1980年・点景 「警視-K」と静かな怒り 「大衆賞」 | 脱腸亭日常 ~MY TESTAMENT of trifling beetle~

脱腸亭日常 ~MY TESTAMENT of trifling beetle~

基本毎日更新。名誉も金も、素晴らしい音楽を作り人々を感動させようという気持ちもない、極めて不心得なアマチュアミュージシャンであり、アマチュアアーチストtrifling beetleの遺書。
HP https://triflingbeetle.wordpress.com/2025/09/06/trifling-beetle-official-hp/

 

探偵物語で、松田優作演じる工藤俊作となんとも軽妙なやり取りを見せてくれた成田三樹夫。

すごく好きなんですよね。

日活の悪役のイメージも強いし、見るからに恐ろしそうな顔してるし。

剃り込みとか(笑)。

志賀勝級である。

 

でも実は山形出身、で東大に入ったものの、肌に合わず中退、山形大学に入りなおした秀才なのだ。、

山形大も中退し、俳優座養成所に行ったわけだけど、見かけによらないもんである。

 

 

 

 

 

レコード大賞の、謎の、「大衆賞」

 

11回(1969年)から第19回(1977年)まで、大衆に支持された歌手や楽曲に与えられた賞。

 

当初は歌唱賞と同様に大賞候補としての位置付けだったが、第17回(1975年)からは大賞候補の枠外の位置付けとなった。

 

47回(2005年)1度だけ復活。

 

記憶にあるのはやはりこれ。

 

1977年(昭和52年)12月31日(土)PM7:00 帝国劇場

第19回 日本レコード大賞 大衆賞

 曲名:「ウォンテッド」ほか 歌手:ピンク・レディー

 

ちなみに大賞はジュリーの「勝手にしやがれ」。

 

こういうものもあった。

「特別大衆賞」

 

22回・1980年 その年に引退した山口百恵のそれまでの実績を称え与えられた

26回・1984年 都はるみ

29回・1987年 中森明菜瀬川瑛子

 

 

 

 

 

1980年・点景

「警視-K」

 

 

 

 

受験が迫り、家もざわざわし、自分の心も荒み、静かな怒りを飼い殺し、仕方なく登校していたうつうつとした毎日。

そんな日常に、突如、なんか変な電波が紛れ込んできたようだった。

 

ブラウン管で繰り広げられる違和感だらけの異様な世界。

「警視-K」を初めて見たとき稲妻に打たれたみたく、衝撃で、うんこが全部出なかった時のような変な感じがいつまでも残った。

1980年の10月から12月まで放映され、最後は打ち切られた『警視ーK』

13話だが、当時二回ほどしか見ていない。

よくわからなかったからだ。

 

あの感覚。

オールナイトではたけしが13回で打ち切りになったことを揶揄してあざ笑っていたし、クラスの人間は「なんなん、あのドラマは?」って感じで眉間に眉を寄せるやつらばかりだった。

まあ、セリフが本当に聞き取れなかったし、何をやりたいのか、意図もストーリーも全く見えなかったのも事実。

異端な刑事ドラマだったことは確実に言える。

 

 

 

さて、時は流れ、ある時、ある機会があり、このドラマを全話通しで、初めてしかと見ることがあった。

 

何なんだこれは?

 

いや、もう衝撃だった。

1980年の時とは違った意味で、である。

 

これは一言で表せば、類まれなる映像芸術作品。

在り来たりな、それまでの紋切り型な刑事ドラマ、ではなくて。

 

勝新は映画をやりたかったんだな、と、初めて勝新太郎のやりたかったことと、先見の目、アバンギャルドな内容のすごさなんかに、遅ればせながら気が付いた。

不覚であった。

ヌーベルバーグとかなんかに通じる表現。

いやはや、勝新、やるじゃん。

 

やりたいこと、表現したいことを、妥協を一切許さない職人根性をもって、信念に基づき創り、予算オーバー、打ち切り。

挙句会社が倒産。

表現者の鏡ではないか。

とんでもない崇高なる志と、鬼のような覚悟を持って、ひたすら良い作品制作追及にのめり込んだ勝新。

大好きだ。

 

なんとなく思うのだが、優作も生きていたら、表現者、製作者側にいつしか深く携わり、勝新みたく飽くなき情熱で作品制作に命を懸けてていたことだろう。

そう思う。

だから、優作と勝新がキスしているポートレートは自分の宝物でもあるのだ。

美由紀さんに感謝、である。

 

警視-Kに話を戻すと、脚本は骨格のみ、あって無いようなもので、監督も務める勝新は、役者さん全員にアドリブ芝居、即興演出を要求し、リアリズムを追求することに終始したという。

だから会話がたどたどしい、噛み合わないし、ストーリー自体繋がらない

当然節々で辻褄が合わないことが出てくる。

勝新はそれで、良しとしたという。

ただどうしてもおかしいところについては、(脚本上で犯人とされてた人物に、なりゆきでアリバイが出来てしまった時など)慌てて別の犯人をキャスティングしたという。


その他、「投げ手錠」という、リアリズムに乏しいありえない秘技が出てきたり、キャンピングカーで暮らす実娘役は勝新さんの実娘=奥村真粧美で、別れた元妻を演じるのは中村玉緒サンだったり。

いろいろと突っ込みどころ、もとい見どころが多い。

同僚の若手刑事二人も、その時点では、ただの付き人か、かばん持ちか、なんかそんなただのド素人だったというしね。

どこまでも勝新ワールドに染め上げられている作品なのである。

 

 

 

 

その他、勝新のこだわりをあげてみると。

「現実の人間はTVドラマみたいにくっきりハッキリ言葉を発しないだろう」って事で、俳優さん達にくっきりハッキリ喋らせなかった

しかも完全同録、アフレコなし。

まるでジャズのアドリブセッションだ。

結果、台詞がよく聞き取れず視聴者からクレームが殺到

また、ほとんどロケ撮影にした。

しかも照明を使わず自然光にこだわった為、画面が薄暗かったため、これまたクレーム。

 

 

 

ほとんどの視聴者は、この勝新の革新性、映画流な表現手法、自主製作映画のノリなんかに全くついて行けず、狙いが理解出来ず視聴率も1ケタ台まで急降下し、最終回においてはなんと4.4%だったという

『大都会』シリーズや『探偵物語』など数多くの傑作を生んだ日本テレビ系列火曜夜9時伝統のアクション・ドラマ枠では、ありえない数字だったということだ。

自分的には、ED が達郎の「MY SUGAR BABE」ということに、激しく反応した。

ほんまにセンスいいな。