オーケストレーションの勘違い | フクロウのひとりごと

フクロウのひとりごと

愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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作編曲で吹奏楽やオーケストラを書く時、それぞれの楽器をどんなふうに使うのかってありますよね。ついついやりたくなるけれど、じつはうまく行かない使い方、これはじつはこういうものだよ、っていうのもあったり…

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  トロンボーンセクション

 

まず、トロンボーンセクションのお話。
とあるところで、とある作曲家さんが…

『3rd Trombone』って書いたのにバス・トロンボーンで演奏された

って書いておられたのですが…
それはね、そういうものです。
トロンボーン3本のセクションなら、基本的にいちばん下はバスであることが多いです。
必ずそうでなければならないわけではなく、フランスでは過去、テナー3本が伝統でした。
要は、バンドによってオケによっていろいろで、わざわざ持ち替えたりしないのが普通です。
バスクラパートを並クラでは吹かないでしょうが、

バストロパートをテナーで吹く、またはその逆は、普通にアリだと思うのです。
 

 

  違いは…

 

ところで、F管つきテナー(テナーバス)とバストロ、混同していませんか。
これ、学校バンドなどでは時々見られるのですよ。
バストロってシングルロータリーのものとダブルロータリーのものとあります。
では、シングルのバスとテナーバス、違いは?
まず見た目でわかるのは、ベルの大きさですね。
そして、管の内径も違うのですよ。それからマウスピースのサイズも。
もちろんこれ、バストロの方が大きいです。
 

 

  テナーとバス

 

ちなみに課題曲解説に、「この曲の3番はバストロがいい」って書いているものがあります。

それは…
トロンボーンセクションの内声なのか、それともバス声部なのか、ということなのです。

後者ならバストロの方がいいですよね。バスパートとの共同作業も多いですから。
たとえば、こんな楽譜があったら…
先日のブログでも取り上げた、ジャン・ポール・マルティーニの『Piacer d'amor』です。


 

上のアレンジなら3番はテナーの方がいいかもしれません。

でも、下のアレンジなら3番はバストロの方がいいかも…。

なんとなくわかっていただけますか。

単に音域の違いではなく、バス声部かそうでないかの違いなのです。


ちなみにテナーとバス、どのくらい音が違うのかはこちらのYouTubeがわかりやすいです。

ほんとうはもっと違いがあるようにも思いますけども…
 

 

  トロンボーンとユーフォ

 

吹奏楽のトロンボーンって3本(3パート)のことが多いですよね。
吹奏楽を書いていて、「トロンボーンもう1本欲しいな」と思ったとします。
「あっ、ユーフォがあるじゃん。これ、内声に使っちゃえ!」って思うことあるかも…
でもこれ、うまくいきません。
ユーフォってね、そういう楽器じゃないんですよ。
オーケストラでいったらチェロにあたるような楽器、それがユーフォ。
オーケストラでチェロを、2ndビオラのようには使わないでしょ。
内声ではなく、もっと独立した声部として扱いますよね。
あるいは、バスのオクターブ上に重ねたりもします。ユーフォも、チェロも。
トランペットがバイオリン、トロンボーンがビオラ、ユーフォがチェロ…
金管楽器を弦楽器セクションになぞらえるなら、そんな感じでしょうか。
 

 

  サックス

 

内声になれない楽器といえば、吹奏楽にはユーフォのほかにも…
なんだと思われますか。
それは、サックスです。
クラリネットって通常3パートじゃないですか。
もうひとつ欲しいな、と思って…
「1stアルトを4thクラとして使っちゃえ」と思ったとします。
これも、うまくいきません。
もちろんサックスセクションでハーモニーをつくるのはうまくいくのですが、
サックスは、クラリネットの下声部、ではないのです。
 

合奏の中のいくつかの楽器について、少しだけ書いてみました。
それぞれの楽器にふさわしい使い方、ふさわしい居場所があるのですね。

さて、楽譜を書かれるみなさん、それぞれの楽器、どんなふうに使っていますか。