1983年・点景
渡辺久信、散る
各地の夏の予選もたけなわ。
全国一の剛腕とうたわれた・渡辺を擁する前橋工が予選決勝で不運な敗退。
相手太田工業左腕・青柳も絶好調で1-1で延長戦にもつれ込んだ。
そして、迎えた延長11回裏、渡辺はツーアウト満塁のピンチを迎えたが、バッターを2-2と追い込んでいた。ここで目の覚めるような速球が外角のストライクゾーンに決まった。
しかし、無情にもボールのコール。
そして、意地になった渡辺はまたも同じコースへ速球を投げ込んだ。
が、やはりボールと判定され、無念の押し出し1-2でサヨナラ負け。
その瞬間、渡辺は眉一つ動かさず、マウンドに仁王立ち。
渡辺は今も、「2球とも絶対にストライクだった」と言っているそうである。
もし...だけど、もし前橋工が勝っていたとしたならば、甲子園初戦で前橋工ー池田という、夢のようなカードが見れたかもしれない。
渡辺対池田打線。
あくまで、仮定の話上の、想像の域を出ないが、ロースコアで池田が負けていた気がする、なんとなくだが。
ちなみに太田工業は先制したものの、1-8で池田に惨敗。
その他、倉吉北・加藤も出場停止で終了。
1983年・点景
1983年 第65回選手権大会1回戦 横浜商業vs鹿児島実業
大会1日目の第1試合、いわゆる開幕試合は横浜商業と鹿児島実業の対戦となった。
この年の春の選抜大会で準優勝した横浜商業はさらに総合力に磨きをかけ、この夏の選手権大会でも優勝候補の一角として甲子園に乗り込んできた。
この選手権でAクラスと評価されたのは横浜商業、中京高校、箕島高校、広島商業、池田高校、高知商業、興南高校の7校。
鹿児島実業も九州の春季大会を制している実力高校であったが、総合力に長けていながら春から更に得点力が数段アップした横浜商業の優位は変わらない、というのが戦前の予想だった。
珍しいことに横浜商業はこの年の春も夏も開幕試合。
場慣れしている横浜商業が目の覚めるような先制攻撃で初回に4点を先取した。
果実も、森屋捕手の度重なる悪送球などがあり、最終回に何と4-4の同点に追いつくという展開。
一打サヨナラの好機にセンター前ヒットが出るも生還できず延長へ。
横浜商業の方は、初回に4点を取ったきり、0行進。
しかし、慌てない試合巧者な横浜商業、延長10回表に勝ち越し、逃げ切る。
5ー4だった。
横浜商業は本当にしぶといというか、負けない感じだ。
この二年間でベスト4に3回、決勝進出2回というのは素晴らしい限りだ。
それでいて優勝できない(笑)。
まるで近年の八戸学院光星のようである。