マンダリンガーネット ・ ・ ・ その2
こんにちは。
今日は晴天です。
オレンジからマンダリンガーネットの話になっていますので、もう少しその続きです。
ナミビアのカスーリ鉱山というところで採れたこの石の特徴は鮮やかなオレンジですが、
それだけではなく、何処となく「深み」があります。
「深み」と言っても言葉では言い表しにくいのですが、
ファンタカラーのスペサルティンに比べて、ハッキリ言ってしまえばモヤっとしています。
この「モヤっと感」はインクルージョンのほとんど無いようなルース(滅多にありませんが、、、)でも,
モヤっています。
これは「シルキー」と表現されるようなインクルージョンが入って霞んでいるものではなく、
独特な成長履歴によるもので、業界では「糖蜜状」とか「熱波効果」とか言われています。
身近で言えば、紅茶にシロップを入れた時のあのモヤっと感の事です。
このモヤっと感に関しては、同じようなものにミャンマーのルビーやペリドットがあります。
どちらも色としては最高峰と言われています。
そう考えると、あの「モヤっと感」は、スカッとした透明感はないですが、濃い色には付きものと言った感じもあります。
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「マンダリンガーネット」という名前は日本においては正式な宝石名ではありません。
商品名ですので特に決まった規定があるわけでもなく、言ってみればどんな石にでも付けられます。
その為、インターネットなどでナイジェリアやタンザニアなど、ナミビア産以外のオレンジ色の石によく付けられています。
どちらが本家の「マンダリン」か?!
などという事は ・ ・ ・どちらでもいいのですね。。。。そんな事。(*^.^*)
ただ、確かな事はナミビア産の石は他の産地の石と見た目にハッキリとした違いがあるという事です。
宝飾展でよく海外の業者(ヨーロッパ系が多い?)のショーウィンドウ内に非売品で飾ってある様なジュエリーに濃いオレンジの石が付いている事があります。
その石について聞くと、ナミビア産のスペサだったという事がよくあります。
色の濃いものに関しては誰にでも見た目で分かるくらい本当に色が違います。
昔の写真ですが、右が茶色っぽいスペサ、右がファン多カラーのスペサ。
どちらもナイジェリア産です。
これにナミビア産もスペサを並べると。。。。。。
もちろん一番左がナミビア産です。
如何ですか?違いますよね。
ブラジル産とモザンビーク産のパライバや、ロシア産とアフリカ産のデマントイドのように違いがありませんか?(笑)
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でも、何故色味が違うのか
さぁー。。。。。半貴の事ですし、しかもマイナーなオレンジガーネットの事ですし。。。。。。
と、普通なら軽く流れて終わりそうなものですが、、、、、、
居ました
これを調べようとした人が。。。。。。
あるバイヤーが原石を研究機関に持ち込み調べました。。。
その結果、ナイジェリア産のスペサとの違いを発見しました
それによると、ナミビア産のものにはナイジェリア産にはない酸化マグネシウム、つまり、マグネシウムが含まれていたそうです。
また、鉄の量も少なかったようです。
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以上の事を石のお勉強の話にはめ込んでみると。。。。。。
スペサはガーネットグループですが、もう少しグループを小さく分けて見ると、
スペサは「赤ガーネット」のグループに属します。
これを「パイラルスパイト系列」といいます。(難しそうな名前ですがそれぞれの頭文字を繋げただけです。。。)
この系列には
パイロープ、アルマンディン[ダイト]、スペサルティン[タイト]が居ます。
そして、それぞれの色は
パイロープは深赤色~稀に淡ピンクや淡茶色
アルマンディン[ダイト]は赤~暗赤色。鮮やかさに欠ける赤。
スペサルティン[タイト]はオレンジ色~赤橙色や赤茶色。
それぞれ色の範囲に幅がありますが、
実は、この子たちはとても仲良しです。
よく一緒に遊んでいますので混ざりあったりしています。
これを「固溶体(ごっこ)」といいます(笑)
スペサ君は特にアルマン君と仲が良いようです。
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この様に混ざり合ってしまうので色の範囲に幅が出来てしまいますが、
生粋の彼らは(この生粋なものを「端成分」といいます。)、
アルマン君は「鉄」を持っているので赤色。
スペサ君は「マンガン」を持っているのでオレンジ色です。
そして、パイロープ君はマグネシウムを持っています。。。。。。。
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アルマン君とスペサ君は遊んでいるうちにお互いに鉄とマンガンを交換したりします。
その為、スペサ君は本当はオレンジ色なのに鉄の影響で赤橙色だったり、
また、鉄には色を暗くする(彩度を落とす)効果がありますので、赤茶色になったりします。
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さて、ここで、再びナミビア産のスペサの成分分析結果を観てみましょう!
