慰霊碑の文字の薄れて死人花

 

「方円」2022年12月号円象集掲載。

「死人花」とは彼岸花の別称。「彼岸花」という名の通り秋の彼岸の頃に咲き、土葬をモグラやネズミなどから守るため、墓地などによく植えられていた。秋の彼岸はあの世とこの世が通じやすい時期とされていることもあり、「死人花」「幽霊花」とも呼ばれている。とある寺院の前、木陰に慰霊碑がひっそりと建っていた。何の慰霊碑か、文字が掠れているため判読できない。その周辺に、彼岸花が鮮やかに咲いている。場所が寺院で、慰霊碑の周辺に咲いているという事もあり、あえて「彼岸花」と言わずに「死人花」という表現を使い、亡くなった方がそこにいるという思いを詠んだ句。

彼岸花は、毒草ではあるが、地下茎にでんぷん質を多く含んでおり、飢饉の時はすりつぶし、水に晒して毒抜きをして、食用とした。そのため、田畑の畦道などにも植えられている。稲穂が実り、稲刈りを待つだけの田んぼの脇に、赤い集団が点在しているのは、実に壮観。関西では明日香村など、彼岸花で有名な所が多い。皆挙って写真を撮ったりするが、中には「お墓に咲いているイメージしかない」と、彼岸花をあまり好まない人も、一定数いるようだ。彼岸花に限らず、どの花もそう。必ずしも綺麗。好ましいと思っている人ばかりではない。世の中には、色々な考えを持った人がいる。自分がこう思っているなら、他人もそうだろうという思い込みは、この際捨てた方がいいのかもしれない。

 

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