強烈なフラッシュバックを起こして動脈に剃刀を突き立てるかもしれない。
医者が手術中に発作を起こして患者の内臓を切り刻んで暴れるかもしれない。
恐ろしいことこの上ない。
クラビオリン
横溝正史の異色長編「吸血蛾」。
作中に出てくるクラビオリンという楽器はアナログシンセサイザーの先駆となったキーボード。
フランスの技術者コンスタン・マルタンが1947年にヴェルサイユで発明した。
この楽器は、キーボードとセパレート型のアンプとスピーカーのユニットから構成されている。
キーボードは、通例では3オクターブをカバーして、音色を切り替えたり、ビブラートを加える多数のスイッチが付いており、様々なエフェクトが表現できた。
クラヴィオリンは、真空管のオシレーターでブザーのような、ほぼ正弦波の波形を作り、これをハイパスフィルタやローパスフィルタを用いて変形してフィルタ処理し、またビブラートも加える。
アンプもまた、この楽器の特徴的な音色作りに貢献し、大量のディストーションを生み出すことができた。
ジョー・ミークは、1960年からクラヴィオリンを使ったレコーディングを始め、彼がプロデュースしてヒットしたザ・トルネイドースの「テルスター)」(1962年)は、クラヴィオリンか、あるいは Univox が用いられており、シングルのB面曲「Jungle Fever」も同様であった。
これには面白いエピソードがあって、マーク・ブレンドによれば、実際に使用された楽器が何であったかについては長らく論争の的となっているが、「わずかな可能性ながら、ミークが「テルスター」で Univox を使用した上で、クラヴィオリンをミックスしたこともあり得る」という。
ザ・ビートルズは、「ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン 」でクラヴィオリンを使い、1967年7月にシングル「愛こそはすべて )」のB面曲として発表。
ジョン・レノンは、オーボエのセッティングでこの楽器を演奏し、インドのシェナイ(を思わせるエキゾチックな響きを生み出している。
ザ・ビートルズが使用したクラヴィオリンは、アビー・ロードのEMIスタジオが所有していたものであった。
日本の映画『地球防衛軍』(1957年)および『宇宙大戦争』(1959年)では、宇宙船の効果音にクラヴィオリンを用いている。