蜩や朝倉墓所は仄暗く

「雲の峰」2024年11月号課題俳句「蜩」佳作作品。

2024年9月、越前大野を訪れる。メインの目的地は大野城だったが、そこからレンタサイクルを借りて、周辺を走り回った。何の予備知識もなく走っていたら、目についたのが「朝倉義景墓所」の案内標識。1573(天正元)年、近江に侵攻した織田軍に対抗するため出陣した朝倉義景だったが、奇襲を受け撤退。その道中で見方が次々と討ち取られ、壊滅状態となった朝倉軍は、一乗谷へ戻っても戦力なく、大野郡司だった一族の筆頭格、朝倉景鏡に大野郡への撤退を進言され、やむなく大野郡の六坊賢松寺へ逃れる。しかし実は景鏡は織田方に通じており、六坊賢松寺を手勢200で攻撃。義景はここで自刃する。朝倉義景墓所は、義景最期の場所に建てられ、今は朝倉公園として整備されている。大きな木に囲まれ、どことなく仄暗い場所に建っていた。そこで、課題俳句の兼題が「蜩」だったという事。お墓の周りには蜻蛉が飛び、蜩が鳴いている。義景の無念さを、彼らが演出しているように見えて詠んだ句。

私は、出来るだけ句の中に地名や史跡名を出さないようにしている。出してしまうと、詠んだ場所がそこだと限定されて、読み手の想像力を奪ってしまうような気がするから。しかし、どうしても「この場所のこの風景を見た」という事をはっきりさせなければならない場合は、横に添え書きを入れる場合がある。その手法も頻繁に使う訳にもいかず、いつも付けるべきかやめるべきか迷う。この句の場合は、「朝倉墓所」と、若干史跡名をぼかすことによって、読み手の想像力を確保したつもりだった。「わかる人にはどこかわかるだろう」と考えての事だ。そんなに深く考えすぎなくても、そこでそういう景色を見たのなら、素直にそう書けばいいのだろうが、何せ17文字しか使えない世界。今でも表現方法は迷いっぱなしだ。

 

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