限定進行 | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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作曲や編曲、楽譜を書かれるみなさん、和声にはいろいろな決まりごとがありますよね。そんな中で特に『限定進行』って、なんだかおろそかにされがちなように思うのです。でもこれ、やっぱり大切だと思うのですよね。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 

 

  横のつながり

 

きょうのお話は、限定進行。

あっ、限定販売じゃないですよ。進行が限定されている音のお話です。

和音、ハーモニーって、横のつながりが大切だと思うのです。
和音って、調性や前後のつながりがあって初めて意味を成すものだと思うのですよね。
これ、楽譜を書く上でも演奏する上でも大切なことです。
そして、各声部、各パートの音の移り変わり、どの音からどの音に行くのかもまた、大切です。
むしろ、声部のつながりによってハーモニーが出来ているといってもいいかもしれません。
ところが、これをおろそかにしている楽譜って少なくないように感じられるのです。
と、演奏していても、なんだか居心地が悪かったりするのです…
 

 

  限定進行

 

限定進行とは、和音のこの音はこう動いてこの音に行かなければならないよ、というもの。
その中でも特に、ドミナントモーションといわれるもの…



ドミナントの第3音(導音)は2度上がってトニックの根音に。
ドミナントの第7音は2度下がってトニックの第3音に。(赤線の動き)
この動きこそドミナントがトニックに解決したがる所以なのですから、大切なのです。
もしドミナントに第7音がなかったとしても、導音の動きは同じです。
ただし、行った先のトニックがセブンスコードだった場合は…



こんなふうに導音は第7音に行きます。
みなさんご存じでしたか。楽譜を書かれる方は、感覚としてこれを持っていていただきたい。
 

 

  絶対ではないけれど…

 

絶対にこう動かなければならない、とは言いません。
ぼくも限定進行を破ったことがないのかといわれたら、きっとあると思います。
でも…
むやみにこれを破られると、演奏していて心地よくない。不自然で居心地が悪いのです。
演奏する人が居心地が悪い、演奏しにくいようでは、やっぱりいい音にはなりません。
音を出すのはコンピューターではなく人間なのです。
そのことは、忘れてはならないことのように思います。
 

 

  そのほかにも…

 

ほかにも、たとえばなんとなく(ではないか…)決まりごととして…
ベースが第3音だったら、上声部は第3音を省く。特に長三和音、その中でも特に導音。

もちろん、必ずそうするというわけでもありませんが…



赤字の『3』が第3音、赤線は限定進行。

 

それから、旋律や他のラインがsus4などを求めていたりしたら、ハーモニーもそうする。

 

これ、内声の人、吹きにくいでしょ。分裂してるもの。

だからこれは、下のようにする。

 



あるいは、こんなふうに避ける。

 


むやみに無意味にぶつけられたら、演奏していて違和感があります。
もちろん、ちゃんと意味があってぶつかる音は逆に、美しいものなのですけどね。
 

 

  歌って

 

なにしろ楽譜を書く人は、自分の書く声部、パートのすべてを歌ってみてほしい…
そんなふうに思うのです。
また、すぐれた作曲家や編曲家はきっと、そうしていると思うのです。
演奏する人も、『この音は作曲家の歌なんだ、歌った音なんだ』と思って楽譜と相対する。
だから、楽器で練習するだけではなく声でも歌ってみる。
これ、大切ですよね。
歌ってみれば、違和感があればそれに気づける。また、そうであるべきだと思うのです。

さて、その楽譜、違和感ありませんか。