コンピューターで楽譜を書くことの弊害 | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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今、多くの人が楽譜を書くのにコンピューターを使っていると思います。コンピューターは便利なのですが、反面、コンピューターで楽譜を書くことによる弊害もあるように思うのです。さて、どういう弊害なのでしょう。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  コンピューターで

 

昔、20世紀には、「コンピューターで楽譜を作るのはムリだ」と言われていた頃もありました。
それが出来るようになってからも、「コンピューターの楽譜は見にくい」とも言われたりしました。
たしかに、なんだかギザギザでおかしなスペーシングのコンピューター譜を、昔はよく見ました。
現代ではどうでしょう…
かなり見やすくなったと思います。
それでも、手書き譜がなくならない現場もある。
ということは、手書きにも一日の長があるということなのでしょうね。
さて、コンピューターで楽譜を作ることが出来るのは便利ではあるのですが、
一方で、こんな弊害?も…
 

 

  コピペ

 

コンピューター楽譜、画面上で任意の部分をコピペすることが出来るのですが…
(ワープロソフトなんかと同じですね)
そうすると、ついついそれをやりすぎてしまうことになりかねないように思うのです。
『このパートにも重ねちゃえ』
『ここも前とおなじでいいや』
『この部分、使い回せるよね』
コンピューターで書かれる方、身に覚えはありませんか?
オーケストレーションはどんどん厚くなり、同じ動きは多くなり、
そしてリピートで書かないから楽譜のページ数は増える。

ちなみに、コピペしてさらに移調する、なんてことも出来ます。
尤も、紙に書いても『Col Vn1~』なんて書くんですからおんなじなのかもしれませんが…

余談ですが、とあるアレンジで…
『オーボエはフルートのオクターブ下』ってコピペしたつもりで、ペースト後オクターブ下げ忘れ…
現場でオーボエ吹きさんから、「この音域じゃなきゃダメですか?」と言われたことが…(汗)
尤も最近のフィナーレでは、

ペースト先の楽器の音域に合わせて自動でオクターブ上げ下げしてくれたり…
でもね、これ、時には『余計なお世話』だったりするのですよ。
 

 

  写譜

 

手書きで書いたスコアは、当然ながらパート譜に写譜しなければ演奏できません。
だから昔は『写譜屋さん』っていたのですよ。えっ、今でもいる?
昔はそれがもう、ひとつの職業だったのです。
スタジオでレコーディングしている横で、次の曲を写譜してる、なんてこともあったのだとか。
両手にペンを持って、右手で音符の玉を、左手で棒を書いた、なんて話も聞いたことがあります。
写譜で家を建てた、なんて人もいたくらい。
写譜の段階で、写譜屋さんの『ソルフェージュ』を介すことによって、スコアの間違いが訂正される。
だから、スコアよりもパート譜の方が間違いが少ない、なんてことも起きたのです。
でもコンピューターだと、当然そんなことはありません。
スコアそのまま。
尤も、パート譜にする時点でいちおう見直しますから、そこで間違いを見つけることはあります。

あっ、ひとつ断っておきますが…
コンピューターだからといって、キーをちょっと押すだけでパート譜が出来たりはしません。
浄書、レイアウトを決めたり整えたりと、結構それなりの手間がかかるのです。
「コンピューターだから簡単でしょ」なんて言われる向きには、
一切浄書していないパート譜をお渡ししますね(笑)。
 

 

  間違いの種類

 

そして、コンピューター楽譜特有の間違いってあると思うのです。
間違いというか、間違いだと判断しづらいのです。
なぜかというと…
たとえば、「ここの音、違うんじゃね?」と思ったとします。
手書きの楽譜だったら、同じ動きの他パートや別の箇所と見くらべて判断したりしますが、
コンピューター楽譜って、たいていそういうのはコピペで書かれているのですよね…
そうすると、コピーの元が間違っていたら、すべての箇所が同じように間違っている。

パート譜も。
と、見くらべて判断するということが出来ないのです。
だからコンピューター楽譜の間違いは、かえって厄介なのですね。
 

 

  音が出るけれど

 

コンピューターの楽譜作成ソフトは、楽譜の音を出してくれたりもします。でもそれは…
『こんなバランスで鳴るはずがないだろう!』という音だったりするのです。
いろんな意味で、信用ならない。
だからそれを鵜呑みにしたりなんかすると、ろくなものは書けません。
大切なのは、あくまで経験と想像力、なのですよね。
逆に、楽譜にあからさまな音の間違いを見つけたりすると、
『音、鳴らしてみなかったのかな…』なんて思ってしまいます。
鳴らしたけど、なんとも思わなかったのか…?
ひとつのやり方として、

全部の楽器を、その楽器の音色ではなくピアノの音にして鳴らすという人も…
これは有益かもしれませんね。
 

 

  ピアノに向かわなくなる

 

音が出ることによる弊害…
ピアノに向かわなくなること。
ピアノや鍵盤で弾いてみずとも音を出してくれちゃうので、ピアノに向かわなくなる。
でも、ピアノに向かって初めて書けるものもあるように思うのですよね…
それに、頭のなかに浮かんだものを音にしてみるのって、ピアノで弾いてみるのがいちばん早い。
尤もぼくは、紙に書いていた頃から楽器は使っていなかったのですけどね…

さて、みなさんはコンピューターで楽譜を書かれますか。