ナイジェリア産に比べて鉄が少なく、マグネシウムがある。。。。。
この事から分かる事は、
ナイジェリア出身のスペサ君はごく普通にアルマン君と遊んで鉄をもらっていたのですが、
ナミビア出身のスペサ君はアルマン君よりも、実はパイロープ君とよく遊んでいたという事がわかります。
では、マグネシウムを持つパイロープ君は深い赤色なのでマグネシウムをもらったナミビア出身のスペサ君は深赤色とオレンジでやっぱり赤橙色???
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とはならないのですよ。これがまた。。。(^▽^;)
これが石の世界の奥の深さです(笑)
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すみません、突然ですが、ここでパイロープ君の紹介です。
パイロープ君は普通は深赤色をしていますが、
実は生粋のパイロープ君は無色なのです
マグネシウムは石の地色に影響を及ぼさないのです。
では、何故パイロープ君は深赤色をしているのか?・ ・ ・ ・ ・
それは、クロムといういいものを懸賞で当てた?からです。(笑)
時々「クロムパイロープガーネット」という言葉を聞いた事はないですか?
それがこれです。
クロムパイロープにはクロム以外にアルマン君の持つ鉄によっての赤味も混じっていますが、やはり、アルマン君とは少し違った深い赤色をしています。
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ここでもう少し彼らについて見てみましょう。
アルマン君の鉄やスペサ君のマンガンは彼らの体の一部、つまり、彼らの体は鉄やマンガンを含んだ物質で構成されています。
その為、アルマン君は必ず赤色、スペサ君は必ずオレンジ色をしています。
別の言い方をすれば、アルマン君から鉄を、スペサ君からマンガンをすべて取ってしまうと、
色は変わるかも知れませんが、もはや彼らはアルマン君やスペサ君ではなくなります。
それに対して、パーロープ君は色に影響を与えないマグネシウムを含んだ物質で構成されていますので基本無色ですが、
色に影響を与える他の元素が懸賞で当たった(?)事によって色がついています。
この場合、他の元素とはクロムの事ですが、
パイロープ君からマグネシウムを取ると、やはりパイロープ君と呼べなくなりますが、クロムを取ってもただ赤い色が無くなるだけでパイロープ君のままです。
この様に、パイロープ君の様な懸賞に当たって(?)色が付いている鉱物を「他色鉱物 」といいます。
それに対し、アルマン君やスペサ君のような鉱物を「自色鉱物」といいます。
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さて、話を元に戻して、、、、、
ナミビア出身のスペサ君はアルマン君よりもパイロープ君とよく遊んでいたので、
鉄の代わりにマグネシウムを沢山もらいました。
つまり、鉄の代わりにマグネシウムが入る事により、鉄による赤味と暗さが減って、マグネシウムによる無色が増える。。。。。。
要するに、赤による影響が減って、本来のオレンジが全面に出てきた!しかも、鉄による暗さも減るので、より鮮やかなオレンジ色になった!
という事のようです。
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少々回りくどい長い話になりましたが、
このスペサの産地による色の違いについては、何となく自分の中ではつじつまがあった気になっています。
どちらもオレンジ色のこの二つのスペサの色の違いという普通ではそのまま流れてしまうような小さな事柄ですが、
それを調べるだけでもいろいろと鉱物の勉強になります。
ガーネットとは本当に奥が深いと感じます。
というより、「石」の世界の奥深さに益々魅力を感じる今日この頃です。(笑)
長い文章を最後までお付き合い頂きありがとうございます。(^_^)