技術指導ってなんだろう… ある小学校にて | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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楽器の修得って最初が肝心、基本が大切…、よく言われることです。たしかにそうだと思うのです。

でも、以前に教えに行っていた、ある小学校でのこと…
 
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 
 
基礎を教えることは…
 
10年近く関わった、その小学校、吹奏楽部でした。
指導に行く日は、ほぼ必ず合奏指導。
時間が短いこともあって、合奏は曲のみでした。
小学校なので、4年生は当然初心者です(合奏は基本的には5~6年生)。
でも、ぼくは個人やパート練習を見ることは、ほとんどなかったのです。
基礎的なこと、技術的なことはほとんど話さなかったですね。合奏の中でも…。
 
 
技術は高かった
 
でも、みんなよく音が出ていました。
しかも、粒ぞろいでしたね。
トロンボーンもハイBやハイCを出す子もいました。
あるときホルンの子が、ハイFを吹き鳴らしたのですよ!
それも無理矢理に出したような音じゃなく、素直なよく響く音で…。
パートで吹いているのを聴いていても、どの楽器も素直ないい響き。
それに、たとえば情熱大陸とかをやっていたのですが、難しいリズムなのにノリノリなのです。
 
 
 
不思議に思って…
 
あまりに不思議に思って、あるとき顧問の先生に訊きました。
「ぼくのほかに誰か教えに来てみえるのですか?」と。そしたら、
「いいえ、教えていただいているのは福見先生だけですよ」と…。
顧問の先生は楽器などされない方でした。
ぼくも、たとえば呼吸やアンブシュアの話なんかほとんどしませんでした。
問題をかかえている子はほとんどいませんでしたからね。
もし問題を持った子がいたら、その子に必要なことだけを伝えるようにしていました。
でもなぜ、あんなにみんな粒ぞろいだったのでしょう…
 
 
合奏では…
 
合奏指導では、吹いて聞かせてあげることはありました。
『ここはこんなふうに』って。
と、子どもたちはマネして吹くのですね。ハイCとかでも…
べつにトロンボーンの見本を吹いたわけじゃなくて(ハイCなんかないし…)、
たとえばその見本はクラリネットやサックスに向けたものであったりするわけです。
でも、まねして吹いたトロンボーンの子は、けっこう吹けちゃったりする。ほかの楽器の子も…。
基礎なんか、ほとんどなんにも教えてないんですよ!
 
 
ゲーム感覚
 
きっとあの子たちにとってはゲーム感覚だったんだと思うんですね。
その音が出なくても叱られたりしないし、出す義務もない。
『先生が吹いてるから真似しちゃえ!』なんです。
それが難しいものだなんて先入観もない!(これ、でかいです)
方法論からじゃない(教えてないんだもの…)、遊び感覚。
そういうのを聞いて、『いいぞ、どんどんやれ!』と思っていました。
ときにはトロンボーン以外の楽器を吹いてあげることもありました。
たとえばトランペットでリップスラーなんかを吹いてあげると、
「きれいな音…」なんていう言葉が出てくる。
子どもたちって、感じる感性をとっても持っているんです。
 
 
 
お勉強じゃなかったから
 
語弊があるかもしれませんが…、
あの子たちにとって、楽器や音楽をすることって、『お勉強』じゃないんです。
ぼくも中学生の時、なんにも教えてもらいませんでした。
だからこそ、のびのびと吹いていた。
 
『吹奏楽部で楽器を演奏するために覚えなきゃいけない知識や基本』をリストアップしていた先生が、
以前にみえました。「こんなにたくさんあるんだよ」って…
もし、中学生の頃のぼくがそんなモノ見せられたら、イヤになって辞めていたかもしれません…(*_*)
これをおぼえなきゃいけない、これがわからなきゃいけない、これが出来なきゃいけない…
そんなの要らないと思うのです。ステキなお手本さえあれば、それでいい。
ちゃんとまっすぐに育っているかを見ていてくれて、困ったときに、どうすればいいかを教えてくれる、
そんな人がいれば、それでいいと思うのです。
 
 
アドバイスでつぶされちゃう子もいるんです
 
これは別の学校の子なのですが…
「マウスピースはくちびるの左右まんなかに当てないとダメ」
という指導を真に受けて、つぶれてしまった子がいました。
もちろん、左右まんなかである必要なんか全然なくて、
自分のいちばん自然で心地よいところに当てるのがいいのです。
ぴったり真ん中じゃない人、けっこういますよ。ぼくもそうです。
アドバイス(この場合は間違ったアドバイス)で吹けなくなっちゃう子もいるのです。
極端な例だと思われるかもしれませんが、案外少なくないように思いますよ、こういうこと…。
余計なことや必要のないことは教えない方がいい。
 
 
上級生から下級生に
 
さて、その小学校に話を戻すと…
上級生が下級生に教える伝統が、ずっと続いていたんですね。
といっても、もちろん技術的に専門的な指導があるわけじゃない。
吹いて聞かせて、一緒に吹いて、ということを、パートの練習で繰り返していた。
これがやっぱり、いちばんデカいと思うのです。
だからあんなに粒ぞろいなんですね。
そして、『これは難しい』とか、『これは高度なことだ』とかの先入観を植えつける人がいなかった…
 
 
 
時間は短くても…
 
小学校ですから、平日の練習時間は1時間か、1時間半はなかったですね。
土日は基本的に練習はありません。
それで、もちろんいい時ばかりではなかったけれど、あれほどの音が出ていたこともある。
あの頃の録音を聞いてみると、決して上手ではなかったけれど、
ほんとうに素直な音で、のびのびと演奏しているのですよね…。
あの勢いで一体になった合奏は、なんだかひとつの大きな大きな生き物みたいで、
振るのにすごく、中学生や高校生のバンドのきっと3倍くらい、体力が要りました。
今、部活動削減で時間が足りないという声をたくさん聞くのですが、
そのバンドは、週の練習時間、きっと6~7時間くらいでやっていたのではないですかね。
そういうバンドもあるのです。
 
 
一度途切れると
 
そんなバンドだったのですが、顧問の先生のなり手がいなく、一時活動休止の期間があったのです。
メンバーも変わって活動再開したのですが、一度途切れてしまうともう以前のようには行かないですね。
一度やめてしまうと、途切れてしまうと、もう元には戻らない…
その学区の中学校には吹奏楽部がなく、なんとかならないかという声もずいぶん聞いたのですが…
以前にはあったそうなんですが…
一度途切れると、もう戻らない。
名古屋市は2020年度いっぱいで、市立の全小学校で部活動廃止…
これでいいのでしょうかね…
 
 
楽器の指導ってなんだろう…
 
さて、でも、楽器の指導、技術指導って、いったい何なのでしょうね…
もちろん、このバンドでも、うまくいったことばかりではないです。
苦労もありました。
ただ、言えると思うのは…
余計なことは教えない。そして、子どもたちの感性を信じること。
よく見られる、こうしなさい、ああしなさいとあれこれ教え込んでそのとおりにさせることは、
子どもたちの中のなにかをスポイルさせることにつながるように思うのです。
それからなによりも、メンバーのつながり、受け継がれていくもの。
これが大切なように思います。
 
さて、教えるって、どういうことだと思われますか。