訃報 | Los Tres Diamantes presenta "TIERRA FECUNDA"

訃報

 元広島監督の阿南準郎、昨日86歳で亡くなったと広島テレビが伝えています。死因の報道はありません。「もうそんな御年になっていたのか」と思いました。今回の死亡報道で初めて知ったのですが、本名は「潤一」さんだったんですね。

 

 古葉監督の後をけて就任すると1年目でリーグ優勝。その後もチームをAクラスに導き、文字通り広島の黄金時代を支えた名将でした。広島は阿南の後を受けた山本浩二がチームを打撃のチームに変えようとして失敗。リーグ優勝こそしましたが、このあたりから広島の低迷が始まりました。

 

 古葉、阿南が行った野球は言わずと知れた南海・ブレイザーコーチが提唱した「シンキングベースボール」(考える野球)でした。相手のスキを突き、弱みに徹底的につけ込み、少ないチャンスを確実にモノにする野球。ハムの大沢親分もそうでしたが、南海出身の監督は皆シンキングベースボールを実践していました。のちにノムさんがヤクルトの監督に就任して「ID野球」が話題になりましたが、あれこそまさに「シンキングベースボール」の真骨頂でした。ID野球と言えばそのID野球の申し子とまで言われた古田敦也がヤクルトを打撃のチームに変えようとして失敗。このあたりは山本浩二と似ています。名球会プレーヤーは細かい野球がお嫌いなのでしょうか。ノムさんは監督・古田に失望していましたね。若松監督まではしっかりID野球を継承していたのですが。

 

 今では当たり前となったピッチャーのクイックモーションなんかもシンキングベースボールの賜物ですし(阪急・福本の足を封じ込めるための策略)、私がなるほどなと思ったのは牽制球がうまかった近鉄の左腕・神部利男が牽制するか否かを見破ったエピソードです。セットポジションに入った時、グラブが腰の位置にあった場合はそのままバッターに投げる。グラブが胸の位置にある時は牽制球を投げるというクセを見破ったのだそうです。近鉄からヤクルトへトレード移籍した伊勢孝雄もノムさんのID野球に陶酔し、コーチ時代は選手たちに徹底的に実践させたということです。あの時代、野村、古葉、大沢という南海出身の監督が行ったシンキングベースボールは後継者にも引き継がれ、今でも脈々と生きています。

 

 野球はその大部分がピッチャーを中心としたディフェンスの強化ですからね。そこを見誤ると山本浩二や古田敦也のように失敗します。