YRC IMADOKI・REPORT VOL.15(2015年2月27日)

~タワーマンション購入による相続税対策は有効か?

 2015年1月1日、相続税の基礎控除額の引き下げと最高税率の引き上げなど税率構造の改正により相続税の増税が始まりました。不動産を活用し相続対策を行っている方も多い中、現在注目を集めているのがタワーマンションです。タワーマンションを購入することで相続財産の評価を大幅に引き下げ、相続税の軽減を図るというものです。

相続税対策におけるタワーマンションの魅力
 不動産を相続した場合、相続税はその不動産の相続税評価額に対して課税されます。マンションの場合、土地は相続税路線価、建物は固定資産税評価額で評価されます。相続税評価額は時価よりも低くなる傾向にあるため、現金で相続するよりも不動産で相続する方が、評価額が引き下げられるため相続税の軽減効果があります。特に、タワーマンションの場合土地の持ち分割合はごくわずか、建物は固定資産税評価額になりますので、相続税評価額は時価の2割程度になるケースもあり、加えて、賃貸をすれば、土地は貸家建付地、建物は貸家となりますので、更なる評価額の引き下げになります。しかも、マンションの評価額は高層階、低層階に関係なく専有面積が同じであればどの階でも評価額は同じです。つまり、高層階や眺望の良い部屋など売買価格が高額な物件ほど、時価と評価額の乖離が大きく、相続税の軽減効果が高いと言えます。これが相続税対策におけるタワーマンションの魅力です。

タワーマンションのリスク
相続税対策のためのタワーマンション購入には、リスクもあります。大きく2点、賃貸した場合の空室リスクと、価格の下落リスクです。

① 空室リスク
賃貸した場合の空室リスクは、高額な賃料と供給戸数の多さに起因します。一般的なタワーマンションの賃料は最低でも20万円前後、高層階の眺望の良いハイグレードな部屋であれば100万円以上します。高額な賃貸物件は、リーマン・ショック前は外資系の企業の社宅として需要がありましたが、現在、景気は回復基調にあるものの、外資系企業の社宅需要が戻ったとは言い難い状況の様です。高額な賃料を支払える入居者層は、さほど多くないのが実情です。相続税の軽減効果が一番期待出来る高額物件ほど貸しづらく、空室リスクを抱えた物件なのです。ただ、自らがオーナーを務める会社が、オフィスとして使用する需要がある場合は、この問題は解決します。賃料等の条件が近隣相場であることが前提ではありますけれど。

② 価格下落のリスク
 首都圏において、2000年以降相当数のタワーマン
ションが供給され、その多さは図1の通りですが、今後も2015年に44棟1万5,811戸、2016年以降には92棟約4万4,188戸のタワーマンションが完成予定となっています。特に注目は湾岸エリアです。東京23区で平成26年以降に完成、あるいは完成予定のタワーマンションの数は111棟4万7,037戸、そのうちの約半分57棟2万6,099戸が、中央区・港区・江東区・品川区といった湾岸エリアが属する区なのです。現在湾岸エリアは空前の建設ラッシュ、2020年の東京オリンピック開催エリアに近く人気がありますが、今後も大量に供給されることで希少性が薄れ、入居者を確保するのが困難になり、賃料は下落することが推測されます。現在日本の空き家率は13.5%、しかもこれから人口が減少することが予測されていますので、空室は更に増えるとされています。(イマドキ・リポートVol.14空きや問題の対応策 参照)このような状況下で、特定のエリアに大量の住宅が供給されれば、需給バランスは崩れ、湾岸エリアのタワーマンション価格は下落する可能性を含んでいると考えます。


タワーマンション竣工・計画戸数
図1 タワーマンション竣工数 /不動産経済研究所

タワーマンションを選ぶなら

以上のことから、タワーマンションの購入で一番お勧め出来ないのは、高層階の高額でハイグレードな部屋を1室購入することです。この手の部屋は賃料が高額になり入居者層が極めて限定的かつ、市況に左右されやすいため、次の入居者の確保に苦戦することが想定されます。加えて、タワーマンションの利回りは3%台が相場です。余程の希少価値がある物件であれば別ですが、空室リスクが高い上に、利回りが低い物件をあえてお勧めすることは出来ません。
「それでもタワーマンション良い」ということであれば、希少性の高いエリアかつ借り手が付きそうな手頃な価格帯の部屋を複数戸購入し賃貸することをお勧めします。リスクを分散することで比較的安定した賃貸運営が見込めると考えます。

不動産投資の目線で
 タワーマンションにこだわらず、1棟のマンションであっても、駅近の立地かつ一番厚い入居者層をターゲットとした物件であれば、安定的な収益が見込めます。利回りは5%台が現在の相場ですが、エリアや築年数によっては割安感のある物件もあり、不動産投資の観点から見ると、タワーマンションより優位性があると言えます。肝心な相続税の軽減においてはタワーマンションよりも評価額の引き下げ幅は劣るものの、土地よりも建物の割合が大きい物件であるほど、評価額は引き下げられます。

 タワーマンションでも1棟の物件でも不動産は大きな買い物です。失敗する訳にはいきません。相続税対策のためにタワーマンションを購入したものの入居者が入らず赤字の賃貸経営になっては本末転倒です。軽減効果は副次的効果と考え、安定した収益性が確保できる物件であること、つまり如何に空室リスク、下落リスクの低い物件を選ぶかが重要です。

目先の対策に囚われずに、不動産投資の目線で見ることが成功のポイントではないでしょうか。


出典:不動産経済研究所