摂州に入りげんげ田に迎へらる
「雲の峰」2023年6月号青葉集掲載。
「げんげ田」とは蓮華の花が一斉に咲き乱れる田んぼのことを指す。かつて、蓮華は緑肥として刈り終えた田畑に植えられ、春になると一面蓮華の花が咲く様子があちこちに見られたが、今では少なくなった。そんなげんげ田が、自宅の近所で見られる場所がある。一歩踏み出したら大阪府に出るちょうど境目のところでは、未だに田畑に蓮華の花が咲き乱れる。山城国から摂津の国に入れば蓮華が見られるという光景。摂津の蓮華が山城の民を迎え入れているように見えて詠んだ句。
以前紹介したかもしれないが、同じ場面、同じシチュエーションで、20年以上前にこんな句を詠んでいる。
「げんげ田に風追ふ色の過ぎにけり」
この句を元方円主宰、故・中戸川朝人が絶賛した。当時私は30代前半。これが少なからず自信に繋がり、今まで長年にわたって俳句を続ける原動力になった。私にとって、未だに蓮華は「風追ふ色」のまま。このインパクトが強すぎて、これを超える句はまだ詠めずにいる。これ以上のものを作りたいと思えば思うほど技巧に走ってしまう。ごく自然体で発した言葉が大きなインパクトを与える。そんな語彙力を身に着けたい。
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