ソフィ・カル「最後に見たもの」
中途失明者が最後に見たものをリサーチして、その回答をテキストと、回答者当事者の顔写真を添えて展示するという試みがあった。
フランスの芸術家、ソフィ・カルの「最後に見たもの」(La Dernière image)がそれ。
これは、ざっくりといえば、見えない人が、まごうことなく「当事者」として、見える人と対峙するという作品。
物議を醸したが、狙いはユニークだと思う。
そもそもソフィ・カルは、自身や第三者の個人史や私生活を、単なる事実の集積に終わらせずに、今まで、ありえなかった視点から物事をとらえて、そのイメージを再構成。
前提とか固定概念にゆさぶりをかけるという手法を得意としたアーチスト。
そのために、テキストと写真の併置、およびプラスそこにオブジェや映像を設置するのが彼女流。
原美術館では彼女の展示がよく行われていたという。
ここは、元は北品川にあった私立美術館で2021年閉館。
今は群馬県渋川市に移転、原美術館ARCとして運営されている。
ソフィ・カルの作品で有名なものを挙げると。
眠る人々 (Les Dormeurs,1979年)
知人や見知らぬ人々が自分のベッドで眠る様子を撮影したものにインタビューを加えた写真とテキストからなる初作品。
限局性激痛 (Douleur exquise,1984〜2003年/日本語版1999年)
自身の失恋体験による痛みを、他者のもっとも辛い経験に耳を傾けることで治癒していく過程を写真と文章で作品化したインスタレーション作品。
原美術館での展覧会のためにまず日本語版として制作され、その後フランス語や英語版も世界各国で発表された。
色盲の人 (La Couleur Aveugle, 1991年)
色盲者へのインタビューと、アーティストによるモノクローム絵画への言説をカルが再構成した作品。
海を見る (2011年)
イスタンブールの内陸部に暮らす人々が海を初めて見る様子をとらえた映像作品。
Dead End (2018年)
シャトー・ラ・コストにパーマネント・コレクションとして作品を依頼され制作した大理石製の墓のインスタレーション。