作家・宮田雪氏とホピ 聖殺人者イグナシオ | 脱腸亭日常 ~MY TESTAMENT of trifling beetle~

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作家・宮田雪氏

 

反権力反体制色の濃いように見えるが、原作漫画を見る限り、こてこての愛国右翼にしか思えないという、不思議なカメレオンだ。

 

水木しげるの盟友であり、nativeアメリカンの権利運動を日本に紹介したり、かつ、アメリカ・インディアンの部族のひとつホピ族(Hopi)に傾斜した人物として有名。

宮田さんがいなければ、この「平和の民」ことホピ族の存在は日本に知れなかったかもしれない気がする。

本当にホピのアートは素晴らしい存在感を放っており、ほれぼれするのだ。

 

 

 

「探偵物語」最終話の「ダウンタウン・ブルース」の脚本を書いた人物としても名をはせている。

 

もともとは「ワセダミステリクラブ」出身。

大藪春彦、小鷹信光の出身、先輩にもあたる。

そして「殺しの烙印」で日活を追い払われた名監督・鈴木清順にも師事し助監督を務めたり、1970年初頭には水木プロに出入りしたりする。

ちなみにこの頃「あしたのジョー」(力石が死ぬあの第51話「燃えつきた命」は秀逸か)、「海のトリトン」、「ルパン三世」の脚本も手掛けている。

 

 

1974年からは二年間、奥多摩の寺院に住み込んで平和運動家の藤井日達(日蓮宗系)に師事して奉仕活動に明け暮れる。

この頃、水木漫画の原作を手掛けている(「東海道四谷怪談」、「耳なし芳一」、「死神大戦記」など)。

また、その他の漫画家の作品にも原作者としてかかわっている(「けんか葉隠れ」「テロルの箱船」「環妖の系譜」「さろめ」「たなとらぴあ」「愛欲天使」など)。

これらが軒並み、右翼臭がプンプンするシロモノだったりする。

 

さらに「チベット死者の書」の翻訳者であるおおえまさのりとの出会いを機に、精神世界を源流とする自己と社会の変容を実現しようとする運動ーニューエイジーの胎動期に身を置く。

 

そしてテレビ脚本に復帰し、「探偵物語」「大激闘マッドポリス'80」「プロハンター」「事件記者チャボ!」などの脚本に参加するが、1987年公開の映画「ホピの予言」制作のために徐々にフェードアウトしてゆくこととなる。

 

 

ドキュメンタリ-映画「ホピの予言」は、アメリカアリゾナに居留地を持つnativeアメリカンのホピ族を取材したもので、その精神文化、アートを紹介し、また、居留地内のホピ族たちが「母の内臓」と呼び採掘を禁じてきたはずのウランを主とする鉱物資源を、アメリカ合衆国政府は、彼らを強制移住させてまで強硬に採掘し、原爆開発に流用したことを告発もした映画だ。

そして「ホピにはまり」、反原発運動にも参加してゆく。

その続編「浄化の日」は、宮田氏が2011年に神戸で死去したことにより、未完成のままである。

 

蛇足だが、大激闘マッドポリス'80の第7話「地下銀行襲撃」および第11話「爆殺マシーン」、さらにその続編形である特命刑事・第5話「小さな亡命者」はとてもいい。

 

 

さて、ホピは主にアリゾナ州北部の6,000km²のナバホ族の保留地に周囲を囲まれている保留地Reservation)に住んでいる。

母系制社会であり、女性も男性と対等の立場で政治に関わっていた。

 

夏至の頃、「ニーマンの儀式」という非公開の仮面行事を行う。

水木しげるはこっそりこれを写生して、画に残している。

 

彼らの聖なる食べ物とされるトウモロコシの栽培とホピアート作品販売が主な産業。

ホピアートの主なる種類はホピジュエリー(シルバーアクセサリー)、子供たちへの教育用に作られるカラフルな木彫りの精霊カチーナ人形「は、民芸品・芸術品としても人気が高く、日本にも輸入されている

その他バスケット及び陶器類などが有名

それらのアート品にはホピ族に伝わる信仰や神話などが刻まれ、平和の民ホピ族としての精神を伝えるものとして現在も世界中から愛好されている。

 

このホピ族、かってアメリカ合衆国の同化政策によ20世紀には全寮制の「インディアン寄宿学校」に強制入学させられた歴史もあるという

かなだにもあったという。

ご多分に漏れず、彼らも迫害を受けていたわけである。

 

 

 

 

聖殺人者イグナシオ

 

花村萬月の小説の映画化。

この小説はすごく身に迫るというか、マイナリティが差別を受けることによってこんなにも絶望するのかという気持ちが手に取るほどわかるのだ。

差別する側としてのマジョリティ差別される側のマイナリティが、なにをもって排除されているのか、はっきりとわからないことが多々あるという。

だが意図していなかった差別だったからそれに対して起こるのはルール違反だ、悪気がないから我慢しろ、というのはマジョリティ側のごくごく一方的なる暴論だ。非民主的と言えよう。

差別を感じられるとは思わなかったからこそ、そういう差別をうっかりとしてしまわないように、常日頃から意識を高めて「そうならないように」終始することが重要だ。

マジョリティはマイナリティを知らなくても生きて行けるが、マイナリティはマジョリティを知らなければ生きて行けない。

 

衝動的に残虐な殺人を繰り返す少年の愛と孤独を描いた異色ドラマ。

花村萬月の小説『聖殺人者イグナシオ』を原作に、「Spanking Love」の田中昭二と山田吐論が共同で脚本化、田中が監督もつとめた。

撮影は「スーパースキャンダル」の石井勲。

主演は「ユーリ」のいしだ壱成で、共演に「北斗の拳」の鷲尾いさ子のほか、菊池隆則、田口トモロヲ、石橋蓮司、中島陽典といった個性派が脇を固めている。

 

人間はつい、意図せず差別をしてしまう生き物だということをこの小説、映画は語っている。