楽曲を演奏するときに、どうしたら表情豊かに立体的に、音楽的に表現力を持って演奏できるのか、そのヒントのひとつになるのが、たとえば非和声音ですね。エネルギーと緊張。きょうはこれについて少し書いてみます。
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
非和声音
非和声音とはなんでしょうか。
音楽にはメロディ、に限らず、いろいろな動きがありますよね。
そして、和声音楽、調性音楽では、その背後にハーモニーがあります。
ところが、いろいろな動きってハーモニーの構成音だけで出来ていることって少ないですよね。
たとえばCのコードに乗っているメロディがドミソの音だけで出来ていることって、少ない…
そのハーモニーの音ではない音があることがほとんどです。
その、動きに含まれるハーモニー以外の音のことを、非和声音といいます。
これ、演奏の大きなヒントのひとつになるんです。
さて、どんなものがあるのでしょうか。
代表的な非和声音
たくさんあるのですが、代表的なものを7つ書いてみますね。
それぞれ楽譜の下にある♪のリンクから音が聴けます。聴いてみてください。
刺繍音(ししゅうおん)
ハーモニーの構成音(和声音)から隣の非和声音に行って、また戻ってくるもの。
弱拍に現れます。
♪刺繍音
経過音(けいかおん)
ハーモニーの構成音(和声音)と、別の構成音とをつなぐ途中の非和声音。
これも弱拍に現れます。
♪経過音
倚音(いおん)
強拍上で非和声音が現れ、それが隣の和声音へ解決する音。緊張感が高いです。
強拍に現れ、弱拍で解決。
♪倚音
ちなみに余談ですが、sus4 という和音がありますが、
『4→3』と解決する場合においては、一種の倚音と言えるのではないでしょうか(異論は?)。
♪sus4
それから、II→V。
♪II→V
これがもし、こうだったら…
♪II→V倚音
これだって、倚音と言えるのかもしれません。
係留音(けいりゅうおん)
前の和音の構成音が、次の和音まで残って非和声音になった音。緊張感が高いです。
弱拍に始まり強拍で非和声音となり弱拍で解決。
♪係留音
ピアノの音は減衰してしまいますから緊張を感じにくいですが、これがもし減衰しない音なら…
ちなみに余談ですが、『ブルーノート』が生まれたきっかけって、係留音ではないでしょうか。
逸音(いつおん)
和音が変わる直前に、和声音から隣の非和声音に移動し、次の和音の和声音に跳躍する音。
文章で書くととってもわかりにくいですね…。こういうやつです。
♪逸音
この例では、最後のG音は逸音かどうかわかりませんよね。
これが逸音になるためには、たとえばこのあとどんなふうに続いていったらいいでしょうか?
先取音(せんしゅおん)
和音が変わる直前に、次の和音の和声音を先取りして鳴らした音。
♪先取音
保続音(ほぞくおん)
ハーモニーが変化しても、ある声部に同じ音がずっと伸ばされる音。
低音に出てくると、オルゲルプンクトと呼ばれます。
その場合、和音の性格を決定づけます。
♪保続音(わかりやすく低音をシンコペーションにしています)
ここではソの音(属音)が低音で伸ばされていますね。
すると、上がどう変化しようとも、ここは機能としてはドミナントになるのです。
低音が、ハーモニーの性格を決定づけるのですね。
ドの音(主音)で伸ばされれば、機能としてはトニックになります。
装飾と緊張感
7つの、非和声音(ほんとうはもっとあるのでしょうけど…)、これを見てみると…
刺繍音、経過音、逸音、先取音、この4つは、装飾的な意味合いが大きいですよね。
保続音は、ハーモニーに変化を与えたり、ハーモニーの性格を決定づけたりします。
残りの2つ…、倚音と、係留音。これは、緊張感の高い非和声音です。
ここが、非和声音から見た、表現の決め手なのです。
緊張感、エネルギー。
なんだか長くなったので、明日は実際の楽曲を使って、非和声音を解説してみたいと思います。
さて、今取り組んでいる楽曲、どんな非和声音があるでしょうか。