献杯を数多の霊に酔芙蓉

 

「雲の峰」2023年12月号青葉集掲載。

酔芙蓉とは芙蓉の園芸種。朝方は白い花を咲かせるが、午後になるに従って赤みを帯びてくる。その様子がお酒に酔ったように見えるので、この名が付いた。1年前の10月21日、大学時代の友人と伏見で飲む約束をしていたが、早く家を出て、亡父がかつて歩いた伏見街道を歩いた。京阪清水五条駅から豊国神社、家康が豊臣家と戦うきっかけになった梵鐘で知られる方広寺を経て東福寺へ。大混雑の伏見稲荷大社を素通りして、高校時代の吹奏楽部でお世話になった恩師が眠る墓地へお参りして、そこから御香宮まで歩き、京阪観月橋駅がゴール。酔芙蓉は恩師のお墓近くにあった。お墓に着いたのは3時を少し過ぎた頃だっただろうか。花は徐々に赤くなっていた。その様子が、この墓地に眠る数多の霊に献杯しているように見えて、恩師の霊と共に冥福を祈りながら詠んだ句。

同じ時期、歌手のもんたよしのり氏の訃報に接する。大動脈解離。奇しくも恩師と同じ死因。恩師も亡くなる直前まで、高校OBでもある楽器屋さんと談笑していたが、夜になって突然亡くなったという。人の命というものは、かくも儚いものなのか。当時ショックはかなり大きかった。あまり考えたくないが、人はいつ何時、どうなるか予測がつかない。だからこそ、今出来る事、やりたいことを精一杯しなければならない。鮮やかな芙蓉の花を見るたびに、今を大切にせねばと思う。

 

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