雨蛙伊勢街道の雨上り
「方円」2010年7月号雑詠掲載。
伊勢街道は三重の日永追分から伊勢神宮・二見までを結ぶ街道の事を指す。今から15年前の5月。すっかり忘れてしまったが、恐らく伊勢参りに出向いたのだろう。雨上がりで路面や周りの風景は濡れていて、街道途中の田畑からは雨蛙の声が聞こえる。雨蛙はこの時期、田畑や川べりなどでキャクキャクとよく通る声を出す。だんだん暑さが本格的になり、梅雨入りも間近という気候の中、こうした声に季節を感じる。お伊勢さんという場所も雨蛙の声も、景色の一部として楽しませてくれる。そんな光景を素直に詠んだ句。
さて、この蛙に関する季語。「雨蛙」「牛蛙」「蟇蛙」と、具体的な蛙の名がつけば、夏の季語とされる。一方、単純に「蛙」ならば春の季語。よく間違うので注意が必要だ。歳時記を調べてみると、単に「蛙」だと、繁殖期の蛙全般を指し、「雨蛙」だと鳴いている声、姿、時期を表すようだ。つい最近まで知らなかった。今回紹介した句を詠んだのは、30代後半。単純に雨蛙の声が聞こえたから詠んだだけかもしれないが、偶然にもその声が夏を感じさせる句に仕上がった。「季語」というものを考えた先人の、まさに観察力のたわものかもしれない。
(絵はAIによる創作です)
↓コチラも併せてご覧ください♪↓
俳句を始めませんか?