かなかなの右鳴き止めば左から

 

「方円」2005年11月号雑詠掲載。

蜩。その鳴き声からかなかなと呼ばれるこの蝉は、その名の通り特に夕暮れ時に鳴く。晩夏から秋口に鳴き始めるので、秋の季語とされる。関西でよく見られるクマゼミやニイニイゼミのように、夏の盛りに暑さを感じさせるような鳴き声を出す蝉とは違い、カナカナという哀愁を帯びた鳴き声が印象的で、夏の終わりという雰囲気を醸し出す蝉として、よく俳句に詠まれている。よく行く散歩コースの途中には神社があり、境内から蜩の声が聞こえる。一匹が鳴き止めば、別の蜩が別の方向から鳴き始める。その繰り返しが暫く続く。神社中から聞こえるその声に暫く聞き入りながら詠んだ句。

実に単純な句だが、今の私には詠めない句だ。俳句を20年以上やって来て、ともすれば凡庸な句、わかり切っている情景をそのまま詠んでしまう事を避ける傾向が見られる。しかし、一軒平凡に見える句だが、この句は情景がすぐわかる。その時の状況は覚えていないが、恐らく長時間その場にいて、じっくり見聞きして詠んだ句だろう。俳句の原点はここにある。17文字という制限された中で、いかに自分の印象に残った場面を、印象深く伝えるか。これが写生句の極意とも言える。この姿勢を、改めて思い出してみよう。

 

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