語法やノリを楽譜に書く? | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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吹奏楽だと特に、いろいろな音楽を演奏しますよね。クラシックからジャズ、ポップスなど。そしてそれらの音楽にはそれぞれの語法、しゃべり方があります。では、その語法、いちいち楽譜に書くべきだと思われますか。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  ジャズのノリ

 

たとえばジャズの曲があったとします。
そうですね、これなんかどうでしょう。『インザムード』
映画『瀬戸内少年野球団』(ってご存じ?)でおなじみになりましたね。
こんな曲です。


 

この冒頭のメロディ、普通の楽譜なら、こんなふうに書いてあると思います。



さて、でも…
この楽譜をもらってYouTubeのような演奏にするのは、ジャズの語法を知らないと出来ません。
では…
 

 

  親切?

 

ジャズの語法を知らない人でもあんなふうに演奏できるようにと、こんなふうに書いたら…



さて、この楽譜、どう思われますか。
親切、でしょうか。
それとも、お節介?
鬱陶しい、かもしれませんね。
誰にでも、語法を知らなくてもそれらしく演奏できるように、いちいち全部書いてあげること、
はたして、いいことなのでしょうか。
どう思われますか。
 

 

  流儀

 

楽譜、音楽には、『たとえ書いてなくとも、そう演奏するもの』という、いわば『流儀』があります。
ジャズに限らず、いろいろとほんとうにたくさんあります。
たとえばウインナワルツがそうだし、たとえばマーチの低音だって、書いてなくとも短く演奏します。
そういう流儀は、『書いてあるからするもの』ではないわけですよね。
それをもし、いちいち全部書いてしまったら…
そしてそれがその結果、『書いてなければしないもの』になってしまったら…
それは、語法の喪失、スタイルの破壊につながっていくように思うのです。
その音楽の語法は決して、書いてあることを再現すること、ではないのです。
 

 

  書かないことも…

 

書かなくても常識的にそう演奏するもの、そういう語法になっているもの、それは、
あえて書かないことも大切だと思うのです。
もしかしたら書いた方が、多少は理想的な演奏に近づくかもしれない…
だとしても、やっぱり書かない。
それでもし、その音楽の語法とかけ離れた演奏になるのであれば、

それは演奏者の責任なのです。
4分音符ひとつとっても、その音楽の語法によって、じつにさまざまです。
その音楽の語法に通じて、それを音にすること、これは、作家や浄書家の仕事ではなく、
演奏者の仕事だと思うのです。
だから、ある時からぼくは、『書いてなくてもそう演奏すること』は書かないことにしたのです。
それに、そんなこと、書ききれるものではありませんしね。
たとえばウインナワルツのノリを、どう書き表すというのでしょうか。
どんな語法だって同じだと思うのです。
 

 

  語法を身につけよう

 

大学を出たばかりの頃、ジャズの現場に行って年配の先輩に言われました…
「ジャズはアメリカの音楽なんだから、英語でやらなきゃダメだ!」と…
当時は、コノヒトナニイッテンダロウ…、と思いましたよ。青かったですからね。
でもこれ、じつは深いことだと思うのですよ。

吹奏楽の演奏を聴いていると…
『いい音なんだけど、どの曲もおんなじだね』っていうバンドに、よく出会います。
コンクールで上に行くようなバンドでも、です。
きれいな音や響きをつくることは上手くても、ちっともその音楽、語法になってない…

いろいろな音楽をたくさん聴いて、たくさんの音や演奏に触れて、そして、
いろいろな音楽の語法をおぼえてください。
耳や身体でね。
そして、悩んだらいつでもご相談くださいね。

さて、語法やノリ、いちいち楽譜に書くべきだと思われますか。