ミツゴ的評価 ☆☆☆☆
[書評]つまりは日銀理論
本書の目的は「アベノミクスによりやおら注目が高まった日銀&金融政策について解説しましょう」という内容です
が、初っ端に「バズーカ論を懸念する」的な内容のように 概ね日銀(中銀)の出来る事には限界がある という日銀理論に貫かれています
では何か書きます
先ず本書には中銀を語る上ではけして無視できないテーマを割愛しています
よく「政府からの独立」というフレーズがあります、日本のような議院内閣制採用の民主国家なら「議会からの独立」といっても良いでしょう
議会(国民の代表)から独立、とは非民主的官僚組織という意味です
そんな組織が国家経済と(氏が語るような)財政に大きな影響を与えるジレンマについて ページを割くべき と思います
例えば日銀が大量の資産を購入→暴落、となれば政府としては損失補填が必要になります
つまり税金から補填分を割かなければなりません(非民主的組織が税金の選択肢を決めるのは「代表無くして課税無し」の原則に反する)
民主国家は国民の意志、つまり失業を嫌う為 どうしても財政ファイナンスや低失業政策(インフレと失業率は負の相関がある)は魅力的です
やがて破滅するとわかっていてもユーフォリア(好景気)は魅力的です(氏は「覚醒剤」とまで呼ぶ)
独立した政策と民主性は二律相反の関係にあります
この点を強調するのは 財政アコード、つまり政府と日銀の歩調調整に深く結び付くからです
その点を端折るのは無理があります
さて内容に
本書の本質は「ベビーシッター共同組合」です
欧米では幼い子供を持つカップル達が互いに子供を預け合う「ベビーシッター共同組合」があります。
相互扶助でベビーシッター代を浮かせる狙いで、昼働く人、夜働く人 平日に用事がある人 休日に用事がある人 が互いに助け合う訳です
上手く歯車が噛み合えば理想的なシステムです。
しかし現実的にはそう甘くはありません
例えばレジャーシーズンは皆 外出したいから子供を預かりたがりません
逆に外出の少ない真冬なら 子供を預かりたがります
つまり需要と供給が噛み合わない訳です。
この点の解決策は 「子供を預ける権利」をクーポン化して、例えばレジャーシーズンには「1日あたりクーポン2枚必要(通常は1枚)」みたいな形にすれば、レジャーシーズンに子供を預けたい人は減り 預かりたい人が増えて需給は調整されます
冬場は逆にする訳です
そうやってクーポンの枚数や率を操作して 需給をイーブンに持っていく訳です
では仮に「マイナス30度の大寒波、1mの大雪」が来たらどうでしょう
皆が「預かりたい」と思っても誰も外出出来ないから預けられません
つまり クーポンの枚数や率の操作が意味を為さない訳です
氏の指摘は クーポンの操作ではなく 寒波の解消しかない
つまりクーポン操作が無効 という訳です。
日本経済を襲う大寒波は高齢化と財政問題による将来不安
皆が不安だから消費が増えず、結果需要が足りない
インフレにして貯蓄を目減りさせても、目減りした 貯蓄の穴埋めにさらに貯蓄を増やす(消費を減らす)始末です(オイルショック期のインフレで消費性向の低下が観測された)
つまり デフレを解決したいなら金融政策ではなく 抜本的な改革が必要 という訳です
蛇足
では日本経済を襲う大寒波とはなんでしょうか
よくあるのは少子高齢化問題
ただしこちらはドイツや台湾 シンガポール等他国でも見られる現象です(しかしそれらの国は国際化と移民受入というカードを使っている)
岩田一政氏いわくデフレになった4つのショックは
1)少子高齢化
2)円高
3)不良債権
4)労働時間減
との事
3と4は一応解決しつつある中、金融政策はいかなるアプローチが可能か 翁氏はそちらを触れてほしい所です