トロンボーンのスライドポジションは76ある!? | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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トロンボーンという楽器、見ての通り、管を直接伸ばしたり縮めたりして音の高さを変えています。

さて、では何をよりどころにしてスライドを動かしているのでしょう?
 
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 
 
ポジションは全部で7つ
 
スライドは、ギターみたいにフレットがあるわけではなく、なんの目印もありません。
いちおう、スライドのポジションといわれるものが、7つあります。
手前側から順に、1ポジション~7ポジションまで。1つ遠くなると、音が半音下がります。
ポジション間の距離、近いところで8センチ半ほど、遠いところで11センチちょっとです。
 
さて、1から7まで伸ばすと、どれだけ音が下がるでしょう?
増4度(減5度)ですね。
トランペットで言ったら、開放→1-2-3とおんなじです。
なんと単純で大ざっぱな!? と思うでしょ。ところが…
 
 
 
音の高さの微調節はスライドでしている
 
どんな管楽器にも、構造上、高めになる音、低めになる音があります。
ほかの管楽器だと、トリガーやら替え指やら息やら、いろんなあの手この手で高さを整えますよね。
トロンボーンの場合は、右手。スライドの、ただ一手です。
これで、すべての音の高さを整えます。
自由自在です。いいでしょ(^_^)
だから、トロンボーンで音程の悪い人は、ほんとうに音感がない人です(^_^;。
だって、自由自在なのだから…。
 
 
ポジションはじつは76ある!?
 
さて、管楽器の音の出る原理である自然倍音列は、平均律とは高さが違います。
小難しい話は割愛しますが、つまり管楽器は、正確な音程で演奏しようと思ったら原理的に、
すでにハンディを持っている、とも言えるのかもしれません。
管はひとつ。ピアノやギターみたいに、各音を自在に調弦するなんてできませんから。
 
さて、ところがトロンボーンです。
この、自然倍音列の、つまり、管が共鳴する原理の、平均律とのずれを計算して、
トロンボーンの『正確な』ポジションを割り出した人がいます。
マーク・マクダンという人で、それによると、なんと、
トロンボーンのポジションは全部で76あるというのです!
(76本のトロンボーンという曲がありますね♪)
 
これが、そのポジション表!
 
 
さて、おぼえられますか!?
 
 
実際の楽器では…
 
マクダン先生のポジション表は計算上のもの。実際の楽器では、もう一寸複雑なのです。
楽器によって、音程のくせが違っていたりするのですよね。
たとえば1ポジションでチューニングのBから上にB→D→Fと吹くと、
Bachなどの楽器ではDが少し低く、Fが少し高くなりますが、
最近のYAMAHAだと逆に、Dがほんのちょっと高くなるのです。
 
さらに、倍音列の中の音程関係も、ポジションによって変わってきたりするのです。
B管1ポジションのD、第5倍音なのですが、1ポジションではわずかに高くなるYAMAHAも、
ポジションが遠くなると逆に、第5倍音が相対的に低くなっていく。
これ、アルトトロンボーンと同じような特性なのです。アルトはもっと顕著です。
そんな複雑なこと、どうやって調整してるの!? とおっしゃいますか…
 
 
ポジションは手がおぼえている
 
ポジションは手がおぼえます。もう、手癖です。
もちろん耳を使います。耳が命です。でも、
音が鳴った瞬間、ちょっとだけ高かった、スライドをちょっとだけ伸ばした…
これ、ある意味、手遅れなんです。鳴った瞬間に合いたい。
それをおぼえるのは、右手です。スライド・ハンプトン(左手でスライドを操作した名手)以外は…
 
楽器を変えて、それが手癖としてなじむのには、ある程度時間がかかります。
けっこう苦労するのです。
たとえばBachは、YAMAHAにくらべたら音程調節がたくさん必要な楽器です。
BachからYAMAHAに変わると、修正し過ぎちゃう。いろんな音で(*_*)
なかなか慣れません。
 
もちろん根本的に、ソルフェージュが大切です。
 
 
ポジションは7つじゃない
 
さて、コンクールに向けてがんばっている中高生のみなさん、だけじゃなく、
トロンボーンに取り組むみなさん、
マクダン先生ではないですが、トロンボーンのポジションは7つではありません。
細かいことを言えば、音の数だけある。しかも、楽器によって違う。
たとえば、チューニングのBを挟んですぐ下のAsと、すぐ上のC、どちらも3ポジションですよね。
でも、この2つの3ポジション、全然同じではありません!
Cが低くなっちゃってる人、けっこうたくさんいるんですよ。
そんなことにも意識を向けてみるだけで、ずいぶんステップアップできるかも…。
 
さて、結局トロンボーンのポジションって、いったいどれだけあるのでしょうね…
 
ということで、76本のトロンボーン♪
 
The London Trombone Sound

 
Boston Pops Orchestra