TRC IMADOKI・REPORT VOL.4(2013年5月7日)
~公示地価の過去と今後の動向~


<発信元>  TFP不動産コンサルティング株式会社(TRC)
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文:宮尾 啓子

公示地価発表、底入れ感鮮明に
先月、公示地価が発表されました。全国的にはリーマンショック以降依然として下落が続いているものの、その下落幅は縮小し、上昇あるいは横ばい地点が大幅に増え、地価の底入れ感がより鮮明になりました。そこで第4回目のテーマは「公示地価の過去と今後の動向」です。

上昇した土地とは・・
今回、住宅地で上昇率が最も高かった上位10位のうち1位~6位は、宮城県・岩手県・福島県など、東日本大震災の被災地東北地方です。津波の影響を受けなかった高台や、復旧工事の影響を受けていない土地への需要が如何に大きいかがうかえます。商業地では川崎市が目立ちました。JR川崎駅周辺と武蔵小杉駅周辺がランクインしています。
これらの土地は今後も引き続き上昇していくのでしょうか。
例えば、武蔵小杉。駅前にはタワーマンションが次々に建築され、工場地帯だった町並みがガラリと変化、現在再開発の真っ只中です。ご存じかもしれませんが、再開発をする際には、都市計画法での用途地域や高度地区の変更など、建築の規制が大幅に緩和されます。容積率が200%だったところが800%になれば、地価が上がるのは当然のことです。注目すべきは今後です。再開発を遂げた後、新たな街として発展していけるかどうかではないでしょうか。
では、地価が上昇した被災地はどうでしょう。上昇の要因を考えると、被災地の住宅供給が一段落すれば上昇が続くことは少々考えにくいのですが、復興にはまだまだ多くの年月が掛かりそうです。

駆け込み需要で住宅市場は活況
全体的に住宅市場は活況を呈しています。戸建・分譲マンションともに3000万円前後の低価格帯は好調です。理由はいくつかありますが、実は、住宅ローン減税の効果よりも、金融緩和による金利の低下や、消費税増税前の駆け込みといった需要が多いようです。(住宅ローン減税の恩恵を受けられるのは年収600万円以上の世帯ということで、やはり効果は薄い様です。)近い将来、本格的な景気回復に伴って金利が上昇することを想定し、超低金利の今のうちに住宅購入をしたいと考える層が住宅市場をけん引していると思われます。それが、今回の公示地価にも現れていると考えます。
億ションも売れている様ですが、富裕層に人気のブランド力のある一等地に限定されています。これは株高に伴う資産効果による影響ではないかと考えます。
商業地については、主要都市の中心部において新築のハイスペックビルへ業務機能を集約させる動きがあったほか、好立地への移転の動きもあり、優良なオフィスが集積している地域の地点の地価は下げ止まりがうかがえました。このような状況から、これから地価が上昇に向かうと想定し、“今が買い時”と判断するプレーヤーも少なくありません。
商業地であれ住宅地であれ同様に、人を呼び込める土地の地価は上昇し、呼び込めない土地の地価は下落していく、同じ都市の中であっても二極化に向かいます。そして驚きの結果!バブル前と現在の地価を比較

驚きの結果!バブル前と現在の地価を比較
では、過去から現在に至るまで公示地価はどの様に推移してきたのでしょうか。1983年バブル前の公示地価と2013年現在の公示地価とを比較してみます。
全国の平均値(全用途)を比較してみますと、1983年は
158,000円/㎡、2013年は170,770円/㎡でした。1983年と比較すると2013年の方が若干高くなっていますが、バブル崩壊時の1991年の全国平均594,800円/㎡から見れば、あまり大差はないと言って良いでしょう。
しかし、その内訳を見て驚きます。全47都道府県のうち、バブル前(1983年)と比較して上昇しているのは、東京都・神奈川県・愛知県のわずか3都県のみ。他の44道府県は下落しているのです。特に地方の下落は著しく、東北地方においては宮城県が約10%減とわずかなものの、福島県が約
48%減、その他は軒並みおおよそ60%減と、バブル前と比較して約半値以下がほとんどという現状です。
一方、上昇した東京都の平均地価は1983年が491,300円/㎡、現在2013年が749,387円/㎡と、バブル前の約1.5倍になっています。

完全な二極化へ
この数値が意味するものは、完全な二極化です。人口の増加率を見ると、上昇した東京都・神奈川県・愛知県は人口が増加しています。人の集まる大都市は地価が上昇し、それ以外の地方都市は下落傾向へ、ということではないでしょうか。そして、今後の注目は安倍政権が打ち出した「アベノミクス戦略特区」です。東京・名古屋・大阪を中心として規制を緩和し、日本を世界一ビジネスのしやすい国にしていこうという成長戦略の一策ですが、やはりこれも大都市圏がメインとなっています。したがって、人の集まる大都市は地価が上昇しそれ以外の地方都市は下落へ、という傾向は、今後更に顕著なものになってくることが想定されます。

imadokiの今どき


実は、東京でも二極化?
バブル前と比較して地価が約1.5倍上昇した東京ですが、東京全体がそこまで上昇したということではありません。ごく一部を除いては多少の増減があったもののほとんど変わりないといった印象です。ごく一部というのは、千代田・中央・港・渋谷・新宿の主要5区。バブル前と現在を比較し約25%~50%上昇しており、経済の中心がこの主要5区に集約されていることが分かります。その他では、目黒区・世田谷区が20%程度上昇しており、住みたい街ナンバーワンの吉祥寺がある武蔵野市は約25%の上昇、同じく中央線沿線で人気の三鷹市にあたっては約28%上昇しています。
逆に少し目立った下落を見せているのは台東区です。バブルの前と比較して約25%の下落となっています。
これも時代の流れ、東京の中でのトレンドが時代とともに移行していったと言えるのではないでしょうか。

過度な過熱感・期待感に注意!
本格的な景気回復を目前に、日本の不動産市場においては、これから本格的に地価上昇に向かうのではないかという期待がありますが、アベノミクスへの過度の期待感、過熱感による一過性のものでは?という見方もあります。期待だらけの言葉ばかりが先走り、実体経済を伴っていない今の状況下、国民の住宅取得価格が上昇するとは考えにくいのではないでしょうか。住宅地の不動産価格が上昇していくかは疑問です。また、昨今、建築コストが高騰していることも懸念されます。各種建築資材の上昇と建築現場の人件費の高騰が要因です。東日本大震災の復興事業関連や公共事業拡大への動きもこれに拍車を掛けることが想定されます。建築コストの高騰は、不動産業者の土地仕入れ価格に直に影響しますので、不動産価格を抑える重大な要因となることは否めません。現在の不動産市場の過熱感は、再びバブル到来の要素を含んでいるように思えます。バブルがはじけた後の事態は不動産市況のみならず、実体経済にも悪影響をもたらすことは記憶に新しいところです。過熱感・期待感に惑わされることなく、ここは冷静に見極めることが重要ではないでしょうか。<出典> 公示地価データ:国土交通省国土政策局 国土数値情報
一般財団法人土地情報センター 都道府県別地価公示
人口増加率:総務省統計局ホームページ

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