リアル「カッコーの巣の上で」3
事件が発覚した1984年(昭和59年)3月14日、栃木県警は看護職員等による患者への暴力、不正入院、無資格診療行為などの疑いで宇都宮病院に家宅捜査に入り、そして3月29日、5人の病院職員を傷害容疑で逮捕。宇都宮病院では、3年間に220名の不審死があったが、彼らの容疑はそのうちの2件の死亡事件に関わるもののみ。結局、5人のうち4人が障害致死罪で起訴された。
一方、石川院長は同年4月12日、院長を辞任、その後4月25日に4件の容疑で栃木県警に逮捕さ。容疑は「診療放射線技師および診療エックス線技師法違反」、「保健婦助産婦看護法違反」、「死体解剖保存法違反」、「食糧管理法違反」の4つ。
宇都宮病院事件後、170人の患者が同病院から退院した。特筆すべきは、栃木県に委託された精神科医の診断により、措置入院患者の半分以上に当たる6割の人が退院を許されたこと。措置入院は、「自傷他害の恐れ」があるため患者本人に対して行政が命令して強制入院させるものだが、そうした恐れがあるとされた患者の半分以上がその必要がないと判断されたということだ。
しかし、宇都宮病院事件後、措置入院を解除された元患者の中から、傷害事件を起こしたり、殺人事件を起こしたりした者が何人か現れ、一部では危険な患者を退院させたと非難する声も出たという。
精神医療のむずかしさを物語るものだが、一方で、社会の偏見と無理解の中で、元患者が追い込まれていったという側面もあるのではないかという考え方もある。
報徳会宇都宮病院が山谷の仲間をさんざん食い物にしてきたのと同じように、大阪でも『大和川病院』など多くの精神病院が釜ヶ崎労働者を食い物にしてきたということがある。その構造は、今日も変わってはいない。
また、神戸の神出病院での看護助手らによる患者虐待・暴行事件が明るみに出たりもしている。